127 ゴルド王国の滅亡 part14
日向子達は今ゴルド王国の王城、恐らく謁見の間と思われる扉を押し開けていた
…ギィィー…
「…やっぱり誰もいないわ、どういう事かしら?」
扉の向こうは確かに謁見の間だった
両脇にそびえる太い柱、置かれた甲冑や絵画は素人の日向子が見てもいかにもな品々だった
その奥に控える玉座は金箔が貼られているのだろうか、所々に宝石が埋め込まれ贅の限りを尽くした造りになっている
《争った形跡もないな…》
謁見の間は整然としていてただ人だけが急にいなくなったかの様だった
「…こうなると単に襲撃されたとは思えないわね、抵抗した跡も見られないなんて…」
日向子達は玉座の近くまで歩み寄り辺りを見回す
緊急事態が起こったのであれば何かしらの痕跡が残っていてもおかしくない筈なのに本当に何もない
「良し、こうなったらしらみ潰しに見ていくしかないわね。一応臨戦態勢ね」
《分かった》
日向子達は謁見の間の奥に続く廊下を見つけそちらに進む
奥に続いていると言う事は恐らく王の居室等に繋がっていると思ったのだ
ーカツーン、カツーン、
誰もいない石造りの廊下に日向子の靴音が響いている
「…一番奥が王様の私室かしらね?」
間取りを知らないので定かではないが長い廊下の最奥に真っ白な扉が1つだけ設置されている
《…だがこの先も反応はないぞ》
「うん、分かってるけど確認しない訳にはいかないわ。せめて何かしらの痕跡が見つかると良いんだけど…」
先程の石造りの廊下から一転王の私室に繋がる廊下は豪華な絨毯が敷き詰められていた
…コンコン、「失礼しまーす…」
日向子は一応挨拶をしてから扉を開けた
《…やはり誰もいないな》
扉の先は王の私室に違いなかった
応接間、執務室、そして寝室が順に並んでいる
そのどこからも生活の跡が見られなかった
《ここは本当に人間がいたのか?》
キメが疑うのも仕方ない程整っていたのだ
「うーん…こうなると城の中で痕跡を見つけるのは難しいのかな」
日向子はクローゼットと思わしき家具や生活していれば使うであろう食器や生活道具等をチェックする
だがそれら全ては展示品かと思う位整頓され使っていた形跡すらなかったのだった
次に日向子は執務室に移動する
ここは王が普段官民全てから上がってきた書類に目を通す場所で散らかっていないにしても痕跡があっておかしくない場所の筈だ
「…何これ?本当に人がいたのかしら?」
豪奢な家具や調度品、机や椅子等が整然と並べられているが此所もまた展示室の様に生活感がなかった
《…主、この書類を見てくれ》
キメは机の上に置かれた書類に着目した
『永久の命に関する報告書』
そう銘打たれたその書類を日向子はパラパラとめくって内容を確認する
《何が書いてあった?》
「うーん…ざっとだけど王様の勅命で不老不死の霊薬や手法を探させていたみたいね、捜索の次第が書かれているわ」
日向子が書類に目を通している間、キメは引き出しや本棚等を物色している
《…ん?》
…ゴグン…ゴウンゴウン…
キメが抜き出そうと書物を傾けると鈍い音と共に本棚が手前に開き始めた
《…主、これは?》
「どうやら隠し扉みたいね、中はどうなっているかは見てみないと分からないわ」
日向子は開いた本棚の先にあった階段を降りる事にした
…コツン、コツン、
扉の先の階段は螺旋状になっており下へ伸びている
「中庭は多分3階位だったから…そろそろ地下になるわね」
踊り場もない単調な螺旋階段につい感覚がおかしくなる
《…主、血の匂いだ》
キメの嗅覚が漸く人の痕跡を感じ取った様だ
「何人位の血があるかとか分かる?」
《いや、そこまでは分からないが複数の血が混じっているのだけは確かだ》
日向子とキメに一瞬緊張が走るが匂いがするだけで生体反応は全くないらしい
とにかく痕跡を探すべく日向子達は足を早めた
…コツコツコツコッ
「どうやら此所が終点みたいね、トンネルがあるから抜け道なのかしら?」
灯火の準備をしてこなかった二人だがキメが体全体を発光させる事で明かりは十分取れる様になっていた
「あ、あそこに血痕があるわね、行ってみましょう」
日向子は廊下の先に黒い滲みがあるのを見つけそこに向かって歩き出した
…クンッ…《確かに血痕だ》
漸く出た証拠に日向子は飛び上がる程喜んだ
《主、ソコは喜んではいけないのでは?》
「あはは…あまりにも何にもないからさ、えへっ?」
《問題は誰の血か、と言う事だが…状況から考えて王かそれに親しい人間だろうな》
「そうね、此処って多分秘密の通路だし」
とにかく先に進まなくてはこれ以上の事は分からなそうだ




