125 ゴルド王国の滅亡 part12
「よ、良し‼こっちは倒せたぞ‼」
「後ろが劣勢だ、人手を回せ‼」
住民達は背後から侵入して来たバンパイアと交戦していた
ギギャッ‼…ドンッ!
「きゃあっ⁉」
一体のバンパイアが大八車の上に飛び込み怪我人を襲おうと口を開けた時、その頭部がズルリと落ちた
「皆さん大丈夫ですか⁉」
「ひ、日向子さん‼」
「助かった…」
叫び声を聞き付けた日向子達が救援に駆けつけたのだ
侵入して背後から襲ってきたのは数体だった為に即座に討伐を終え念の為に避難路を意図的に崩落させる
「で、出口にいたバンパイアはどうなったんですか?」
「あぁ、ほぼ倒したから大丈夫ですよ」
日向子の何でもない感じの返答にポルカ達は唖然とする
だが本当に驚くのはポルカ達が出口に到達した時だった
見渡す限り転がるバンパイアの躯が文字通り死屍累々と言った状況で溢れていたのだ
「…これをお二人で…?」
「えぇ、あ、身内の方がいらっしゃったらごめんなさい…」
「あ、いや‼そう言う事ではなくて…」
住民達は自分の身内を殺された非難をしたかった訳ではなく
単純に日向子達がたった二人でこれだけのバンパイアを殲滅してしまった事に驚いていたのだ
「確かに見知った者もいましたが既に別の生き物だと割り切っております。どうかお気になさらずに」
ポルカは謝る日向子を制して言った
他の住民達も先程の戦闘で気持ちを完全に切り替えた様で今までのグズグズが何だったのか?
と言わんばかりの精悍な面構えに変わっていた
「…そうですか。でも一応は謝らせて下さい」
《主より俺が謝る必要がある。先程は酷い事を言って済まなかった》
「いえいえ、私達が悪いのです。どうか謝らないで下さい」
ひとしきり謝罪合戦が続いたがまだ脅威が過ぎた訳ではない為日向子を先頭に移動を再開する事になった
ゴトゴト…
「ではこのまま山脈を越えてエレモス領に入れ、と?」
「はい、途中の見えない壁を利用してバンパイアやゾンビ達の追跡を断ち切ります」
「あぁ、「障壁」をか。成る程な」
「「障壁」?ポルカさんは何かご存知なんですか?」
日向子はポルカの言葉に食いついた
「いや、詳しくは知らないんだ。大昔魔導師がいてその方が作り上げたらしいと言う言い伝えだけが残っているんだ」
「魔導師?じゃあ魔法とかあったんですね?知らなかったなぁ…」
「今は誰も使えないらしいし資料もないからどこかの段階で失伝してしまったんだろうな…」
日向子のイメージでは「異世界=魔法世界」だったがこの世界では全く広まっていなかった
魔物はいるんだからあっても不思議ではないのに…
と残念にも思っていたのだが思わぬ所で魔法の言葉を聞いて嬉しくなってしまったのだ
残念ながら今は誰も使えないという事実も同時に知ってしまったのではあるが。
「そっか、やっぱり魔法使いはいたんだ…会いたかったなぁ…」
日向子はとても残念そうだった
「…すまん、話を続けてくれるか?」
「あ、ごめんなさい‼で、皆さんの受け入れを国王とドルネさんに頼んでみますね」
「ゴルドはどうなるんでしょう?」
ポルカ達の懸念はゴルド王国の行く末だ。やはり国許を離れるのは忍びないらしい
「皆さんを障壁まで送ってから私達はゴルド迄戻って改めて調べてみます
必要とあれば討伐も併せて行いますが…まだ城の状況とかまるで分かってませんからね…」
「そうか…国が滅んでいたとしたら復興も何もないな…」
日向子もそうだがポルカをはじめ住民達も自分の身を守るのに必死で城の状況など案じている暇がなかったのだ
城下町がゾンビ達で溢れかえっていた時、軍が討伐に来なかったのも考えてみればおかしい
住民達の証言から違和感を感じた日向子は改めて聞き取り調査をしながら山脈を目指したのであった
。。。
「おい‼彼処に兵隊がいるぞ?」
「あれは…エレモスの兵じゃないのか?」
山脈の障壁付近で日向子達はエレモス領の一軍と遭遇した
「日向子様‼ご無事でしたか‼」
その一軍を率いていたのは護衛兵現隊長、シジルだった
「え?シジルさん?どうして此処に?」
「ドルネさんから救助要請が届いて国王の命でここまでは来たのですが…
何せゴルド王国とは国交がないのと我々が下手に国境を越えると内政干渉等で戦争になりかねないので待機していたのです」
「そうだったんですか…とにかく会えて良かった」
日向子は山脈を越え障壁を抜けたとは言えポルカ達を置いて引き返すのに躊躇していたのだ
「それで…王国内はどうなっていますか?」
シジルは日向子に王国内の状況を訊ねた
「…この方々が生存者です…」
「まさか…たったこれだけとは…」
シジルは生存者のポルカ達を見回して愕然とするのだった




