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ゾンビーナ!  作者: とれさん
123/378

123 ゴルド王国の滅亡 part10


…ガサガサ…ゴトゴト…


《こんな事で騙せるのか?》


キメは日向子に疑問をぶつける


「まぁ気休めね。急に静まったらバレるのも早いでしょ?」


日向子はキメに頼んでネズミを数十体出して貰った

そのネズミ達になるべく音が出る様なガラクタを括り着けて床に放したのだ


「さ、皆さんこれから出発しますが出来るだけ音を立てない様にお願いします」


日向子が引く大八車擬きを先頭に住民達、殿はキメの引く大八車の並びで避難路を出発した


「…暗くて何も見えないな…」

「しっ!静かにって言われたでしょ?」


静寂に耐えられず喋ってしまう人間が出るのは仕方のない事だ

だがその一言が生存者全員の危険を招くという事を本人は気付いていない


キメは厳重に注意しても尚禁を破って話す人間達を見て先程の疑問を再び考えていた


動物でも魔物でもリーダーの指示があれば絶対服従が最低条件だ

だが人間はこんな単純な事も守れない


《お前達、喋れば全員が危険に晒されるのを承知で口を開いているのか?》


「!?」

「あ…」


注意されれば気付くレベルではないだろうに…

キメは人間の弱い部分を痛い程感じて混乱していったのだった


…カラーン…


「!?」

「だ、誰だ?」

「す、すまん‼どうしても手放せなくて…」


住民の1人が約束を破って私物を隠し持って来ていた様だ

それが地面に落ち狭い避難路に甲高い金属音を響かせている


…ギィィッ‼ギャギャッ‼


「ひいっ⁉」

「てめえ!何て事を!」


その音に気付いたバンパイア達が仲間に連絡を取ったのか叫び声が地上から聞こえて来る


「あれだけモノを持つなと言われたのに…お前はっ‼」

「あぁ、もう殺されるんだわ…」


緊張の糸が切れ住民達の怨嗟の声があちこちから漏れ出す


「皆さん‼そんな恨み節は此処を出てからやって下さい!」


日向子は短く一喝すると足を早めた


(《この下らない人間達を助ける意味はあるのか?》)


キメの心の中で葛藤は大きくなっていったのだった


…ギィィッ‼ギャギャッ‼


「…確実に居場所を特定されちゃってるわね…遭遇するとしたら出口…か」


バンパイア達は日向子達の位置を特定し既に追尾を始めていた

幸いにも日向子達が道中の出入口を塞いでおいた為に侵入は出来ない様だが出口は当然塞いではいない


《下手をすると出口を特定されて押し寄せて来る可能性もあるぞ?》


「…そうね、キメちゃん殿は良いから先頭に来てくれる?」


《分かった》


「それと皆さん、このままだと避難路内で戦闘に入る可能性が出て来ましたので

私達が引いている大八車を皆さんで分担して引いて下さい」


「わ、分かった‼」

「…だから籠城の方が良いって言ったんだ‼」

「あそこから出なければ助かってたかも知れないのに…」


住民達は身勝手な愚痴を言い始めた


《…人間共、黙れっ!》


「!?」

「ひいっ⁉」


さっきまで我慢に我慢を重ねていたキメがとうとう一喝した


《貴様等が主の命令を守って静かにしていれば気付かれなかったものを…

自ら状況を悪化させておいてその物言いは何だ!》


「キメちゃん、止めて‼」


《いや、主よ。これだけは言わせてくれ‼貴様等は何故自らの生を己の手で勝ち取ろうとしないのだ?》


キメの言葉に住民達はぐうの音も出ない


つい先程迄何から何まで日向子達に丸投げだった自らの命を自分達の意思で逃げると決めた事で自衛する事にしたばかりではないか


それなのに皆を危険に晒す事も忘れ不安が故に口を開きあまつさえ禁止された私物を持ち出すなどあり得ない


自分さえ良ければ良いのなら日向子達に従わず1人で逃げれば良いモノをそれすら決断出来ない


キメに捲し立てられ住民達は全員押し黙った


《お前達は獣以下だ‼仲間を危険に晒し守る事もしない、そんな人間達を俺が…

主が命を賭けて守る必要が何処にあるんだ⁉》


「そ、それは…」

「…止せ、あの者の言う通りだ」

「どんな言い訳をしてもこの危機を招いたのは俺達だ…」


「…キメちゃん、この人達は弱いの。弱いから気付かないの、行動の責任をね」


日向子も勿論住民達の身勝手な行動に振り回されている

だがそれを言わないのは日向子自身も同じ立場ならそうしていたかも知れないという負い目があるからだ


「キメちゃん、ごめんね…もう少し私に付き合って」


《主…俺は主には従う、だから心配しないでくれ》


「ありがとう、キメちゃん」


日向子は笑顔で感謝したが同時に悲しみも滲み出ていた


「…皆さん、ここで戻る事は出来ません。

なので敵が待ち受けていようとも私達で血路を開きますので万が一の時は自衛をして下さい」


「…日向子さん…」

「俺達が考え違いをしていた…」


さっきまで恐怖に濁っていた住民達の目に光が宿った


「じゃあ出発します!」


日向子達は日向子とキメを先頭に出口へと向かうのであった

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