12 平穏な日常と緊迫
日向子の初陣から数日が過ぎた
最初酔っていたとは言え半裸で踊った日向子を村人は腫れ物に触れる勢いで接していたが
日向子の明るい笑顔に一安心したのか前よりも親しみを持って接してくれる様になった
村に残る数少ない青年達は日向子のナイスボディが目に焼き付いたのか
日向子が近づくと何故か前屈みになってそそくさと去っていく様になったのは納得がいかないが。
それからの数日はゴメリが野良仕事の合間に日向子と組み手形式で格闘術を学ぶ日々が続いた
「そうだ‼相手の間合いを崩す、これが肝心だからな?」
「はいっ‼」
二人が村外れで行っている訓練にはいつしかギャラリーが集まる様になっていた
「おぉ~、流石元兵隊長だのぅ」
「えっ?ゴメリさん兵隊長だったんですか?」
日向子には軍の階級は分からないが「長」と付くからには偉かったのだろう、と驚く
「何じゃ?話しておらんだか?ゴメリはな、軍の中でも将軍に次いで偉い兵隊長の1人だったんじゃよ」
「へぇ~、じゃあ相当強かったんですね」
日向子がこう感心するのにも理由がある
以前カントさんが話してくれた所によるとこの国の軍は徹底した実力主義で月に数回ある試合に勝つと出世が確約されるので皆鍛練に余念がないそうだ
(その中でも兵隊は)長だったんだもん、相当強い筈よ )
日向子は尊敬の眼差しでゴメリを見つめる
「ブホッ⁉どうした?ヒナちゃん」
「え?ゴメリさんこんな見た目と口調だけど凄い人なんだなぁ、って」
「…「こんな」以降が納得出来んけんどまぁ大した事ぁねぇだよ(///」
ゴメリは顔を赤らめて照れていた
「あれ?じゃあ何でゴメリさんはここで野良仕事してるの?まだ全然若いのに」
「あぁ、それはちと揉め事があって将軍をぶん殴っちまったでクビになっただよ」
「殴ったって…」
「あはは、ヒナちゃん。ゴメリはな、魔物が街を襲った時に撤退を指示した将軍に逆らって街を救ったんじゃよ
だが兵に犠牲が出ての、その責を押し付けようとした将軍を殴ってしまったんじゃよ」
「えー?犠牲は仕方ないんじゃ?」
「その将軍ってのが貴族のボンボンでな、汚点を残すのが嫌だったんだと」
「うーん、何か理不尽な話ねぇ」
「だどもオラぁにゃこの生活が合ってるだよ。どうも軍のギスギスしたのは嫌いだぁて」
「そうよね、ストレス抱えて働くより合った場所で過ごす方が良いわよね?」
日向子はストレスフルな看護師の日々を思い出ししみじみと言った
「ストレ?は分からんけんど今は気楽で良いだよ。それにヒナちゃんがいるしな」
「え?まさか…」
「?あはは…違う違う、オラぁはヒナちゃんが自分の娘の生まれ変わりみたいに思えるだよ」
(ゴメリさん…)
悲運にも先立った娘との生活をゴメリは日向子によって味わっていると聞いて日向子はしんみりしてしまった
「さ、昔話は終わりだんべ。じゃあ次は魔物の種類を教えるだ」
「はい‼」
二人にはまた新たな絆が芽生えた様な気がしていた
その後カントの家で昼食を挟みながらゴメリは魔物講義を行った
この世界の魔物は大別すると「大・中・小」型と分かれ大型魔物の頂点はドラゴン、小型だとラシーラットというネズミ大の魔物までいるらしい
日向子の認識にある魔物とさほど違いはなかったが魔術がない為悪魔系の存在がないらしいのと
ゾンビやスケルトンはいるが組織立っての行動はなく本能に従って襲ってくるだけらしい
「ドラゴンかぁ…倒せるんですか?」
「倒せん。」
「え?」
「あんな恐ろしい魔物、人間がどう足掻いても倒せん」
「え?じゃあ襲われたら?」
「逃げるか死ぬか、だな」
「えぇ?」
「過去に戦った記録はあるけんど…一国の軍と引き替える程の被害が出たらしいべ」
「…まぁその位の強さはあるんだろうけど…じゃあ襲われた国はどう避けてるんですか?」
「まぁ直接戦闘を避けて「生け贄」を用意したりするんだぁよ」
「「生け贄」って…」
「あぁ、人じゃなくて食い出がある大型魔物とかをエサに何処かに去って貰うって事だんべな」
「あぁなるほど…」
「ドラゴンはエサ不足でもない限り襲って来る事はなかんべ。まぁ他の魔物も似た様な理由だけんどな」
「ん?」
「例えばエサ不足の他には縄張りに無闇に入ったりだな」
「…限りなく動物に近い行動って事ですか?」
「んだよ」
日向子は納得する
「後は魔物の「氾濫」が時々起こるんだぁよ。理由も理屈も分かってないけんどな」
「「氾濫」かぁ…災害みたいなモノかな?」
「まぁ発生したら近隣は壊滅するから災害と言えば災害だんべな…」
…壊滅って…
日向子は困惑するが災害扱いでは防ぎ様がないのも事実である
二人の座学が終わりかけた時、大工のゲンガが家に飛び込んで来た
「西の山で魔物が沢山沸いたらしいだ‼」
「沢山って…まさか「氾濫」⁉」
「いや…多分ただ数が多いだけだんべ」
「よし、ヒナちゃん。出撃だんべ‼」
「はいっ‼」
日向子はゴメリ達を置いて空中に跳んだ
「かぁ~っ‼ヒナちゃん凄ぇなぁ‼」
「オラぁも急がないと‼」
ードタドタドタドタ…ー
「…もしヒナちゃんが殺られてもゴメリは間に合わんな、アレは…」
見送るカントとゲンガはしみじみと呟いた




