116 ゴルド王国の滅亡 part3
バサッ、バサッ、バサッ、
「…今まで通過してきた村々は絶望的ね…」
《あぁ、俺の探知能力でも生者はゼロだった》
日向子達は今上空から一直線にゴルド王国に向かっている
その途中通過した村々で生存者を探そうと幾分高度を下げてみたがその視界に映る光景は絶望の二文字しか映らなかった
焼け落ちた家屋、蠢くゾンビやバンパイア、累々と転がる死体
都市部と違い簡素な家屋しかない農村部では変態した村人達の襲撃に持ちこたえられなかった様だ
「せめて石造りの建物があれば違ったかもね…」
《主、可能性の話をしても仕方がない、先を急ごう》
「うん、そうね。ポルカさん達は今も生き延びているかも知れないもんね」
日向子達は全滅した村々を諦め高度を上げた
。。。
《主、あれがどうやらゴルド王国らしいぞ》
「…そうね、城壁に囲まれて頑丈そうだけど…あちこちで煙が上がっているわ…」
日向子達の目の前に高い城壁が現れた。
城壁を飛び越え城内を見渡すとそこは城下町と呼ぶに相応しい程整備された街並みがあった
本来であれば人々の往来で騒がしいであろう城へと続く大通り
それが今や人っ子1人いない
いや、正確には「元人間」で溢れかえっていた
(ヴゥ…ウガァ…)
(ゴァッ‼ウギィ…)
城下町に住んでいた人間の成れの果てであろうか、ゾンビの群れが倒れた遺体に群がり人肉を貪っている
「…生存者、いる?」
日向子はキメに訊いた
《あぁ、僅かだが幾つか反応があるぞ》
「じゃあ先ずは生きてる人達を助けましょう」
《分かった、近いのは…ここだ》
キメは眼下にある石造りの民家に舞い降りる
…ドシュッ‼ズバッ‼
(ウギッ⁉)(ギャッ‼)
「もしもし?生きている人はいますか?」
日向子は閉じられたドアに訊ねる
「…お前は誰だ?」
「私は日向子、生存者を助けに来ました」
「…馬鹿な?街は全滅しているのに何故外にいる?どうせ魔物かバンパイアだろう?騙されんぞ!」
住民は疑い深くなっていて日向子の言葉を全く信用していない
「えっと…ドルネ商会のドルネさんに依頼されて来ました。お兄さんのポルカさん達を救出に」
「何?ポルカさんを?ドルネさんに頼まれたってのか?」
「はい、私達の前に救護隊を派遣したのですが…全滅しちゃってそれで私が来ました」
「い、良いから中に入れ!」
ゴトゴト…ギィィ…
日向子達は声の主に誘われ建物の中に通された
「…お父ちゃん…この人達は襲わない?」
「あぁ、大丈夫だ。俺達を助けに来てくれたそうだ」
「…あなた…お母さんが…」
「なっ⁉母さん‼母さん‼」
(…グルァァァッ‼)
…ザシュッ‼
「お前‼良くも母さんを‼」
「…ごめんなさい、もぅゾンビになってたから…」
「…あなた…」
目の前でゾンビに変わったとは言え母親を殺された男は刺した日向子に飛び掛かろうとしたが
多分彼の妻であろう人物に止められた
「…母さん…ゴメンな…」
「あなた…」
変わり果てた母の遺体をそっと横たえて男は項垂れた
「…ところであなた方は?」
「私は日向子、こっちはキメ、ドルネさんに依頼されて生存者の救出に来ました」
「…たった二人で…ですか?」
《主も俺も強い。二人で十分だ》
人化したキメがそう言うと項垂れていた男が振り返った
「…俺はアル。さっきは取り乱してすまん…」
「いえ、お母さんだった人をいきなり倒してゴメンなさい」
「…母さんは立て籠る前にアイツ等に噛まれたんだ…優しい人だった…」
アルは溢れる涙を拭おうともせず立ち上がった
「俺はポルカさんの所で働いている者だ。事情を説明してくれ」
日向子は改めてドルネから聞いた事を説明した
「成る程な…ただポルカさん達が生きているかどうかは分からないぞ?」
「えぇ、ドルネさんも生きていて欲しいとは望んでいましたが第一に生存者の救出を優先しました」
「…そうか、ドルネさんらしいな」
《それで今から生存者達を探そうと思うが可能性が高い場所は何処だ?》
「…そうだな…ゾンビ共は頑丈な石造りの家には太刀打ち出来ない様だから…
数軒先の家と隣の店、その先にある教会とかなら可能性が…」
「あ、ちょっと聞くだけじゃ覚えられないからここに書いて貰えますか?」
「分かった」
「それで…出来れば生存者を一ヵ所に集めたいんですが広い頑丈な建物とかはありますか?」
「うーん…そうだな…頑丈で大きいと言えばポルカさんの商会だが…無事かどうかが分からないな」
「…そうですか。じゃあ先ずポルカさんの商会に行ってみます。ソコを拠点にしてから迎えに来ますね」
「分かった、気をつけろよ‼」
「アルさん達もね」
日向子達は家の外に出るとアルの家の前を瓦礫で補強した
(ヴゥ…ウガァ‼)
ドシュッ、ドシュッ‼
《商会は此処から東に十軒先だと言っていたな》
「えぇ、大きいからすぐ分かるって言ってたし倒しながら向かいましょう」
《了解》
日向子達はポルカの店に向かって走り出した




