109 GO WEST part8
…ブブンッ‼ジャコジャコッ‼
日向子が足を軽く振ると具足部分から一対の刃が飛び出した
「手甲剣に続く第二弾「足甲剣」よっ‼」
《…相変わらずネーミングが安直過ぎる‼》
「これで攻撃力2倍よ!」
《…2倍迄はいかないんじゃ…》
「えーいっ!」
日向子は手足に付いた剣で迫り来るバハムート達を次々と屠って行く
クルッ、ザシュッ‼ザキッ‼クルッ
日向子の体は時に縦に、時に横に回転しつつ敵を撃破していく
体幹を軸に回転しながら戦うその姿はまるで輪舞曲の踊り子の様だった
『…美しいわ…』
黒竜は日向子の舞いを見て思わずため息を漏らす
どうにか致命傷を避けたバハムート達はキメの追撃により絶命していく
((黒竜様‼見惚れている場合では御座いません‼私も出ます!))
傷の癒えたオロチはそう言うと前線に躍り出た
((先刻は不覚を取ったが今回はそうはゆかぬぞっ‼))
「…えー?まだやるの?」
((な、何を言う!負けた訳ではないぞ!))
「もう弱点バレバレじゃないの…」
((フフフ…そんなモノは無いわっ‼))
オロチは日向子の前に立ち慌てて付けた鎧をみせびらかした
((フハハッ‼これで弱点な…ど?))
セリフを言い切る前にオロチは真っ二つに裂けた
「いちいち終わり迄聞いていられないわよ…キメちゃん‼」
日向子はキメを呼びオロチを吸収させた
((や、やめろぉ!嫌だぁっ!))
瞬く間にオロチはキメに取り込まれた
「さあ黒竜さん、観念してね」
『…妾は戦わぬぞ?』
「…は?」
『見ての通り身重故にな』
「。。。えぇ~?」
さっきからお腹を擦っていると思ったら当世の黒竜はメスだった様だ
「え、じゃあ何でドラコニアを狙ったの?」
『それはオロチが勝手にやっていた事じゃ』
「…じゃあ…」
『本人も死んだ事だし降参させて貰う』
。。。え???
…こうして黒竜の反旗は何とも歯切れの悪い結末を迎えたのだった
ー黒竜の間ー
「…このままじゃ報告も出来ないから黒竜さんドラコニアに来てくれる?」
『それは構わぬが…先ずは妾の伴侶を探してくれぬか?』
「えっと、旦那さんは誰なんですか?」
『妾の片割れは四竜が一体、地のラルドなるぞ』
「《…えぇ?》」
日向子もキメもその場にいたバハムート達も仰天して固まっていた
ードラコニアー
ドスドスドスドス…バカンッ‼
「ただいま帰りましたっ!」
日向子は激昂している
『ひ、日向子殿⁉な、何故それほど激昂しておるのだ?』
『主殿か?ど、どうした?』
シルグもワイトも日向子の怒りっぷりに動揺している
「どうもこうもないわよ!はい、黒竜さんどーぞ!」
『『!?』』
『どーもー☆』
ワイト達は思わず身構えるが黒竜の大きなお腹を見て呆然と立ち尽くしている
『…これは一体どういう事だ?』
「それはこっちが聞きたいわよっ!もうっ⁉」
日向子は目の前のテーブルを力任せに叩いた
ゴッッ!メキャッ!
『あ、主殿‼先ずは落ち着いて‼』
シルグは暴走寸前の日向子を体を張って抑えた
「ねぇ、こんな事ってある?私悪くないわよね?」
日向子の説明は主語が抜けていて要領を得ない
『…キメよ、説明してくれるか』
《はい、シルグ様》
キメは黒竜達の住み処を急襲した所からオロチの死、黒竜の懐妊による降参劇まで一気に説明した
『…は?』
『ラルドが子だと?』
『えぇ、妾が夫ラルドとの子です』
『…おのれ…ラルドめ…』
…ズゴゴゴゴ…
ワイトは怒りの余り体中から炎を吹き出した
『…待て。ワシに説明せよ、ワイトよ』
どうやらシルグも事の詳細迄は伝えられていなかった様だ
千年程前、先代の黒竜が死んだ際にワイトとラルドが相談し次代の黒竜を監視する事を画策した
ラルドは元々先代黒竜と交流があった為、後見人として潜り込み反逆の芽を摘もうと考えたのだ
計算違いは2つ。次代の黒竜がメスであった事と情にほだされてラルドと恋仲になってしまった事だ
『黒竜よ、ラルドは何処にいる‼』
『それが…ワイト様が兵を差し向けると情報が流れた後急に旅に…』
『ぐぬぬ…奴め、逃げおったな?』
ワイトの怒りが更に増して隣にいたシルグの身を焦がす
『熱っ⁉いい加減にせぬか‼』
シルグは極寒の風を出しワイトの体を凍らせた
『では黒竜よ、お主にドラコニアを襲う気持ちはないのだな?』
『夫ラルドの友であるワイト様に反意は抱く筈がありませぬ』
『では何故オロチと組んだ?』
『え?…組んだ訳ではなく妾はオロチに夫の捜索を頼んだだけですけど…』
「…は?」
『ですから…妾はオロチに『ドラコニアに向かいます』と言っただけです』
『「《。。。》」』
説明を聞いてもモヤモヤする結末となった
要は黒竜を立てて覇権を握ろうとしたオロチが黒竜の言葉を勝手に解釈し
ドラコニア襲撃を画策した
そんな矢先、日向子という侵入者があれよあれよと言う間に侵入し説明も出来ないままオロチ迄倒されたのだ
『もし正式に来訪をお伝え頂ければ妾も私兵を失わず事情もお伝え致したモノを…』
「…誰の為に危険を承知で依頼を受けたと思ってるの?」
日向子の怒りは3日程収まる気配がなかったという




