10 Road to討伐者part3
「そこは受けるだけじゃダメだ‼流して相手の姿勢を崩し掌底を叩き込め!」
「はいっ!」
「1つ1つの攻撃が動作が大き過ぎる!」
「はいっ!」
今日向子は村の外れで近接戦闘の基礎を教わっている
「よし、今の動きを忘れるなよ!日々の反復がいざと言う時に支えになるからな!」
「はいっ!」
ゴメリは熱が入るとどうも訛りが抜ける様だ
「良し‼休憩にするぞ」
「はーい」
日向子はカントさんが作ってくれたお弁当を広げる
「ふぅー、しかしヒナちゃんは覚えが早いだなぁ。オラぁも嬉しくてつい熱が入っちまっただ」
「ゴメリさんもう訛りが戻ってる…」
「あはは、こりゃ癖なんだろな。軍だと訛ってるとナメられるんだよ」
「へぇ~、ここでもそんな偏見があるのね」
「ん?ヒナちゃんトゴの国でもあったんけ?」
「えぇ、訛ってる人を茶化したり何となく下に見る風潮はあったわ」
「へぇ…国は違えど変わんねぇモンなんだなぁ…」
「全くよね、下らないわ」
人間のマジョリティ優遇論は見ているだけで不快だと思う日向子であった
ー1週間後ー
「た、大変だー‼南西の森でミリガン達が魔物に襲われてる‼」
この日畑で作業をしていたタールがゴメリの家に飛び込んで来て叫んだ
「何っ⁉何処だ?」
「オラの畑の先の森だ‼」
「良し、南の森だな?」
ゴメリは太刀を手に取ると表に飛び出した
「ヒナ‼魔物が南の森に出たぞ‼」
「えっ⁉あ、はいっ‼」
カントの家で弁当を詰めていた日向子は着替えていなかった
「着替えたらすぐ向かいます‼」
「分かった‼先に行くぞ‼」
ゴメリは走りながら日向子に声掛けしてそのまま走り去った
「大変‼急がなくちゃ‼」
日向子は慌てたせいか防具の装着に手間取る
「ほれほれ、慌てると却って遅くなるだよ。手伝ってやるだよ」
カントは背中に回ってベルトの装着を手伝ってくれた
「ありがとう、カントさん」
「気をつけてなぁ」
「はい、行ってきまーす‼」
何とか装着を終えた日向子が急いで外に飛び出す
(大分遅れちゃったから急がないと‼)
日向子は全力で跳躍する
ードガッ‼ー
カントの家の前に土埃が上がり日向子が弾丸の如き速度で移動していく
ーダッダッダッダッー
「ヒナちゃんは初陣だし着替えに手間取っているのか?」
ーダダダダダッ‼ビュンッ‼ー
「うおっ⁉」
日向子に気遣いつつ全力で走るゴメリの脇を黒い影が高速で追い抜いていく
「ゴメリさん‼先に行きます‼」
「お、おう‼」
日向子の速度が速すぎてお互いの言葉は相手に届く事はなかった
「きゃあっ‼」
「グォォッ!」
その頃薬草を取りに森に入ったミリガンとモーラは襲い来る魔物から必死に逃げていた
「モーラ、逃げて‼」
「嫌ぁ‼置いていけない‼」
先程躓いて転んでしまったミリガンにモーラが覆い被さる
「バカっ‼二人とも死…」
ー…ューン…ドゴォーンッ‼ー
「ゴァァァッ⁉」
二人に鋭い前腕を振り下ろした魔物が突然横に吹っ飛ばされた
「二人とも大丈夫っ⁉」
「「えっ⁉うん‼」」
「魔物の相手は私がするから早い内に逃げて」
「え、あ…はい!」
日向子の飛び蹴りをモロに食らって20m程吹っ飛び木に激突した魔物はヨロヨロと立ち上がり日向子達に唸り声を上げる
(あれ?あれって月ノ輪熊じゃないの?)
ふらつきながらも殺気を向けている魔物は大きさこそデカいものの見た目といい特徴的な胸の模様といい
完全に月ノ輪熊だった
「どっちにせよ倒さないとね‼」
ーブンッ‼ジャコッ‼ー
日向子は腕を振り手甲剣をスライドさせる
「グルル…ゴァァァッ‼」
ードドッ‼ドドッ‼ドドッ‼ー
ダメージから回復した(熊)が日向子目掛けて突進してくる
ードドッ‼ドドッ‼…サッ‼ー
(熊)が日向子に体当たりをしようとした瞬間動きを見切った日向子が紙一重で横にいなす
「…ここっ!」
ードスッ!「グギャァ‼」ー
無駄のない動きで横にいなした日向子の手甲剣が(熊)の首筋に深く突き刺さる
「えいっ!」ードシュッ‼ー
日向子が刺した腕を横に払うと(熊)の首が勢い良く飛んでいく
ー…ューゥ…ドンッ、ゴロゴロ…ー
空高く舞い上がった(熊)の首は落下し地面に転がった
日向子、初陣初勝利である。
ーダッダッダッ…ー
「おーぃ、無事かぁ~⁉」
2拍遅れてゴメリが現場に到着した時には戦闘は既に終わっていた
「はぁっ‼はぁっ‼…魔物は何処だ⁉」
「あ、ここです」
「ん?はっ⁉」
ゴメリが息も絶え絶えに前方を見ると体長3m程の(熊)の首なし死体が転がっていた
「…これをヒナちゃんが?」
「はいっ‼上手く倒せました‼」
「。。。そうか、良かったな」
「はいっ‼」
日向子はゴメリに誉められて嬉しそうだ
ゴメリは荒い息を整えながら思う
(コイツもソコソコ強い魔物なんだけどな手間取る)
「ミリガン達は?」
「先に逃がしました。怪我は無さそうでしたよ」
「よし、じゃあ魔物の死体を村に運ぼう」
「あ、じゃあ括りつける棒か何かを探して来ますね」
日向子はそう言うと森の奥に消えて行った
「…こりゃ直ぐに免許皆伝だな」
ゴメリは肩を竦めて魔物の死体を見つめていた




