1 気がついたら別世界
前作ゾンビーノ!の具現化チートを廃して見切り発車!
まだ執筆中なので少しずつ投稿予定です
ーザー…ザー…ー
《緊急避難警報が発令されました。近隣の方は避難して下さい》
(うーん…騒がしいなぁ…夜勤明けで寝てないのに…)
日向子は窓の外でひっきりなしに流れている避難命令を疎ましく思っていた
(もう少しで眠れそうなのに…)
ーザザー…ゴゴー…ー
…zzz…
ーゴゴー‼バキッ‼バキバキ‼ー
「えっ⁉」
次の瞬間彼女は空中に放り出された
ーバシャーンッ‼ー
「あぶっ‼ぷふっ⁉何これ⁉」
空中に浮いたと思ったら突然水の中に投げ出された
彼女のアパートは浸水により崩落してしまったのだ
(私っ泳げな…ぶはっ‼)
日向子はカナヅチだった
「た、助けっ‼」
ーガツンッ‼ー
次の瞬間彼女の意識は断ち切れた
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ピー…チチチ…ピー…
「…?ここは?」
日向子が目を覚ますと何処かの草原に放り出されていた
(私…濁流に飲まれて…ここに?)
ボンヤリしていた意識が徐々に明瞭になり彼女は仕事柄直ぐに自らのバイタルをチェックした
(脈は…え?)
手首で測っても総頸動脈に触れても脈動が無い
(えっ?えっ?)
日向子はパニックなりながらも外傷がないかチェックする
(えっ?)
触診してチェックすると骨折などはしていなかったが左大腿に裂傷があり動脈が切れていそうなのに出血が殆どなかった
(ど、どういう事⁉)
「た、体温は?…低そう…脈動もなし…呼吸数は⁉…してないの?どうして??」
頭がおかしくなりそうだった
日向子のバイタルは自身の「死」を指していたのだ
混乱して動けなくなり、彼女は本来であれば大出血をしている筈の大腿部をボンヤリ見つめていた
日向子はおもむろに指で裂傷部分を開いてみる
彼女は市内の総合病院のオペ看なので慣れっこだった
ーグチュ…グチュ…ー
「やっぱり…大腿動脈が損傷してる…なのに出血がないなんて…」
彼女は鼠径部や他の脈動が取れる部位を確認したが全て触れない
「あ…考えたら痛くないわ⁉」
そう、日向子の大腿部は15cmは裂けているしさっき指を突っ込んだのに痛覚が麻痺していた
「何で?…ここは何処なの?」
日向子の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされた
草原で目覚める前はアパートの自室で…大雨が降っていて…サイレンやアナウンスがひっきりなしに流れていて。。。あっ⁉
「私…死んじゃった?」
そうか、ここは天国で私は死んでここに送られたのか…な?
天国ってこんな何もない草原なの?イメージ狂うなぁ…
それに裂傷そのまんまとかあり得なくない?
何かこう…白い綺麗な景色を想像してたんだけど…
「おーぃ、オメぇ何してっだぁ?」
えー…?天国なのに方言丸出しの天使なの?ってオッサンじゃん!
「…はい?」
「だからぁ、オメさこったらトゴで何してっだって言ってんの‼」
日向子の前には天使…ではなくカ○ルおじさんみたいな泥棒ヒゲをたくわえたオッサンが立っている
「…ちょっと怪我しちゃってて…」
「どれっ?あらぁ、こら大変だぁ‼オラん家さ来い!ほれっ‼」
見た目カー○おじさんは日向子を背負うと家があるという方角に歩きだした
ーカンカンカンカン‼ー
「おーぃ、ゴメリが帰って来たぞぉ~‼」
日向子は人の大声にビックリして見上げると火の見櫓の上で誰かが叫んでいる
その声が合図だったのかパラパラと見える粗末な家々から人が出て来る
「今帰ったどぉ~」
「あんらまぁ、ゴメリは町に行って嫁っ子捕まえて来たんだか?」
カ○ルおじさんは「ゴメリ」と言うらしい。
近寄ってきたお婆さんが背中の日向子を見てビックリした顔でゴメリに尋ねる
「ガハハ、婆っちゃ。何言ってんだぁ‼オラぁ怪我人をおぶって来ただけだぁよ」
「おんや、この娘っ子は怪我しとるのかぃ?そんじゃあウシャ爺のトゴに連れてかねばの」
(…あれっ?何か日本人の名前が1人も出て来ないな…やっぱり此処は天国とかそう言う所かな?)
日向子は心の中で違和感が何なのか必死に確認していたのだ
「とにかくウシャ爺のトゴさ行ってくるだぁよ」
カー○おじさん改めゴメリは日向子をおぶったままウシャ爺?の所に急ぐのであった