あのときの恋の木
春になった。
花びらがひらひらと舞う。
その光景に、昔を思い出す。
ハート型の花びら。
それらが幾つも集まって出来た大きなピンクのハート。
昔、そんなサクラの木の下で、遠くに行ってしまう好きな人と別れの握手をした。
それ以来、一度も会っていない。
今もずっと心の奥にいる。
カラダは勝手に動いていた。
思い出を振り返りながら、あの公園に走っていた。
あの日以来、行っていない公園。
あの日以来、見ていないサクラの木。
今も残っているかは分からない。
今も綺麗に咲いているかは分からない。
それでも期待を膨らませて走っていく。
あの思い出の場所へ。
目的の場所に着くと、あの日と同じ景色が広がっていた。
ひらひらと舞うハート型の花びら。
公園の中央にそびえる大きなピンクのハート。
下に視線を向けると人影があった。
その人影に、ゆっくりと近づいていく。
すると、好きだった人と小さな少女が一緒にサクラの花を見上げていた。