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イーダ・オルマリン 〜青き星、その王女の物語〜  作者: 四季
10.冷たき夜

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97話 紅の女

 ラナたちを鋭く睨みながら、いつでも撃てる状態になった赤い拳銃を構えるリンディア。

 その全身からは、ただならぬ殺気が漂っている。


 対する二人はというと。


 ラナは刃が波打った剣と巨大化した手を、ミストはクナイとステッキを、それぞれ構えている。


「アンタら……二人まとめて地獄に落としてあげるわよー」


 リンディアは低い声を発し、直後、拳銃の引き金を引いた。


 光が飛ぶ。

 宙に華麗な線を描く。


「ミストは下がり! うちがやる!」

「はい」


 ラナがミストの前に出る。そして、巨大化した右手を前に出す。その大きな手のひらで、リンディアの拳銃から放たれた光の弾丸を、すべて防いだ。


 しかし、防御によって生まれた隙を突いて、リンディアはラナへ接近していた。

 拳銃で攻撃することが狙いではなかったようだ。


「ふっ!」


 ラナに急接近したリンディアは、その足を振り上げる。


「くっ」


 蹴りは何とか防いだラナ。

 しかし、短い声を漏らしている。


「まだまだいーくわよー」


 リンディアは再び蹴りを繰り出す。


 ラナは、リンディアの蹴りを防ぐことで精一杯だ。今のリンディアは、運動神経が良いラナですら反撃できないほどに、隙のない動きをしている。


 接近戦を繰り広げる二人の後ろにいるミストは、クナイとステッキを構えたまま、様子を窺っている。恐らく、リンディアに隙が生まれるのを待っているのだろう。


 だがリンディアに隙はない。

 それに、彼女の瞳は、ぶつかり合うラナだけではなく、ミストのことも見ている。


「リンディア凄い……! ねぇ、ベルンハルト」

「そうか?」

「だって、二対一でも負けそうにないのよ。凄いことじゃないかしら」


 私は純粋に感動しているのだが、ベルンハルトは真顔のまま。


「凄く……ない?」


 彼があまりに真顔のままだから、少し不安になってしまって、私は弱めに問う。自分の考えに、自信がなくなってきたのである。


 暫し沈黙。


 その後、彼は述べる。


「……そうだな。確かに凄い」


 静かな声だった。


「そうだった。今のうちに、アスターの状態を確認しよう」

「そ、そうね! そうだわ!」


 おっと、アスターのことを失念していた。

 そうだ。今は彼の容態を確認することが大切なのだ。もうしばらくこのまま放置しておいて大丈夫なのか、確認してみなくては。


「けど、私は知識がないわ。ベルンハルト、一人で確認できる?」

「当然だ」

「私は何をしたらいい?」

「何もしなくていい。ただ、狙われないよう僕の近くにいろ」


 やはり私は役に立てない。


 そんな思いが、胸を痛くする。


「……役立たずはもう嫌なの。私にできることを言って」

「ない」

「どうして!」

「怪我人に触れるのは、貴女の役目ではない」


 ベルンハルトは、ポケットから透明の手袋を取り出し、手に装着する。そして、アスターに触れていた。


「……アスターさんは私の従者よ。何もしてあげられないなんて……」

「貴女は、自分の身を護っていればそれでいい」

「そんな……!」

「余計なことをするな。下手に動いて敵に襲われては面倒だ」


 ベルンハルトの声は静かなものだった。とても静かな調子で、しかも、非常に落ち着いている。


 落ち着いている彼が傍にいてくれるおかげで、私は狼狽えずに済んでいる——そういう意味では、彼はありがたい存在だ。


 ただ、少し冷たくも見えるけれど。


「……そうね。その通りだわ」


 彼は冷たくも見える。

 しかし、言っていることは事実だ。


 力のない者がやみくもに動いたところで、被害が拡大するだけ。それならば、動かない方が良い。不必要に動かなければ、取り敢えず、今より悪い状況に陥ってしまうことは避けられるから。


 私とベルンハルトがそんな風に話している間も、リンディアとラナらの戦闘は続いていた。


「邪魔よー」


 しばらく空いてそちらを見た時、ちょうど、リンディアの蹴りがラナに突き刺さる瞬間だった。


 リンディアの蹴りは威力があるようで、ラナの体が後方へ大きく飛ぶ。


「隙あり、です」


 蹴りを放った後、リンディアの動きが少し止まった瞬間に、ミストはクナイを投げる。リンディアは、それを、射撃によって落とした。


「そーんなおっそい攻撃で、ちょーしに乗ってんじゃないわよー」


 なぜそんな芸当ができるのか、不思議で仕方ない。


 ただ一つ確かに分かることは、リンディアの腕が確かだということ。


 彼女は自信家で、自分の強さに誇りを持っている。そして、時折ではあるが、それを自慢してくる。


 能力のない者ほど小さなことをいちいち自慢すると言うが、彼女の場合はそうではない。

 自慢はするが、伴った能力をちゃんと持っている。


 それがリンディアだ。


「次はアンタよー」


 先ほどの蹴りでラナの動きが少し止まった。そのため、リンディアは意識をミストへと移す。


「……わたしですか」

「大人しくやられてちょーだい」


 ミストの顔つきが固くなる。

 それとは対照的に、リンディアの口元には笑みが浮かんでいた。


「そうですね」


 ひとまとめにした赤い髪をなびかせながら、ミストへ接近するリンディア。

 対するミストは、リンディアの拳銃を持っている手にステッキの先を向ける。


「そんな夢があれば良いですね」


 刹那、リンディアが持っていた拳銃が吹っ飛んだ。


 手を離れた拳銃は、宙を舞い、床へ落下する。


 一体何が起きたというのか。私はその現象がちっとも理解できなかった。今この胸は、何がどうなってこうなったのか、という疑問に埋め尽くされている。


「な——」


 リンディアの口元から笑みが消えた。


「では、さようなら」


 ミストの瞳は冷たい光を帯びている。


 数秒後、ミストはクナイを振る。

 後退してかわす時間はないと判断したのか、リンディアは腕で防御。


「——っ!」

「非効率的な人ですね」


 クナイはリンディアの腕を傷つけた。


「終わっていただきます」


 リンディアへステッキを向けるミスト。

 その双眸には、真剣な色が滲んでいる。


「ちょーしに乗るんじゃないわよー」

「もちろん、気は抜きません」


 向けられたステッキの先を、リンディアは回し蹴る。ミストはステッキを落としはしなかったが、ほんの少しバランスを崩す。


 そんなこんなで、リンディアとミストの戦いはまだ続くのだった——。

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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。 少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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