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イーダ・オルマリン 〜青き星、その王女の物語〜  作者: 四季
9.新たな仲間?

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86話 また人が増えた……けど?

 こうして、私の周りには、また人が増えた。


 今度は従者ではなく、身の回りの世話をしてくれる、王女つきの侍女である。


 といっても、従者との違いはいまいち分からない。ただ一つ確かなことは、私の自室に出入りする人が増えた、ということだけだ。



「——で、その娘が侍女になったーってわけ?」


 星王の間を出て自室へ戻ると、そこで待機していたリンディアやアスターに、フィリーナのことを紹介した。


 しかし、リンディアもアスターも、眉間にしわを寄せている。


「そうなの。フィリーナっていうのよ」

「ほう。これまた、若々しい娘が当たったものだね」

「アスターさんは若い女の子が増えて嬉しいんじゃない?」

「いや、まったく。失礼ながら、まったくだよ」


 なぜだろう。二人とも、フィリーナを受け入れてくれそうにない。


「よ、よろしくお願いしますぅ……」


 冷たい態度を取られたフィリーナだが、向けられた冷ややかな視線に負けず、懸命に頭を下げる。

 もっとも、それでもリンディアとアスターの表情が変わることはなかったのだけれど。



 ——翌朝。


 私がベッドの上で目を覚ますと、室内が何やら騒々しかった。


「ちょっとー! 何やってんのよ!?」

「す、すみませんー!」

「ここは王女様の部屋よ、分かっているのー!?」

「は、はいぃ!」


 暫し聞いていると、その騒々しさの原因が、リンディアとフィリーナであることが分かった。


 恐らくは、フィリーナが何かやらかしたのが原因なのだろう。しかし、今私が出ていくと、さらなる大騒ぎになりそうな気がして仕方ない。


 ただ、ずっとこうしていても、いつかは起きているとばれるだろう。

 後から「起きていたの!?」となるのも、少々恥ずかしいものがある。


 そんなことを一人考え、「どうしよう……」と悩んでいた最中。唐突に、アスターが現れた。


「おはよう、イーダくん。目が覚めたのかね」

「アスターさん!?」


 思わず大きな声を出してしまった。恥ずかしい。


「起床早々枯れ果てた男の顔を拝むことになるなんて、と、がっかりしているかな?」

「まさか。そんなことはないわ」


 正直、男の年齢なんてどうでもいい。

 べつに、起きてすぐに美男子を見たいなんて欲望があるわけでもないし。


「ところでアスターさん。あの騒ぎは何?」


 今一番気になっていることを尋ねてみた。

 するとアスターは、呆れたような顔で、口を開く。


「あの侍女の娘が、信じられないほど不器用でね。運んできたトイレットペーパーを部屋中に散乱させたり、花瓶の水を入れ替えようとして洗面所を水浸しにしたり、早朝から色々凄まじいことになっていたのだよ」


 うわぁ……。


「最初はリンディアが色々と手伝っていたのだがね……」

「もっと酷いことがあったの?」

「お疲れ様、と出された紅茶に謎の虫がこんにゅ——」

「お願い! それ以上は言わないで!」


 思わず耳を塞いだ。

 起きるなりそんなことを聞いてしまったら、今日一日、何も飲めなくなってしまう。


「おっと失礼。そう。そういうことがあって、リンディアは、ついに爆発してしまったのだよ」

「そうだったのね……」


 私がのんびり眠っている間に、どうやら、結構凄まじいことが起きていたようだ。眠っていた私は、ある意味ラッキーだったのかもしれない。


「いー加減にしないとアンタ! ほーり出すわよ!」

「ふぇーん! お願いですぅ。それだけは、それだけは勘弁して下さいぃぃぃ!」


 リンディアとフィリーナは、まだ騒いでいる。


「……そろそろ黙らせた方がいいかね?」

「そうね。近くの部屋に迷惑になるかもしれないわ」

「承知。では、私が黙らせてくるとしようかな」

「お願いね」


 本気で怒っているリンディアを、アスターが制止できるとはとても思えない。だが、私になら制止できるという保証があるわけでもないので、ひとまず彼に頼んでおいた。


 若干情けなくとも、師匠は師匠だ。

 きっと何とかしてくれるだろう。



 それから数分経って、リンディアの声が聞こえなくなったため、私はベッドから出ていった。


「おはよう、リンディア」

「……おはよー」


 リンディアは乱雑にソファに腰掛けている。しかも、非常に不機嫌そうな顔で。

 私に挨拶を返してくれたのが不思議なくらいだ。


「お、おはようございますぅ……」


 侍女の制服を身にまとったフィリーナは、おどおどしながら、私に挨拶をしてくれた。


「おはよう、フィリーナ」

「ふぇぇ……お優しい……」


 よく見ると、彼女の着ている服はかなり汚れていた。


 黒いスカートの裾は見ただけで分かるほどに湿っており、エプロンには茶色い染みがいくつもできている。

 まだ朝だというのに、この汚れよう。なかなか凄まじいものがある。


 一日経ったらどうなってしまうのだろう……、という感じだ。


「フィリーナ、朝早くからご苦労様」

「はっ、はいっ! ありがとうございますっ!」


 素直なところは悪くないのだが。


「ちょっと王女様、聞ーてくれなーい?」


 口を挟んできたのはリンディア。

 恐らく、フィリーナに関する文句を言いたいのだろう。


「どうしたの?」

「彼女、ぜーんぜん役に立たないわよー」


 リンディアは一切躊躇うことなく言った。本人が目の前にいるというのに。


「朝から見ていたのだけど、ほぼ、よけーなことしかしてなかったわよ。むしろ、彼女がいることで状況が悪化してるとしか思えないわー」


 フィリーナは俯く。その唇は、微かに震えていた。


「お世辞にも侍女に向いてるとは言い難いわねー」

「そう? まだ慣れていないだけじゃなくて?」

「どう考えても、慣れてる慣れてないの問題じゃないわよー」


 確かに、フィリーナは不器用なのだろう。

 第一収容所で会った時も、また間違った、みたいなことで怒られていた記憶がある。


 だが、父親があれほど推薦していたことには、何か意味があるはずだ。


 もしフィリーナがただの無能であるのなら、あれほど必死に推薦することはないと思うのだが。

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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。 少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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