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俺がここに来た意味は本当に何なんだろう?

スコープから目を離す。そして、自分の仕事は終わったといわんばかりに


《敵の殲滅を確認。主導権を解除します。》


と言って、博識者が体の主導権を俺に戻した。

その瞬間にⅯ24の重みが一気にかかる。

危うく態勢を崩しかけるが、踏みとどまって何とか立ち上がる。


うまくいったな。


というか、あれだけ腕が高かったら無敵だろう。

全てがヘッドショットで、一発も外さないとかなると、戦場では超遠距離から打ち抜く凄腕スナイパーにでもなれただろう。


武器の欄からⅯ24を消しつつマクノスたちのほうを向くと、マクノスやカリナ、ラグナロクは目を見開き、アリスが驚いた顔で口を押えている。


ドヤッと視線を向けると、カリナだけが気づき、


「凄いわね」


と褒めてくれた。

「そうだろう?」


なんて言っていると、


「より一層なんなんだその武器は。威力は申し分ないし距離による威力の低下もあまりない。昨日見た銃とやらより威力と射程が格段に高い。最高何度の魔法でもこれほどの距離は届かない。」


ラグナロクがⅯ24をなめるように見ながら言う。


「あなたのその銃っていう武器から全く魔力を感じなかったけど、どうやってあの距離を出したの?」


と、アリスが聞いてきた。


「お前さん、記憶がないといったが、まさかほかの大陸から飛ばされた可能性はあるな。そんな技術はこの大陸にはないだろう。」


マクノスはとても不思議に思っているようだ。


「すまない。その辺の記憶はないんだ。自分の出身はわからない。」


「そうか。だが、もし他の大陸のものだったなら、この大陸は他の大陸と仲が悪い。」


なるほど。

そうなら面倒な話だが、俺の出身はこの世界には存在しないので、大丈夫だろう。


「まあ、とりあえず獣牙人は倒したんだし、見に行ってみないか?」


と俺が進めると、


「そうだな。とりあえず行ってみるか。」


馬車のほうに振り返り、歩き出す。


「なあ、さっき他に大陸があるって言っていたが、どんな大陸があるんだ?ちょっと詳しく教えてほしいんだが。」


気になったので、興味本位で聞いてみた。


「ああ。この大陸のほかには五つ大陸があってな。魔族が占領した大陸が二つと、人が住む大陸が一つ。そして、森林で埋め尽くされたダンジョンとモンスターが大量にある大陸、最後に人は誰も踏み入れない悪魔が占領する極寒の大陸があるんだ。魔族が占領する大陸のうち一つがこの大陸に近くて、この大陸はモンスターが発生しやすいんだ。」


と、丁寧に教えてくれた。


「なんで魔族の大陸が近いとモンスターがわきやすいんだ?」


「それはな、魔族からは魔力が漏れ出ていて、それが一点に濃縮されて固まると、魔力が変異してモンスターになるんだ。」


たまにあるファンタジー物語の設定だな。

この仕組みがあると、自然的にモンスターに襲われた人々はモンスターを生み出した魔族を恨むっていうのがセットになってついてくる。


おそらくこの世界も例外ではないんだろう。


「なあ、魔族はこの大陸に攻めてきているのか?」


攻めて来ていたら、魔族も人類を滅ぼす気ありとなるから、自称神の使いの女の人に言われた変えろっていうのは魔族を滅ぼせってことになるのかな?


でも、滅ぼすっていうのと変えるっていうのは別物のような気もするが…

そう考えつつ聞いてみる。


「いや、魔族はこの大陸に攻めてこようとはしていない。その理由はあんまりわかってないが、向こうの魔王がいま弱っているらしい。先代の魔王は攻めて来ていたらしいが、それもかなり昔の話だ。とにかく、この大陸はモンスターの被害以外は特にないな。」


そうなると、俺の目的は当分見えそうにないな。

っていうか、魔王は存在するんだな。


弱っているのなら納得なんだろうが、もし意図的に攻めて来ていないのなら、魔族と人類を繋げってことになるのかな?


「オーケー、教えてくれてありがとう」


とお礼を言っておいて、またしばらく歩く。

しかし、その魔王ってのが敵対しているかどうかが一番重要になりそうだな。


まあ、そんなよくわかんないことを今考えても仕方ない。

さらにしばらくしてからやっと俺の肉眼で馬車が見えるようになってきた。


馬は首元に獣牙人に噛まれたと思われる跡が付いた状態で倒れている。


馬車は倒れずに立っている。

相当位の高い人が乗っているのか、恐ろしく豪華だ。


その馬車の周りには数人の兵士っぽい奴と、九人の雇われたと思われる近接戦闘職系の冒険者らしき奴らが伸びていた。

そして、黒い執事服に身を包んだ老人がたっている。


「アリス、負傷者を回復してやれ」


「うん」


アリスは回復魔法もかけられるので、それでマクノスがアリスに言った。

アリスは冒険者たちのほう駆けていった。


「さて、いったい誰が襲われたのやら」


アリスを除いた俺を含め四人で馬車に近づくと、執事服老人がこちらに気づいて寄ってきた。


「先ほど助けていただいたのはあなた様方ですかな?」


と、腰を曲げつつ言ってきた。


「ああ、そうだが、助けたのはこいつだ。感謝するならこっちにしたほうがいいぞ?」


マクノスが俺の頭に手を置きながら言った。

マクノスの背は俺より頭一つ高いので、違和感はない。


執事服老人は腰を上げ、俺を見る。

少し俺を見定めるように見た後、


「そうですか。では、この度はありがとうございました。感謝しても感謝しきれません。」


と、再び腰を曲げつつ礼を言ってきた。


「申し遅れました。私はクシャルエラ家の執事でスミナ様のお世話役のシャードと申します。」


そう執事服老人が言うと、三人は驚いた顔をした。


「どうしたんだ?」


と問うと、


「クシャルエラってのは今俺らが向かっている王国の王家の名前だ。それに、スミナ様っていうと、王様の王女だ。」


うわっ、めっちゃ位高いじゃん。っていうか最上級?


「で、その王女様がなんでここに?」


王女ともなると箱入りとかが普通なんじゃ…


「前日、クルエラ王国での祝典式に参加しておりまして、国王様と王妃様は先にクシャルエラの街へとお戻りになられています。そして、その後を追って私どもも城へと戻るところだったのですが、その際に獣牙人族の襲撃に襲われたというわけです。私どももLV80の者を雇い、護衛に当てていたのですが、獣牙人族は予想外に強かったため、危なかったところでした。」


ご丁寧にそう教えてくれた。


なるほど。そりゃあいきなりLV90の獣牙人の集団が来るなんて考えないよな。

80でもかなり強いんだろうが、かなわなかったようだ。


そう考えると、物理体制がない敵には俺はレベル関係なく最強なんじゃないだろうか。

やっぱ、握れば庶民でも兵士になれる武器はえげつないな。


「それでは、今回王女のお命を助けていただいたお礼に後日クシャルエラの城へと招待したいと考えておりますが、どうなさいますかな?」


目を少し閉じながら聞いてくる。

そりゃあ城に招待されたら行くしかないだろう。


「私たちはいかないほうがいいわね。」


と、カリナがすっと言った。なぜ?という視線を向けると、


「だって今回活躍したのはあなたじゃない?私たちはあなたと街で別れるんだから、そこまでついて行く必要はないわ。」


と、バッサリ言い切った。


「そうですかな?ならば、この少年だけ招待いたしましょう。」


「ええ。」


シャードさんとカリナがそう会話をして、両方が了承したようだ。


「ちなみに、お名前をお聞きしても?」


「俺は明です。」


という会話も間にあった。


「そんなに考えなくてもいいのに」


「いいのよ。私たちはよくいるただのパーティーで、そんな目立つべき存在じゃないの。」


目立たない平穏な今の生活がいいと。それに変化はいらないと。

回復を終わったアリスが戻ってきて少しマクノスとラグナロクに説明してもらっていたが、その三人はカリナの意見に賛成なようだ。


「では、また後日使いの者を出します。今はすでに王女の身の安全を国王へと伝え、もう一つほど馬車を派遣してもらっていますので、私共は置いて街へとお向かいください。」


と、シャードさんが言って、俺らに街へ行くよう催促してきた。


「じゃあ、私たちはこれで。」


とカリナが言って、自然の道路を進み始めた。

それについて行くように俺たち四人は歩き出す。


後ろではシャードさんが高貴な感じに笑顔で手を振っている。


出会いとは唐突にあるものなんだなと、身に染みて実感した。


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