表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界出張でアフターケアとかなんですか?  作者: 概念ならまだしも実在するわけねーじゃん
5.精霊と神殿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/311

17

次の爽やか風の商人は、転職できなかった。

天命ではなく、自由職として商人をやっているが、限界を感じることもあり天命が欲しかったようだ。

そりゃそうだわな、金を払わずに立ち去ったあのおっさんを見れば、天命職というのがいかに手堅いのかがよく分かる。交渉などしなくとも、天命商人であるというだけで儲けることができるのだろう。不公平感が半端ない。

神さまは何をもってして天命職を定めているのだろうか、さっぱり分からないし分かる気もない。わかってしまったら私がここに来た意味まで判明してしまう。それはマズい。知らなくて良いことはあるのだ、知らん権利だ。


さて、爽やか風は転職できないと知ると、暴れるどころか苦笑一つ残してクレームをつけるでもなく去っていった。

心配そうな表情の若い巫女さんはさておき、神殿である利点を活かして追跡は行っている。神殿である利点ってなんだと自分でツッコミを入れながらも追跡している。応用範囲に限界はあるが、できるかぎり見張っておいた方が良いだろう。

たたき上げの商人が利益無視で善行とかあり得ないでしょ。何か裏がある。一番分かり易いのは罪悪感の扇動。特に若い巫女さんがターゲットなのだとしたら、ほぼ確実になびいてるから、誘拐だろうが嫁取りだろうが成功する確率は高い。

これはお布施とか早まったかなー、と思わないでもないが、そうしなければ、どのみち一番の若手が犠牲になっていたのだ。金ができただけ結果オーライと思おう。


さて、次だ。

巫女さん達は炊き出し用の食材を購入に行こうとするが、待ったをかける。


「なぜです、ここに来るまでに路銀を費やし、餓えている旅行者がいるのです。神殿として、恵みを齎す必要があるかと」


年のいった巫女さんが反論してくる。

わからんでもないが、落ち着け。


「慈悲は必要でしょう。ですが、それでは、受け取ることが当たり前になってしまう。当たり前のことに感謝などしなくなる。すると、全てに傲慢になる。慣れるのが人間です」


「ですが、それでは餓えてしまえと言うのですか」


「仕事を作れば良い、と神の遣い様は仰せです。ここまで来られたのですから、みな何かしらの特技はあるはずだと……天命職なら、今一度その価値を省みてから、転職を考えるのも良いのではないか、と」


そう、何せ人が居るのに遊ばせているのだ。もったいない!

転職に来たいうことは、まず天命職として何かを持っているということ。もしくは、天命を得るために何かをしてきたということ、だろう。

それを利用? いや、雇用して、自分で稼いでかつ消費をして貰う。金は回さなければならない。うまいことに、近辺には商店がある。そして、外からの金が入ってくるのだ。活用しない手があるだろうか。

そもそも神殿の収入源はどこから、と思えば、各商店に場所代を支払って貰っていたようだ。ここに少し上乗せする形で別の料金を徴収すれば良い。川の上流は神殿が抑えているから、水道料金がやりやすいだろう。水は生命に関わるから抑えやすい。

風呂も基本的に無料だが、時間帯を区切って金を取ってしまえば良い。一番風呂や貸切時間を作る、金さえ払えば混浴を黙認したっていい。


収入ができたら、次は雇用だ。

まずは清掃員、これは元の職業がなんであろうと問題ない。全ての職において衛生は外すことのできない項目だからだ。泥に塗れなきゃできない暗殺稼業であってもだ。

次に受付。これは巫女さん達と共同でやって貰うことになるが、転職希望者の整列に問診票作成、カルテ管理をして貰う。そう、イメージは診療所だ。先生が一人で回してるとかざらだからね、あそこ。看護師代わりに巫女さんに働いて欲しいが、まだそこまでは期待できまい。だからまずは、入り口を絞る。

そして、警備員の配置。内定している一人を隊長に据えておけば勝手にまとめてくれるだろう。


これを、ほぼ一日で形にしなきゃいけない。

プロジェクト立ち上げから実行までの期間が短い? やらなきゃ潰れるだけだ。無茶なんだけど、しなきゃいけないのです。いや実際無理だと思うけど。

組織だったらできないだろう。でも、ここはある意味神官さんがワンマンでやっている。っていうか神さまがトップだから、その下の人間が困ってて、神官さんが代表代理として働いてる。その点だけは動かしやすくて良い。法律なんてもんが設定されているかはしらないが、冒険者やら魔物やらが跋扈する辺境地帯に都会のルールもへったくれもないだろう。現実でも寺は課税されないし。

しかしこれ、何をどうやっても神さまが一番悪いのでは?

まあ、そこら辺の追求はあとでいいか。まずは目の前の問題を片付けるべし!


ということで、することを神官さんに説明し、方針を全体に共有させ、できるところからやっていく。

まずは広場の入り口に受付を設置。おそらく、炊き出しがなくなったことで誰かが文句を言いに来るはずだから、その対応用だ。ついでに、明日からの生活については後日説明になると伝えてもらう。

混乱必至なので、衛兵内定者を傍につけておく。

ここは巫女さんにお任せして、神官さんは広場で緊急時の対応ができるよう待機、する間に細々した事を決めていく。

雇うにしても賃金はいくらになるか、支払い方法はどうなるか、仕事をしていたと証明するものは何にするか、そういった事だ。額面や方法はすぐ決まったが、証明方法が難しい。

ということで、中間管理職を選定することにした。ある一定期間の雇用で優先的に転職の面倒をみるとすれば、なりたい人も出てくるだろう。

癒着したりずるをするんじゃないか、という懸念もあったが、そういうときのための神殿です。つまり私です。私が監視していれば良い。証明も私がすれば良い、と思うかもしれないが、二重チェックに意味がある。

それに、目があるとないのでは働きに差が出るのは当然だ。相互監視態勢は能率を上げるための一つの手法である。


とはいえ私も全て見れるわけじゃないので、ラウンダー要員の意味も含めて衛兵巡回をすることにした。そこまで抱き込む為の金があるならお布施を払った方が早いでしょ、計算できる悪知恵があるならすぐ気付くはずだ。

ということで、おおまかな所は決定。細かな不具合は都度調整していくしかない。ここら辺は神殿としてきばるしかないかな。運用開始直後にクレームが出るのは当たり前だろう。暗躍する人も出るかもしれない。そこら辺の動きの偵察は、ことこの建物内においては私以上の適任者はいない。

立ち上げがスムーズにいったら、後は放置でいいだろう。


神官さんの手が空けば、次の施策に移れる。

つまり誰でもできる仕組み作りさえできてしまえば、構築者は別の仕事に移る事ができる。

天命職なんてものがあるように、人には向き不向きというものが少なからず存在する。物事を作り出す、生み出すなんてものは特に、才能や閃きといった特殊な才能や環境が必要だ。そして、そういった人達が必ずしもその後の発展に寄与するとは限らない。

常に新しい事に挑戦する方が性に向く人もいるわけだ。そして、それを引き継いで行く方がやりやすい人もいる。

そういう状況を人工的に作っちまおうって事ですね。神官さんが生み出せる人かは知らね。


ということで、そろそろ受付辺りに人が集まりだしている。

個人なら問題なくとも、民衆であれ群になると厄介だ。統率が取れていない分、興奮すると何をしでかすか分からない。

衛兵内定者がんばれ。


え? 私は風呂場の方で忙しいから。うん。別に美女が集団で入浴してるわけじゃないよ。美女いるけども。

爽やか風だ。隣に来た人と世間話をしているようだが、内容がおっかなかった。

さすがに転職はできなかったが、一人引っかけたから元手は取れそうだ、と。好き者オヤジに売れるだろうって笑ってるよ。さっきの今でこれは不用心でしょ。やり手かと思ったがそうでもないな。


別に今の話を神官さんに伝えることはしないけども。

さてはて、これはどうしたもんかなぁ。それっぽいとは思ってたけどビンゴするとは思わないじゃん?

んーむ、まあしばらく放置で。なるようになるだろう。


いつもお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ