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異世界出張でアフターケアとかなんですか?  作者: 概念ならまだしも実在するわけねーじゃん
1.研修室
3/311

「それで、ご質問でしたっけ?」


「その前にお名前をお伺いしても?」


質問はある。というかその前に名前でしょう。

名乗っていただきたい。


「これは失礼。私は女神。神代女神と申します」


頭大丈夫かと思ったけど、女神というのは名前であるらしい。決して形体のことを言っているわけではないようだ。

これだけ雄々しくて本当に女性だったら私史上でも五本の指に入るくらいの珍事だ。他の指のことは聞かないでほしい。


「それで神代さん、質問しても?」


「構いませんよ。そのために呼んだのでしょう?」


そりゃそうですけど。

結構スムーズにきてるから、なんつーか本当にこいつ答えてくれるのかって心配で……。

それはともかく。


「どうやったら帰れます?」


「お帰りになりたいのですか。アルバートに言ってくださればいつでも」


できるのかよ。

アルバートさん一言もそんなこと言ってなかったぞ。


「何もなさずに帰郷したとなれば貴女の所属する団体は解散するでしょうけれど、それでよければ」


「よくないですね」


所属団体が何かと考えれば、営業という名目で来ているから、おそらく就職先が当てはまるんだろう。

解散ってことは倒産だ。

就職したと思ったら失業とかやめてください。どこのブラック漫画だ。


「では、まずは成果を上げてください。なに、難しい事ではありません」


そんなこと言って異世界ですよ。

こっちの常識が通じるわけないのに難しくないとか意味わからんわ。


「神々は暇を持て余している……つまりはそういうことです」


「いや、わかりませんけど……わかりました」


ここでグダグダ言っても仕方ないか。

人質を取られているようなもんなんだし、やるしかない。


「それで、どこへ向かばいいのでしょうか」


まずは行き先。

それに当然、文化や地域性。その場所で不審者にされないためにも事前知識は必要だ。


「世界名は『オムニー』、創造神名は『ディウ』、初心者にわかりやすい世界です」


入門用の出張先を用意してくれたらしい、どうもありがとう。

わかりやすいってことは文化水準が同じなんだろうか。


「人気なんでしたよね。魔法のある世界」


ああ、そういう……。

入門用というかラノベスキーだったらテンション上がる系かな。


「使用言語は公用語としてリングア語があります。各国で言語は違いますが、問題にはならないでしょう」


「言語知識もらえるんですか?」


「何言ってるんですか? そんなわけないでしょう」


おいマジか。

言葉が通じないのは一番困るんだけど。


「海外に行かれる場合はその土地の言葉を覚えるのが普通なのでしょう?」


どこの世界の普通かはわからないが和藤許さない。

お前準拠にしやがって許さない。

辞書も先人もおらんやろうが、どうしろというんだ。ボディランゲージ通じたらいいけど、まずもって公用語を知らない時点で怪しさ爆発だ。


「えっと、じゃあ、何か特別な能力や魔法を……」


「何言ってるんですか? 支給品はありますよ?」


ですよね。

それがあるんですもんね。

ちくしょうが!


「それ以外に質問事項はありませんか?」


「え、えっと、えっと、この格好で行くのでしょうか」


魔法の世界に化繊があるのかは知らないが、早々に浮きたくない。

というか、世界はわかったけどその中のどの国に行くんだ。ああ、世界情勢がわからない! 国の名前もわからない!

これ本当に質問事項三つまでってどうしたらよかったんだ。


「まあ、落ち着いてください。時間はありますから」


それだけはありがたいわ。


「ところで、全裸で向かいたいのですか?」


「嫌です」


真面目な顔で何を言うんだこの人。






それからしばし。必要と思われる情報を聞き出していく。

オムニーでは人間と魔族が対立していて、今まさに勇者が生まれたところ。んで、魔王軍は総力を挙げてその赤子勇者を手に入れようとしているとか。赤ん坊ならやれるだろうってことだね。成長が怖いんだね。っていうか勇者が成長したらやられんのね魔王。

んで、実は人間たちも赤子勇者がどこで生まれ落ちたかは知らなくて血眼になって探しているらしい。

もちろん、その子が転生者。つーか生まれたそばから死と隣り合わせってディウさんどういうセンスしてんすか。


ということで、今回の役目はその赤子を人間たちに確保させること。最も良いのは賢者と呼ばれる人間に渡すことで、次点が人間の王族に渡すこと。できなければ、保護できるだけの能力のある人間に渡すこと。

少なくとも魔族の手に落ちたらミッション失敗てことだ。

最終目的が分かりやすいのは良い。そこに向かって何をすればいいかだけ考えれば良いんだから。


「これくらいでいいでしょうか」


「まあ、はい」


必要最低限のことは聞いたつもりだ。

事前準備って意味ならもっと必要なんだろうけど、道具もなければ知識もない。

後は経験して覚えていくしかないだろう。


「それでは向かってください。アルバートに三つ目の質問をしたら転移します」


ああ、やっぱり質問が異世界に行くための鍵なのね。

消費しきらなくてよかった。


しかし、三つ目の質問か……。


「アルバートさん、彼氏いる?」


「いますよ」


「え!? い……」


驚きと同時に襲ってきた睡魔にあらがえず、セリフの続きは闇に飲み込まれていった。




***

20180605

矛盾点があったので修正しました。

初期設定って忘れるものなんで!


20180818

矛盾点があったので修正しました。

ほ、ほら、忘れるものなんでっ……!

すみません……。


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