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異世界出張でアフターケアとかなんですか?  作者: 概念ならまだしも実在するわけねーじゃん
8.ゆるキャラと人工知能と地雷

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18

駅改札口が見えるところまでやってきて、賑わう構内に閉口する。いや元から喋れんけど、そういう事じゃなく。

人が動いている。ただ誰も改札を抜けてこない。手前までは来るのだが、そのまま踵を返して列の最後尾へと並び直している。何回も、何人も、ただただ繰り返している。

少し向こうの柱のあたりではサラリーマンが電話をしているが、通話して、切って、通話して、切って、を繰り返している。

これが、ゾンビみたいな外見だったらまだリピート機能だろうなって思うんだけど、見た目は普通にそこらにいる人なのね。貴方の隣にいる人がいきなり同じ動作しかしなくなったらどう思う。改札口で思い出したかのように引き返す人はいるかもしれないけど、列をなしてまで並び直す光景なんて見たことないぞ。田舎暮らしだとか車生活とかそういう事ではなく。


「見た目が普通だからキモいわね、アレ」


「狂気や」


「死体とわかっていても気分は良くありませんね」


いや、だから、死体が動くって常識なの?

私の知識の中では死体は動かな、動かしていたのは私だ。私が動かしていない死体が動くなんて知らないぞ。


「どうします、彼らと違う動きをしたら注目されてしまいます」


「……駅員だ。駅員のふりをするのはどうだ」


「全員は無理ですが……そうですね、清掃員や売店やコンビニの補充の業者は出入りしますね」


「堂々と関係者を気取れば良いのね」


「無理やろな。なあ、ななみちゃん、死体ってどれくらいの判断ができるん?」


当然の如くななみちゃんなら知っているだろうと視線が集まる。

この子、私と同じく現代の常識完備してるけど、そういえば未来実況できるんだった。その中に該当する知識があったのだろう、しかめ面をしながら口を開く。


「行動に割り込みかけない限りは動作の反復しかしないはず。ただ、深度が上がるとパターンが増えるし、ランダム要素を持つようになるから油断は禁物」


なるほど、つまり彼らはネットに繋がっている状態で、常にパッチが当たるって訳か。

最新情報がダウンロードされるから時間勝負なのね。

とはいえこちらも必要なものを拾いに来ただけだし、タイムオーバーする事もないだろう。そのラインがどこに設定されているかはわからないけれど。

スネークタイム到来です。一生来てくれなくてもよかった。


「改札はどこもこんな風景だと思う。あそこらへんに業者用のゲートがあるから、そこから入れば良い」


「そうだな、行けるか?」


「はい、問題ありません」


「おっけ」


「大丈夫、です」


私は右手をあげた。

一人だけ質問があるみたいでなんか恥ずかしい。


そのまま、業者通路から構内へ。

行き交う人達は自分の動作を正しく履行することにのみ集中しているようで、彼らにぶつからないように慎重に、しかし素早く移動する。

こういうとき図体のデカい着ぐるみって不便だ。すれ違うときに体が触れそうになり、その度に大袈裟に避けている。幸いにして疲れ知らずであるが、なんかこう、恥ずかしい……!

そんな羞恥プレイに耐えながら、地下へと向かう階段前まで。そこでは昇降運動を継続する年寄りとサラリーマン、オシャレな若い女の子。下からスマホを構えた男もいる。お前……死んでまでパンチラ狙ってんのかよ……業が深い。


っつーかそもそも、なんでこの人達は死んでいるんだろうか。

生命石から染み出たエネルギーに影響されたとしたら、今ここにいる私達にも影響がありそうなんだけど。ほら、毒ガスって自然消滅ってしないんだよね? あれ、違ったっけ。

うーん、この先に進むのは危険な気がするが、誰もおかしな様子を見せていないし、時間経過で平気になったのかな。マナ濃度が高いと人が住めないんやでって異世界小説あるし、ちょっと気になるけど……何度でも言うが、伝える術はない。


しかし遠目に見ても階段付近に生命石は落ちていないな。ホームまで行かなきゃダメか。

うーん、ますます危険が危ないような……と思っている間にもすいすいと人の波を避けて進んでいく女子高生達。篠山さんもポコタンも怯むことなく進んでいく。

君達……胆力がありすぎる……もうちょっとビビりが居ても良いと思うんだが……!

そんな面々ばかりなので、仕方なくついていく。弾幕薄めなので、私でもなんとかなった。


降り立ったホームには、お目当てのものが散らばっていた。

近くにある一つを持ち上げ、口から摂取するのはなんかいやなので、開いた手の方から中へと押し込んでみる。

うむ、なんだか元気になった。おっさんのあえて触れずにいる部分も僅かながら若さを取り戻したような気がする。気だけだと思う、見れないし。


「よし、じゃあ近くの生命石を拾って、ナカノに押し込んで」


「はいっ、いっぱい入れます」


「嫌や言うても奥まで入れたるわ」


「思いっきりナカに入れてあげる」


「たくさん注ぎますから覚悟してくださいねっ……!」


ここぞとばかりに未成年女子が微妙なセクハラ発言してくるんですがありがとうございます。

脳内にふたなりが過った事は表に出さないので勘弁してください。許して。

そのあとはあちこちウロウロして、幼女、女子高生、おっさん、女子大生から心行くまで突っ込まれた。

つーか容量どんだけあるんだよってくらいにするすると入っていった。ちょっと怖いんですけども……私の体は一体どうなっているというのか。


「そろそろ引き上げた方がいいかも」


「うん……なんか、人が増えたよね?」


うん?

言われて周囲を見回せば、なるほど、ベンチに座っている人の数が増えている。階段もさっきより通行人が多そうだ。

あれ……私あの隙間抜けられる……?


「ぎりぎり、かも。拾うのに夢中になってた」


「こっちもだ。急いで戻るぞ」


指示を出し、先頭で突っ込んでいくポコタン。

向こうからやってくるリーマンと十分に距離を取り、横を抜けようとしたとき、それは起こった。

そいつの後ろから子供が走り出てきたのだ。ポコタンは避けようと身を捩ったが、更に不可解な動きをした子供が体当たりをしてきて、後ろに倒れ込む。いやお前……確実に当たりに来ただろ!

そして急に泣き出す子供。ゾンビ達の視線がゆっくりと集まってくる。嘘だろ。泣きたいのはこっちだ。

彼らは子供を庇うように急速に近付いてきた。


「鉾田さん、逃げよう!」


「アカン、完全に包囲されとる」


「嘘でしょ!? 上から人が走ってくるんだけど!」


数の暴力!

妹枠は単体で脅威だったけど、こちらは個々の戦力は低いといえ物量が違う。階段を見れば、改札口で行儀良く並んでいた一団だろう人々がこちらへと押し寄せてくるところだった。幸いにして逆方向には人の姿が少ない。そちら側はイナコちゃんにフォローしてもらうとして、そのまま構えたポコタンの隣に躍り出る。

タンク役はお任せください。


「ナカノは下がって、破壊されたら元も子もない」


そして幼女に注意され引き下がった。

役立たずぅ……!


「逃げるしかない……線路に降りる!」


「平気なん!? 列車!」


「わかんないけど改札側に逃げ道はない!」


しゃあなし!

今度こそ先陣を切って線路へと近付く。作業員通路もあるはずなので、そこを使えば脱出は可能なはずだ。

線路へと飛び降り……ようとして、慌ててブレーキをかける。背中にぶつかった幼女に押し出されそうになるが堪える。


「な……音?! もしかして、動いてるの!?」


っぽい。

不可思議な人達が多いし石が飛び散ってたから、電車さんがいるとしても大人しくしているもんだと……しかし現役で現在も地下をうろついているらしい。

っつか近付いてきている。


「逃げ場なし……どうしよ……」


雪崩れてくる人を、ポコタンが押さえ込み、ヒトミちゃんが阻み、イナコちゃんとヨーコちゃんが牽制する。

だが次々と押し寄せる津波のような進行を押し返せるほどではなく、徐々に押し出されていく。このままでは人身事故まっしぐらだ。被害者は自分達で。

ホームの下に空間があるはずだが、着ぐるみ化した地下鉄が下腹部にブレードを生やさないとは断言はできない。なんでか敵性静物って殺意高いんだもん。近付いたら殺られると思っておかないと。


「ナカノさん……!」


不安そうな顔のセイコちゃんとななみちゃんが見上げてくる。

彼らの狙いはなにか。生命か。ゾンビが人を襲うのは、命があるからとかいう通説がまかり通っていたはずだ。

彼らも同じとは限らない。ないんだが……可能性としてあるのであれば、一回くらいは試しても良いのでは?


「ナカノ……さん……?」


「ナカノ!」


線路沿いに移動すれば、人の波は私についてきた。

私が親ガモよ。どうやら生命力の強い個体に惹かれるようだ。つまり私は綺麗に光る蛍とも言える。モテ期到来やったね。はーつっら。ガチでツラい。

体内に取り込んだ石の影響なんだろうな、とは思うけども。一定量を超過するまで反応しないようになっているのだろうか。


「おいまて、ナカノ!」


群れが追い立ててくる。全部を引き連れてこれなかったが、向こうは半分以下になっているだろうから盛り返せるだろう。

まず第一は彼らの安全を確保すべきだ。確かにこちらの危険度はうなぎ登りであるが、そもそも痛覚もないし、万が一があっても特に問題はない。

大量の石の運び出しを考えると私がいた方が楽にはなるが、それだけだ。いないからとできないわけじゃない。

よってこの場の囮は私が適任。

ホームの端にたどり着こうかというあたりで地下鉄のライトが見えた。

私は振り向くと、押し寄せる人々を片っ端から線路へ投げ入れていく。投げ技はね、得意なんです。

踏ん張っても良いことはないのでずるずると後退りながら、少しずつ線路沿いから離れていく。私の背が壁にくっつこうかというほど追い込まれた瞬間、なにか鈍い音がして、次に金属片が頭の真横に突き刺さった。

なににぶつかったのか知らんが大破したようだ。

え、なんで?

いつもグダグダと20ちょい過ぎくらいまで文字数少なくしながら書いてますが次あたりで終わあ゛あ゛あ゛あ゛イケオジあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

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