1
※この章は今までよりセクハラ発言が多くなる予定です。
当社比で下ネタ割合が高くなっておりますためご承知おきください。
ギャグと思えない場合は引き返してください。
翌日、出勤してきたら図書館にいた。
うん。
「朝一は、やめてほしかった」
「おや、ノナちゃん。おはよう」
「呼んだ覚えはないんだが」
いや、連れ込まれました。
イリュージョニストも真っ青な手口でした。
「呼ん……神代くん、もしかしてノナちゃんの担当になったのかい?」
「そうだな、そのような指示が届いた」
「そうか……」
哀れみの目をやめていただきたい。
私だって望んでそうなったわけじゃないんだぞぅ!
「ああ、じゃあちょうどいいから、今の案件をノナちゃんに回したらどうだい」
「これを彼女に?」
「ああ。色んな仕事を早い内から覚えてもらった方が、後々やりやすくなるよ」
「……そういうものか」
え、なに、和藤さんがやろうとしてた仕事が回ってくるの? 無理では?
経験値がさ、全然違うでしょう。勉強のためとか言われても、ちょっといきなりレベル高いんですよね。ハイキングでひーこら言ってるのにエベレスト登頂を言い渡された気分なんですけど。
「元々は紺今くんの仕事だったやつだよ。彼もねぇ、イイ線いってたんだけど……」
「自身を見失った時点でさほどの適性などなかっただろ」
「そうだねぇ。僕やノナちゃんくらいに薄情じゃないと長く続けられないしね……」
おい今さらっとディスったでしょ。
反論はできないけどさぁ!
でもやっぱそれが判断基準というか、和藤さんが才能って呼んでるやつだよね。他人へ思い入れないっていうかさ……人間関係の構築が上手くないというか希薄というか……。
和藤さんは戦後で何かあって意図的に他人に壁を作ったんだろうし、細野さんはアルバートさん以外どうでも良さそうだし、紺今さんは人懐こいけど仲良くなろうとはしてなかったし、勅使河原さんは嫁と子供の幻影にかまけてるし。
背景はなんであれ、三ヶ月も連絡が取れないところにほいほい出張に行く時点で薄情以外のなにものでもないわな。だから勅使河原さんやべーんだって。
「それはともかくだ。野仲根、やってみるか」
やるも何も案件知らねぇ。
和藤さんの隣の空席に断りを入れてから座り、神代女神と視線を合わせる。
「どういったものか伺っても良いでしょうか」
「ふむ。紺今がよく請け負っていたのが、いわゆるテストプレイといった部類のものだ」
テスター?
「管理方の仕事だね。実地で体験して、改善案を出すんだよ」
へー、紺今さんってそんなことしてたんだ。
できるのか? あれで……。
「クライアントはダンジョンへの転生を検討しているらしい。実際に運営して難易度調整したいようだ」
「なるほど、ダンジョンマスターですか」
難易度調整って明らかに転生者で遊ぶ気満々じゃんね。
先にそういう事ができるんだったら世界の危機とか関係ないし。ルール無用って事でしょ。
よし、気合いを入れて仕事しよう。弄ばれる選ばれし民には申し訳ないけど、こっちも仕事だからガンガンいくわ。
「どうする」
「何事も経験ですし、やってみます」
「そうか。ではダンジョンだが、ポイントにより各種物品の購入が可能だ。ポイント取得方法は後で確認しておけ。ダンジョンには核があり、これとダンジョンマスターをあわせることでダンジョン生成が始まる」
真面目に説明し始める神代女神。
なんつーか意外とアルバートさんより説明が多い。これは助かる。正直何を質問したら良いかわかんなかったし、結局なにもわかんないまま行ってなんとかなったし。あれ、別に話を聞かなくても良いのでは?
「今回はテストプレイのため途中で自動的に切り上げとなる。こちらが指定する期間内にダンジョンが滅んだ場合は失敗だ」
「それはおかしくないですか?」
「なぜだ」
「難易度調整と言うことは、ダンジョンが破綻した場合はハードモードだったということです。それを基準に構築すれば良い訳でしょう? 指標の一つを作るのに、失敗と言い切るのはどうなのでしょうか」
「一理ある。だが、残りの契約期間は反故になるのだから、失敗だ」
やだ。
えー? いやいや失敗じゃないって!
「では、契約期間内であれば再度別の展開方法でダンジョン構築を行うのはいかがでしょうか」
「……ふむ、一考の余地はあるか。交渉しておこう」
よし、最低ラインの引き下げに成功だ。
いやまだ交渉途中だわ。頑張って神代さん。
「しかしその場合は報酬が減るだろうな。コストが掛かる」
あ、そうなんですか。
でもこの時点で却下されないならまだ希望はあるよね。まあ、何事もなく契約満了させれば良いんだし、細々とやっていこう。
「それで、契約期間はいかほどでしょうか」
「三年」
長い。結構な長さだ。でもダンジョン作成で三年? クリエイト系としては短い方かもしれない。
うーん、ダンジョン年齢三歳児って事は幼女ダンジョン……何言ってるんだ私。
「なお、私が担当となってから初の任務だからな……向こうについて三十分ならコンタクトを取れるようにしておこう」
お! 初回特典だラッキー!
ヘルプ機能付きとか悪くない。
「え? 難易度調整するならそれはまずいんじゃないかなぁ? 次回以降にしてあげなよ」
「ああ、それもそうだな。今回はなしだ」
わ、和藤うぅぅぅ!
いやファインプレーなのか? リスクレベル低くしたし、なんとかなりそうな今回よりも先行き不透明な次回以降に特典持ち越しができた方が良いのか?
チラリと和藤さんを見れば、ウインクを飛ばしてきた。年代を感じる。
「ではいいな」
「あっ、質問はないんですか? えっと、アルバートさんだと三つの質問が……」
「あるのか?」
「ええと……細野さんとアルバートさんの結婚式はいつでしょうか」
そう問えば、和藤さんが吹き出し、神代さんは白目になった。そのまま睨まれる。
「ノナちゃんそれ最高!」
「仕事に関係ない質問は答えていない。まあ、気になるから調べておく。ついでにお前にも教えてやろう」
「だって。安心して行っておいで」
女神様のツンデレ貰ったぞわぁい。ぽいっ。
取得したいらない荷物も捨てたし、そろそろ行きますか。
「はい、いってきます」
「気を付けるように」
神代さんの予想以上に優しい声に見送られ、私はそのまま意識を失った。
ぼんやりと何かが視界に映っている。
全体的に薄暗いが、どこかからもれてくる光があるのか全く見えない程ではない。
周囲を見渡すが、どうやら出口はないようだ。
そりゃそうか、ダンジョンだもんな。ここがマスタールームって事だろう。
「う……ん?」
そして目の前に一人の男。
年の頃は私と同じくらいだろうか、体付きはがっしりとしているが、童顔だからか威圧感があまりない。そして全裸。多分これ私も全裸。そんな男と目が合う。
お互いに気が付いて、目が合って硬直。
どうしよう気まずい……と思っていたら、男の手伸びてきた。私に触れる。
「これ……ダンジョンコアか?」
知ってた!
神代がダンジョンに行くって言ったときから予想はしてた!
ダンジョンマスターがいいなって暗に匂わせたけどダメだった!
ちっくしょう!
ともかく、ダンジョンの核とマスターが会ったわけだ。
開けてくる視界、徐々にわかってくる相手の様子。
どこか幼さの残る容姿は少し不安であるが、マスター登録されてしまったのだから仕方ない、彼を知り、支え、ダンジョンを繁栄させなければ。
『お名前をどうぞ』
「え、俺? 俺は……名前、なんだ?」
『ナンダ様ですね、登録完了しました。これからよろしくお願いします、ナンダマスター……いや、相棒!』
さーて、機能把握するぞー!




