表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界出張でアフターケアとかなんですか?  作者: 概念ならまだしも実在するわけねーじゃん
2.人造人間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/311

15

おっさんの治療も終えて、主要メンバーが集まっての会議、私とおっさんは場違いだったけど、ロバートさんが何も言わないから他のメンツも黙認してくれた。

そんで肝心の作戦だけども、内容は至ってシンプル。

屋敷を焼き飛ばすことになった。

中にあるもの? 一緒に焼却処分ですよ。証拠隠滅ってことらしい。


あまりの力技だったんですごいびっくりしたけど、確実だといわれたらぐうの音も出なかった。下手に突入したらまた被害者が増えるだけだもんな。

それに元々は侯爵の別荘ってことだけど、設計図面は入手済みだった。まあ、そこから手を加えていたらわからんけど。地下室を作っていないことを祈るしかない。


「では、各自準備に移ってくれ」


会議に参加した者の大半は可燃物の収集役だ。

火魔法が得意な人は魔法の援護もする。そっちを主導するのは当然ながらマスリオ氏。魔法の腕は全一ってんだから人は見かけによらないわ。と思ったけど賢者とか呼ばれてるんだった。

ちなみ私は炊事当番です。


散開した人達を見て、私も移動しようと立ち上がったら呼び止められた。ロバート青年がサシで話しがしたいらしい。

ここのリーダー任されてて暇がないはずなのに。よっぽどの話か。

人払いが済んだ後、彼が口を開いた。


「お前に話しておきたいことがある」


「はぁ……?」


「まあ、逃げられちゃ敵わんからな。この任務が終わるまでは大人しくしていて貰うためだ」


「別に、逃げたりしませんよ」


「そうか。だが、貴様はこの国の人間ではない。布石は打つに超したことないだろう」


ということをこの人が口に出す辺り、脅迫も兼ねているって事だろう。めっちゃ睨んできて怖いし。

信頼して、っていうことじゃない。そこまで時間を共にしていないのに丸投げするとか無責任としか言い様がないわ。


「なに、お前のことは奥様も目をかけているんだ。悪いようにはならないさ」


「え?」


口から出任せで懐柔しようってか?

あの態度で評価を貰えているとは到底思えないんだけど。


「奥様はこの国の行く末を案じておられる。そのため、身を削ってでも忠義を尽くしているのさ。……それはさておき、まずは自身の仕事に傾注して貰いたい。マスリオがお前の作る食事を気に入っている」


「餌付けって事ですか……」


「言い方を変えればな。あいつがここに来ることに同意したのは、お前がいたからだ」


いつの間にか胃袋握ってました。

でも、何らかのメリットがなければあのマスリオ氏がここに戻ってくることは無かっただろう。怖くて逃げ出したくらいだからさ。


「この作戦にはマスリオ様が必須って事ですね」


「そうだ。そもそも、なんでマスリオはここに住んでいたと思う? 封印の方法は聞いたが、お前達が昨晩見た行動といい、実際の効果は無かったと考えられる。それなのに屋敷から出て行かなかった理由はなんだ?」


そう言われればそうだ。

封印も無しにずっと居続けた理由。毒蛇婦人からの定期的な差し入れ。賢者に対する婦人の態度。


「奥様は、ここに居る化け物と何らかの約束を交わしていたんじゃないか」


「マスリオさんが近くにいることで封印の代わりになっていたのではないかと思います」


うん、その方が自然だ。


「ディナさんとガラリア様は知り合いだったわけでしょう?」


あ、その名前を呟いたのも演技なのかな?

わざわざ、知り合いであることを明かす理由は無い。

それでロバート青年は私が婦人に目をかけられていると思ったわけか。

あれ、じゃあこうなることは分かっていたって事なのか? 私を馬車に受け入れた時点で、この討伐騒ぎが起きることを考えていたんじゃないのか?

いやまさか、これはさすがに偶然でしょ。そこまで上手くいく方がおかしい。


「直接聞いたわけじゃないから真相は不明だが、恐らくはそうだろう。マスリオが近くにいれば、それだけで封印と同じ効果が得られるはずだ」


「ディナさんにとってマスリオ様が大切な存在であり、ガラリア様はその事を知っていた、ということですね」


「ああ」


十中八九間違いなしだな。

あれ? でもそれだったら。


「マスリオ様をここに住まわせておけば問題解決では?」


「一時的な措置でしかない。言ったろう、どうにかしなければと思っていたと」


ああ、そっか。今までそうやって凌いできたんだもんね。

マスリオさんが亡くなったら効かない手立てだし、もちろんガラリアさんが死んでも同じ。たった一人で立ち向かうには凶暴すぎる相手だ。

それに対して綱渡りだろうと対抗してきたんだから毒蛇婦人やっぱ怖いわ。


「すべきことはわかったか、ルノ」


「はい。とにかくマスリオ様に美味しいものを食べさせるって事ですね」


「そうだ。それから、無事に帰ること。料理長がぼやいていたぞ、お前の料理を食いたいヤツが多くて、一人じゃどうしようもないってな」


おおう、熱いラブコールだこと。

なんだかな、迎え入れてくれる場所があるって、嬉しいものだね。この世界じゃ家族もいないからさ。根無し草だし。


「承りました。ボルトのおっさんにも美味しいものを食べて貰いたいですし、腕を振るいます」


「俺も楽しみにしている。早速取りかかってくれ、必要以上の時間をかけていい」


特別待遇ですな。

作戦決行まであと二日か、それまでは料理に没頭しますかね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ