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異世界出張でアフターケアとかなんですか?  作者: 概念ならまだしも実在するわけねーじゃん
6.ロリショタ

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実際、他国から流れてきたアラフォーが地方をまとめ上げるなり現地のお偉いさんを脅して乗っ取るなりしても、他領の話であれば私には関係ない。

おっさんの保護者という前世の業に塗れたような称号さえ持っていなかったら。

そうだよ、庇護してんだよ、何してんだよ私。いや、何してんだよ徘徊将軍! そんな自由を謳歌して良いなんていってないぞ!


パーティーで壁の花ならぬドアラのように壁そのものになっていた私も動かざるをえなかった。っつーかね、情報は鮮度が命だから。我等が誇るシノビネットワークの情報伝達速度は国の密偵が齎すより早いと自負している。つまり、ディナトロが立ったのは一王子期間内だ。

その程度の時間では、進軍だってままなるまい。事前準備をしていたとて、歩兵に合わせていたらここまで到着する前に禁軍に打ち破られるのは必定だ。それに関所もある。各門で戦闘が発生するのであれば、時間稼ぎにはなるだろう。

そうじゃないや、はやいとこディナトロ将軍の関与を隠蔽しなくては。というか、戦闘までいったら巡り巡って私が処刑される気がするので、内々におっさんを引き下がらせないといけない。

誰の耳にも入っていない情報を補足できたのは僥倖、もとい日頃の備えのお陰だ。日頃の行いでは幸薄いからね、もっと実直な現実手段に頼った成果だね。パッシブスキル存在主張してお願い。


さて、そんなこんなで馬上ならぬパカ上の人となった私は一路西領へと向かっている。

パーティー? チェンに丸投げしてきた。スーちゃんと一緒になんとかしてください。私いなくても良かったしぃ、もう知らない。拗ねてないです。主催者に挨拶とか誰もしないんだもんね、本当、イケメンじゃないけどお金なら持ってるんだけどなぁ!

などと考えていてふと思い付いた。なんで私は男どもと競っているんだ? 立場上は男だけど実際は女なんだから気にする必要ない部分なのでは。誰かに嫁に来られても困るし。一体何を張り合っていたんだ、寂しいだけで問題はないじゃないか。寂しいところが問題なんだわ、ぐすん。


あと、ミンツィエに関しては引き続きの監視を指示している。

だってあれだけのことをしたのに、簡単に手を組むってあり得ないでしょ。いいとこ取りしたあとは始末にかかってきそうなので、もうちょっとだけ不自由な目にあっていてもらいたい。下手に動かれると迷惑だ。

それとディナトロどうしようかね。今回の蜂起が何を目的にしているかによるけれど、西領を巻き込んだっていうのがちょっとわからん。西領伯も腐っても四方伯、爺さんほどではないにしろ、能力の上ではそこまで劣るわけではないだろうに、部下も二人しかいない外人に負けるとかあるか?

手を組むにしても、三人ぽっち増えたところでなんになるというのか。確かに体力自慢の供はいるが、それだって二兄よりは劣る。魔法にしたってそこまで発達に差があるわけでもなし、魔物の討伐にしたってうちの忍者連中の成果とそうそう変わらない。

これはどっちなんだろう、やられたか、手を組んだか。いやでも首謀者がディナトロとか言ってたから軍門に降ったと考えるのが普通か。


うーんと唸っていたら、アルパカがビタッと止まった。

慣性にのっとり、私はそのまま前方へと吹っ飛ぶ。

えええ!? 何してんのパカ野郎! お前の主人がお前のせいでピンチだよ!!

進んでいた街道は見晴らしも良く前方に障害物も人もいなかったことは覚えている。だが、私は地面に叩きつけられることはなく、速度など出ていなかったかのように誰かにふんわりと抱きかかえられた。これはロン……かと思ったら、鍋少年だった。不可抗力のお姫様抱っこだ。


「シンくんだぁ、だいじょうぶ?」


「……おかげで助かりました。あなたはなぜここに」


「君を待ってたんだぁ、ご主人様が来るだろうって言ってたから」


さようですか、エスコート役ですか。

見通されてるっていうのが怖いよね、軍団を連れてくる訳でもないと思っていたようだし、交渉したいことでもあるのだろうか。

こんな大事にしなくても、お願いされたらある程度は応じるのに。藜の美女でもほしいのかな、メイメイ様はあげないけど。


「じゃ、いこっか。そこの魔物もついてきてね」


いうなり、俵様抱っこに体勢を変更すると、こちらの返事など待たずに全速力で駆け出す少年。

知ってる? こいつロンより早いんだよね。特盛り状態でも多分ロンより早いよね。一応、基礎能力ではロンがうちの中で一番といっても過言じゃないんだけども。上には上がいるっていうか、魔力を全て身体強化に回しているんだろうか。ここら辺の知識は忍者部隊にも伝えているけど成功例は少ない。ほわんとした説明でも解体新書的な説明でも駄目だった。医療知識のなさが悔やまれる。人体模型の話から学校の怪談へ脱線した記憶もあるが、それが原因ではあるまい。

妖術は身体技術強化とは相容れないのかなぁと推察している。だってどっちかっていったらあいつらが使ってるの時空魔術だもの、老化を早めてどうする。


そんな益体のないことをつらつらと考えつつ、自然と背後へと視線を向ける。アルパカが必死の形相で食らいついてくるが、段々と引き離されている。

こいつはとんだバケモノだ……と、違和感に気が付いた。車酔いしてないぞ!?

いつもなら既に失神を決め込んでいておかしくない。ならば、なんだろう。パカ助といい鍋少年といい、なにが私の気絶を阻んでいるのだろう。いや喜ばしいことではあるんだが急速に流れていく景色が怖いというかね、ヘルメットなしでバイクに乗って高速疾走している気分なのね。風を感じると体感速度は上がるから、実際はそこまでではないのかもしれないけど、怖いんだよ! しかも体勢的に後ろを見ることになるから、進行方向、つまり背後に何があるかわからなくて怖い。安全は確保されているんだろうけど、それとこれとは話が別だ。なんでこう、意識を飛ばしたいときには無事なの? 小さい不幸が多すぎる気がする。


ということで、恐怖を味わわされることしばし。

近くの町の上屋敷に連れ込まれた。

王都と領都を結ぶ道上にある宿場町の一つか、大した産業などないが、人の行き来があるが故に発展した町のようだ。その中でも一番良い家を差し押さえてるって……しかもここが前線なのだとしたら、思った以上に進軍速度が早い。

上手いことネゴシエーターしないとディナトロに藜をのっとられる恐れがある。自称天才は伊達じゃなかったわ。


「シン君連れてきましたよー」


「うむ、ご苦労」


そして将軍の前まで直通でした。

兵士やら軍隊も見掛けなかったけど、ここまで来てるんじゃないの? 先行してやって来たのだろうか、ますます狙いがわからん。


「さて、ヤンシン、率直に言おう、なんとかしてくれ」


「は、はあ?」


「うむ……誤解と勘違いから、なぜか私がこの地方の兵士を束ねて戦をすることになっているらしい」


何がどうなったらそうなる。

え、西方伯って馬鹿なの!?


「何があったんだよ」


「ふむ、何から説明するか……まあ、こちらの地方の飯を食っていたら、辺境伯の令息と懇意になり、彼の親殺しに付き合わされたといったところか」


お、おま、それ、ちょっと他領の事情に首つっこんだとかそういう……そういうのじゃすまされんあれなんですけど!?

帰って良いかな? ここで帰っても許されるよね?

座った椅子から腰を浮かせかかけたが、上からがっしと抑えつけられた。うおおおお逃げ道いいぃぃ!


「我々の故郷でも良くあることだ。領主が殺され、病死と偽ってその息子または親戚が後を継ぐわけだな。だがあれは、やむを得ぬ理由の下で行われることが多い。少なくとも陛下に裁可を得ているだろうよ」


そのほうがむごくね? 王様公認で要らんやつ扱いって。素直に引退するがよろしかろうに。いや、気付かれずやってるんだから無理なのか? 外国にはよくわからん制度が存在するなぁ。

っつーか、西領息子はそこら辺なんの根回しもしてないのかよ。それで反乱か。ぬーなんで馬鹿息子の尻拭いをしなきゃいけないんだ。


「いやそれ、そいつ振り切って逃げれば良いんじゃ……北領まで来れば少なくとも手は出されないでしょう」


「そうなのだがな、一人、捕らわれてしまった」


そうか、それでここには二号君しかいないのか。

もう一人の堅物そうな旬の少年がいない。むしろ西領息子に気に入られて色々な目にあっていたらオイシイ。いやそういうことじゃねぇわ、人質に取られたのか。

ぬう、東領の息子以外と面識がないんだけど、情報もそこそこないんだよな。なんつーか、地味というか、これといった某かの成果を出しているわけでもない。比較するとね、北領の子達の働きが異常すぎて話題にも上らないっつーね。


「しかし、西伯の令息など、名前すら知りませんよ」


「どうやら我々と会ったことでタガが外れたらしい。大人しい身なりだったが、翌日から派手な装いでごろつきのような真似を始めたな」


遅いヤンキーデビューかよ。年取ってから不良化は人の目が辛いぞ。

新しい世界を知って傾奇するとかどこのネジが緩んだのやら。


「ということで、なんとかしてくれ」


「ただで?」


「この国での我々の裁量はお前にあるのだろう。謝礼を考えないとはいわないが、立場として手を出すだろう?」


そうなんですけど。いわれると腹立つ。

それをわかっていて言葉にするって、どれだけ焦っているのか。わかったよ、どうせ乗りかかった船だ。


「リオ、西伯逝去の情報を流布、同時に中央から官吏を引っ張ってこい。ついでに交渉の場を設けられたら最適だ。場所は皇都、交渉相手は殿下と、禁軍に出迎えさせよう」


「できるのか?」


「やってみせる」


なんたって交渉人ですから。私カッコイイ。

しかしそんな私をして西伯が没している情報など手元になかった。ならば他の面々など推して知るべしだ。皇帝すげ替え後の少し緩んだ時期を狙っているのも目の付け所は悪くない。

情報統制の取り方が巧妙だ。搦め手を使う辺りも好印象である。だが、細部にわたっては詰めが甘い。ディナトロを懐柔できていない時点でそうでしょ。偶然に紛れ込んだのかもしれないけど。

ってことは、咄嗟の判断が鈍い文官衆が相手と思った方が良い。計画は立てられる、実行する胆力もある、だが想定外には弱い。

じゃあまず何をするかといえば、相手が完璧と思っている所から崩す。想定外を差し込む。これに限る。これしか知らない。


「なら、任せよう」


「ああ。将軍は進軍を遅くしてくれればそれで良い」


「簡単に言ってくれる。しかしわかった、私も旅がしたいのであって、争いたいわけではないからな」


よっし、これで戦争回避だぜ。

いくら藜の西側での出来事だからって、東側が安全とは限らないし。それにこんなつまらないことで中央の警戒心を煽りたくない。

何事もほどよい塩梅が必要だ。

しかしディナトロさえ絡んでなければもっと良い使い道もあったんだが。つくづく惜しいよなぁ。

……西領、もらえたりしないかな。


私事ですが。

繁忙期に入りそうなのでただでさえない更新が滞りますご了承ください。

あとは最近読む方が楽しいので更新滞るかもしれません大目に見てください。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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