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一日目。料理の味付けと栄養補給について講義と実践を行い、料理長の信頼を得た。
二日目。洗濯の効率化と分担のメリットを分かり易く解説してメイド達の輪に入った。
三日目。清潔と芸術について白熱した議論を交わし、執事と庭師を味方につけた。
などと華麗なことはできなかったが、それなりに全員と仲良くなれた気がする。四日目に入ったら屋敷の行く先々で声をかけられて助言を求められる程度にはなった。雑学知識様々です。
「さすが助賢者様だ」
「賢者様より身近で、これだけの知恵をいただけるなんて」
「しばらくいるんでしょう? 料理長の代わりに食事を作ってほしいわ」
などなど、概ね好評です。
あと助賢者ってなに? 初めて聞いた。
ともかく、あまりの人気ぶりにさすがに疲れて、裏庭にある井戸の近く、木陰で一休みする。いや体力より気疲れがね! にこにこしてるのしんどいわ。
ぅあー、と声を出してアホ面してたら、クスクス言う声が後ろから聞こえてきた。うわ誰かいる、と思って振り向いたらロバートさんだった。貴方、サボってますね?
「馴染めたようだな」
「お陰様で……ご紹介くださり、ありがとうございます」
「きっかけだけだ。あとはあんたの実力だろうよ」
そもそも、追い出しても良いところなのにつなぎを作ってくれたのはこの人だ。
まあ、最初あの化け物屋敷に放り込もうとしてたのを悪く思ってのことらしい。根はいい人というか、罪滅ぼしのつもりだろうけど、アレはアレで許さんからな。
「ところで、なんでもご存知の助賢者様は武芸はできるのかい?」
「全くできません」
「なら、覚えるんだな。ついてこい」
返事を待たずに歩き出すロバート青年。
ここで私が別の仕事にでも向かったらどうするんだろうか。幸いなのか巡り合わせなのか、することは何もないけど。
人手不足の部署は特に無いんだって。メイドに空いた席はあったらしいけど、効率化で埋めちゃった。
ということで、暇だからついて行く。体を動かすのは大嫌いだけど、人があぶれる心配は無い。
途中でリクト君とすれ違った。
この屋敷では一番見た目年齢が近いので、勝手な親近感で手を振ったり挨拶をしてみるのだが、いつも臭いものを見る目で顰め面をされる。嫌われているのが丸わかりなので、逆にフレンドリーを醸し出してやると、ますます苦い顔になる。すごく面白いからわざとやってます。
そんなじゃれ合いをしている間もロバートさんは容赦なく進んでいくので、小走りで追いかける。馬小屋方面の草も禿げた一画、その場所が訓練場だ。
そこには最近見知った三人の私兵さん。あの時に随行していた人達だ。
なんでもロバートさんに心酔しているらしい。この数日でこれほどの情報を手に入れるとか、現世でのコミュ障っぷりが嘘みたいだわ。
「ロバート様! それに助賢者様か」
「お時間があるのですか? ご指導願えませんか!」
「道具でしたらこちらに!」
おおう、熱狂ぶりが微笑ましいですね。ロバートさんに群がって、こちらのことはガン無視です。様付けなのに扱いが雑なのが笑える。ハハハ。
「丁度いい、こいつと手合わせしてくれ」
「えっ」
「どの程度できるのか見てみたい」
できないって言ったよね!?
青年の中での私の評価は一体何なんだ?! 嘘吐きだとでも思われてるのか!?
それとも忘れた? まさかの鳥頭なのか。
「助賢者様とですか? 何かされていたのでしょうか」
「な、何もしていません」
木刀を渡されるけど、武器の類なんて持ったことすらない。
あ、包丁ならよく持つ。あと一回だけ鶏を捌いたことがある。あの時の道具の名前はなんだっけ? 刃が少し太くて柄が長かった。
いや、道具だわな。武器じゃないわ。
「だが、身のこなしが常人とは思えない。たまに、武芸を嗜む者の動きをする」
それ偶然でしょう、明らかに。
「気のせいです。本当に何もしたことないです」
「はじめ」
こっちの言い分を一つも信用してないな!?
合図と共に打ちかかってくる青年兵士。内心で悲鳴を上げ、上段に振りかぶった木剣を受け止めるため得物を横にかざす。すると、それを見越していたかのように相手は手首を捻り、こちらが何かをする隙もなく手の中にあった感触は痺れ以外にはなくなっていた。
弾き飛ばされたと理解した時には、小気味いい音が耳に届いた後、数秒経ってからだ。あんな技術持ってる奴が相手とかハードル高いでしょうがよ!!
「……ロバート様」
「本当にできないんだな」
「そう、申し上げました……」
そうか、とだけ呟き、睨む私に視線で凄んできた。ごめんなさい私が悪かったです。
「よくわかった。構え方を一通り教えてやれ。その後は、受け身と回避の練習だ」
「わかりました」
あ、訓練はするんだ。っていうか内容からして標的代わりじゃないかそれ!?
一体何をさせられるんだ……。
指示だけ出して去って行くロバート青年。私は残された三人によって指導を受けることになった。結果、翌朝には避けることには習熟していた。夜を徹してでも疲れない体万歳。運動してもそれほど大変じゃないとはね。




