8.眠る彼
彼はいつ目覚めるのだろう。
変わらない寝方で、規制正しい息をしているだけ。
一日中、気が向いたら何度も様子を見に来ていた。
屋敷に来てから2週間は経つ。
ハルは、屋敷の中を掃除あるいは修理をしていた、まずは台所から始まり使える部屋を見つけては掃除をして、崩れた床は適当な木材で釘を打ち直す、形は不格好だが。
テルは、ハルが屋敷から出られないと知ってから食料や必需品など持ってきた。
猫のままで。
どうやって持ってきたの?こんなに大量に、人の姿でも持ちきれないよと聞いてみたら、内緒と返された。
食事は、下手くそながら作ってみた、テルは食えないことはないっていたが微妙な顔をしていた。
そういえば、テルは普通にパンとか食べているけどいいだろうか?
すると、別に魔族だから肉しか食べない訳ではないし普通にメシ食っている奴だっているしディドみたいに何も食べなくてもいい奴もいる、まあ、色んな奴はいる。とテルは教えてくれた。
寝室は、さすがに別にしないとずっと彼の寝室にいるわけにはいかないし、使用人部屋を探し出してそこで寝泊まりにしている。たまにテルが猫のまま部屋に来ておしゃべりしてはベットで寝る始末、即、追い出すだが。
猫であるが人でもある、最初は、寂しいからか一緒に寝たが朝、目覚めたら裸の男がいた。
わめいて、蹴飛ばして追い出したことが今でも覚えている。
ちなみに、テルは寝るときは猫のままで寝るらしいからどこでも寝るってさ。
ところで、エセ紳士とクールビューティーリリスは、カバンを取りに屋敷を出た時にはいなくなっていた。手紙を残して。
【僕たち、急にエスカルゴが食べたくなったので帰ります。大丈夫!君はできる子!!PS.彼を社交界に出すこと忘れないでね。】
なにがエスカルゴだ!なにがかたつむりだ!私はそれより危ない目にあっているんだぞ!私もほしいわ!その殻あったら永久的に閉じこもってやる!
むきききいいいいいいい!!
そうしているうちに、また一日が経つ。
今日も、彼は目を覚まさなかった。
ハルは一日の終わりに様子を見に来ていた。
今日も変わらず寝返りもせずに眠っている。
漆黒髪でちょっと長いかな、端正な形をしていて肌が白過ぎでしょう!少し青白いのは血が抜けたせいなだろうか?まつ毛なっが!でもいいな。とても綺麗な顔、イケメン面だ。
ちょっとうっとりするかも、うううぅイケメンめ!
最初はあんなに怖かったのに、死にそうになったし、色んな意味で逃げたかったしなのに……変なの、変なんだ、今はちっとも怖くないし逃げようとも思わない。
暗闇は今も怖いけどでも、少しでもゆっくりでも進もうと思う、思うようになった。
私ほんと変。
そうを思いながら、彼をみる。
テルはディドと言っていた。
ディドは、私が最初屋敷に来た時、かなり怒っていたよね…たぶんだけど。
真っ黒のオーラを全開してさあ。
次会った時は、苦しんでた、痛くて痛くてたまらないくせに我慢していた。
あれ、ほんとなんだろう?ディドから何かが出てきていたあれは…考えるのはよそう、きっと私には手を付けられない存在だ、きっと…。
この人が起きたらどうなるのだろう?
怒る?怒鳴る?暴れる?なんだか悪いほうへ考えてるようだ、じゃあ、泣く?いやあないだろう。
ハルは、あれこれと想像を膨らませていた。
それでも、彼は、ディドは、眠ったままだ。