3.白紳士の強制案内
意識が上がるそんな感覚、、体の感覚がすうと戻る、瞳に力が入る。
最初に感じることは、背中の痛み、だった。
「うっつっ」
小さくうめくと。
「起きたかい」とシリウスの声がとても近くで聞こえ、聞こえ、たぶんかなり近い。
ゆっくり目を開けると…。
「予感はしてたけど!うわああああ!!!」
近い近すぎる!顔と顔の間が!
「うわああって、ひどいなあ。」とちょっと驚いたふうに答えた。
「誰だって顔が近かったら驚きますよ!」
瞬時に3メートル離れる。
これでも、抑えたほうだだって、イケメン面だし、つねにオーラがキラキラしてるし。
「まあ、とにかく無事のようだし。」
シリウスは、そう息をついた。
ちょっとは心配させちゃったかも…。
「あの、すいませんでした、その…ご心配かけて。」ぺこりを頭を下げる。
すると、ポンと頭をなでられた。
うっ!!ちょっと気恥しくて、落ち着かないけど、嫌いではない。
「犬が生きてて良かったですね。」
とたんに頭から手が離れた。なごりおしいなんて内緒です。
彼女をふと見るとレジャーシートを広げ、また雑誌を読んで片手で紅茶をたしなんでいた。
今まで、冷たい言葉を言われたが今だって言われたけど、リリスの表情は少し柔らかく見えた。
ほんのちょっとだけど、私がそう見たかったかもしれないけど。
ここまでの間に、少しは二人に近づけたように気がした。
状況を説明すると私たちは、今屋敷の外にいる、つまり扉の前。
屋敷を入ったとたんに追い出すとは…。
シリウスに言うには、怪物、もとい彼が正しい。
彼の力で外にはじき出されたそうだ、私の腰の痛みはその時にぶつけ、とうに気絶している私を地面に寝かせたところはまだいい…そのあとが問題だった。
彼が放つ力はとても人間の私にはとても悪いみたいで…危なかったらしい、悪く言うと死んでいたかも。
時はすでに、日が変わり太陽が昇っていた。
「聞いてないんですけど…。」
「ごめーんね」と軽く言うもんだから内心イラっとしてた。
それでいて、レジャーシートにゴローンと転がり、耳をほじくりだすから、ますますイライラしてた。
身分があってそれなりに地位がある人だと思っていたけど、私だまされているの?
いまさらながら、声をかけられた時点で疑うべきだった。怪しすぎる!!
頭かかえて、後悔した。
だまされたわ!上手い話には裏がある。
彼は魔族だったのだ、とびきりの。
人間にとっては天敵という存在だ、そんな彼の使用人なれというのか!
命がいくつあっても足りない、足りなさすぎる。
「だから、犬、なんですよ」
今わかった、犬みたいにホイホイついてきちゃうから、犬ということに…。
彼女は最初から知っていた。リリスは。
「うわあああ、だから私は犬なのか!!」
ただの毛嫌いと思っていた違った。
だとすると、回れ右、いち、に。
一歩踏み出す前に、「ストップ」と言われフリーズ状態に。
「君は僕と契約したんだ口約束としても、僕の前で契約をしたんだその意味わかる?」
「…。」
「そう簡単には破棄はできない、人間の君には、力がない君には、今の君には。」
さっきとは違う空気、どっか変な彼とは違う彼、シリウスは、そう言い放った。
「今、逃げてもその契約がある限り、契約が君を縛り続ける、人間の言葉を借りると人が生きる道、人生って言うのかな?」
シリウスは寝ころんだままだけど、その瞳はハルをとらえている。
「試しに逃げてみなよ、さあ。」
言われるままハルは駆け出した。
後ろを振り向かず。
走る、走る、山道を走る、馬車から見ていた風景とは違ってこんな所走っていたっけ?
今、考えれば行き先も知らされていないしここがどこなのか知らない。
街から出て馬車で半日だったことが唯一の情報だった。
ハルは、走る走るでも、たどり着いた所は屋敷の前だった。
「あっお帰り!」さっきと何も変わらない風景。
シリウスがいてリリスがいる。
ハルはまた走る走る何度屋敷の前を走っても、息切らしても何度も。
しまいには「なんでよおおおおおおお」叫んでいた。
「気が済んだ?」
結局、たどり着くところは屋敷の前、当然彼らは待っているのだ。
「わっわたっしに、何を、させたいの?」
息を切らせながら言うハルにシリウスは答えた、とても優雅に。
「改めて契約の内容を答えよう!彼の使用人になってほしい!大丈夫、期限は3か月、社交界の間だけ、3か月過ぎれば、きちんと見合った報酬を出すし、紹介状も優遇できる、それが君と僕が契約した内容、理解した?」
「しっしました!」
「また、走ってもいいんだよ。」
とシリウスは聞くが、もう山道ループはもうこりごりそして、完全にエセ紳士の罠にかかってしまっているこの状況、腹をくくるしかなくて!悔しくて!何度、泣きそうになったか!
「もういいです!」とそう叫ぶしかなかった。
先に動いたのはリリス、扉の隣で使用人の最上級の礼儀をした、足をクロスさせスカートのすそを両端つまみ深くお辞儀をし、容姿とその姿勢に私を魅了した。
「では、行ってきなさい…彼が待っている。」
今度は、優しく導くように扉を開けた。