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あああ悪魔様  作者: 落田プリン
 第1章 はじめまして悪魔様
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19.血染めの殺人者

 「シャッキン」

血に濡れたハサミは宙に浮いて歓喜のごとく、甲高く鉄を響かせる。

「シャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキン」

ハサミの先から鮮血がこぼれ飛び散る。

ハルは目の前の惨劇を見ることしかできなかった。

赤い、赤い血を流して人が倒れている。

「いやだあ!死にたくない!!」

男たちは腰を抜かしたのか地べたをはいずりながら逃げようとする。

ハルを掴んいた男は突然ハルを突き飛ばした。

地面に叩きつけられた痛みで声をだした。

「くぅっつう!」

それに反応し血に濡れたハサミは剣先をこちらに向けた。



 「シャッキン!」

狙われたのは突き飛ばした男の方だった。

男は胸を刺されていた。

男の口からぼとぼと血が流れ、流行物を汚す。


「あああ……あっあああ…。」


 血に濡れたハサミはゆっくりと男の胸から抜けだすと、再び甲高く鉄を鳴らす。

「シャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキン」

鮮血が舞い散る。

ハルの黒い瞳に血に濡れたハサミを映す。

鉄の刃と刃の間に冷たく恐ろしい視線を感じた。

ハルを捉えた瞬間だった。

「シャッキン!」


 ハルが次に見えたのは黒だった。

耳鳴りがするほどの音が高く鳴った。

何かで鉄板を叩き割る音だった。

黒の切れ間から急に光が走った、まるで長い夜から朝日が顔を出したような強い光だった。

光はまぶしく、何度も瞬きをしながらハルはその世界を黒い瞳に映した。

黒は大きくなびく黒コートだった。

コートから上質な黒のシャツが見え隠れをし、長くて決して太くはない引き締まる脚が黒のスーツズボンの上から分かる。地面につくたびコツコツと音が鳴る焦げ茶色のグーツ。

腰には銀色のチェーンがジャラジャラと音が鳴り、銀の十字の装飾が光に反射した。


 ハルはそれが何なのか誰なのかすぐに分かった。

血に濡れたハサミが呼んだ暗闇はなく本来の路地裏の光が戻っていた。

その光を導いたのは彼であった。

ざんばらだった漆黒の髪が赤い紐で一つにくくられていて、白い肌が見え隠れしていた。

顔までは瞳に映すことができなかったが、その後ろ姿だけでもハルを魅了した。


 彼は、ディドは目の前にいる者を鋭く、冷たく見下した。

血に濡れたハサミは銀の刃が無残に折れていた。

それでもハサミは宙に浮き動かした。

刃がかみ合っていないせいか不快な音が鳴る。

「ギチッギィィイギチッギイィー」

壊れかけのような音を出すハサミは、刃がない剣先をディドを指し突進してきた。

ディドは長い脚を上げてハサミを蹴り飛ばした。

再び、鉄板を叩く割る音が響いた。

ハサミは衝撃で吹っ飛び壁に激突した。

血に濡れたハサミは砕けた。


 ハルは砕けたハサミを見て驚いた。

灰色のマントを被っている木で出来た何かを……人形を。

ハサミは独りでに動いていたわけではなかった、操る者がいて殺戮を行えるのだ。

闇に紛れて姿を隠し人を恐怖に陥れる者。

人形は、突然発火した。

青い炎を出して何も無かったように燃え尽きた。


 ハルは声が出なかった。

起きた出来事をどうしたらいいのかわからなかった。

ハルの目の前で人が刺されて死んでいるんだ。

あの人も!あの人も!あの人も!!


死んでしまった。



 目覚めた彼をはっきりと見たのは初めてかもしれない。

彼の瞳は藍色だった。

深い深い夜の色だと思った。

彼は、ハルの目の前に近づきその妖艶な容姿を見せつける。


もっと違う出会い方をしていたら…きっと私は…。

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