15.再び街へ
「やっぱり、聞こえないね。」
ハルは街自慢の鐘を聞こうとするが外街だから聞こえなかった。
テルはあきれ混じりに答えた。
「当たり前だろ。」
ハルたちは今、ハーツベルスにいる。
そのわけはこの街にあの人がいるらしい。
本当にいるかどうかはわからないが、魔族の彼らにはこの街にいると確信していた。
きっかけは、新聞だった。
リリスが読んでいた新聞に載ってあったのである。
=ハーツベルス巨大影到来!!=
深夜、街の上空を飛ぶ大きな影を発見された。
目撃者多数!魔物の疑いあり!
という、記事を見つけたのである。
それを読んだ魔族の彼らは急に態度が変わった。
「どうやら伯爵様はしくじったみたいだね。」
部屋全体に緊張が広がった。
今まで、へらへらしていたシリウスは別人のようだった。
ハルはその空気に耐えられず、テーブルを囲む彼らから離れた。
ハルの知らない世界がそこにあった。
街に魔物が現れただけでも、大騒ぎなのに彼らはもっと別のことを考えているようだった。
「ディドが危ないぞ!」
テルは焦っているようだった。
それを冷たく言い放ったのはシリウスだ。
「彼もだけど、街の人たちほうが危険だねこのまま食い続けると僕はノブレスの規則に従うことになるよ。」
テルは何かをこらえるようだった。
ハルは何が起きているのか理解ができなかった。
メイド服を握りしめて過ぎ去るのをただ待つしかなかった。
彼らは、ハーツベルスに行くと言い出した。
テルも自分から言い出した。
私は、ここにいるしかないよね。
そう思った時。
「どうしたんだい?君も一緒に行こう!君は彼の使用人だろう!」
シリウスがハルに手を差し出した。
ハルは瞳を大きくした、シリウスがあまりにも神々しくてまぶしかった。
その手を誘われるままとった。
それは彼らの世界に本当の意味で踏み入れることなるなんてハルは知りもしなかった。
まさか、屋敷から出られるとは思いもしなかった。
びっくりだわ。
シリウス言うには、あの時ハルが使用人なることを逃げたから出られなかったからで、使用人なることを決めたハルは普通に屋敷から出られるそうで…。
ハルを縛る契約は人生そのもので、体ごとを縛ったことじゃないこと。
「だって、外に出ないとお買い物できないでしょう?」
シリウスは淡々と言い放った。
最初からきちんと言ってよ!
優しい言葉をシリウスは並べるが彼をまとう空気はまだ緊張感があって、ハルは口を開ける自信がなかった。
ようやく、ハルが口を開けたのは街に着いたからだった。
着いたら、夕方だった。
馬車で屋敷まで半日だったし、ここまで来るのはやっぱり半日だった。
夕方の鐘が聞こえると思ったけど、聞こえなかったな。
「本格的な活動はひとまず明日からということで!」
私たちはシリウスの指示に従った。
前回泊まった宿屋に泊まることになった。
そこに働いているおばちゃん店主とシリウスの異常なテンションに一気に疲れた。
「また来たよ!マイ!マザー!!」
「オォー!会いたかったよ!ボォイィィーーーー!!」
ハルの心の中は突っ込むのをやめた。
やだ、疲れる。




