9.使用人と猫
逃げないと!逃げないと!
追いつかれる!
早く、早く、早く!!走らないと!!
早く!あいつが来る!
いやだ!いやだ!
「いやだ…。」
「何がいやって?」
意識が浮上して、夢を見たというのは分かるが、分かりたくないものが私の体の上にあることはわかってしまった。
つーか重い!!
「重いいぃ!!」
テルがハルの上に乗っていたのである。
猫の姿であることから注意だけする、これが裸だったら殴っていたかも。
「ひどいなあ、魔族が心配してんだからさー。」
テルは気にいらなかったのかぶつぶつ言いだした。
今日の朝食はテルが好きなホットケーキを焼いてあげたのに。ちょっと焦げているけど。
「はいはい、心配してくれてありがとう、でも、人の上に乗るのは禁止!。」
ハルは内心、テルがいてくれてよかったと思っている。
変な夢に悩んでいた。
夢の内容は思い出せないでも、何回も見てるような気がするし、目を覚ますといつも怖かったと思うのだ。
変な夢、疲れているのかな?
「ところで、何読んでいるの?食事中は行儀悪いわ。」
猫のまま雑誌を広げて、食事しているんだ。
ほんと器用よね。
「何って!時代遅れもほどほどにしろよ、だからだまされるんだ。」
「今それいわなくていいでしょう!」
やれやれ、テルは少しあきれた顔で言い出した。
「ちょー人気雑誌、トレジャーハントの雑誌だよ!」
「トレジャーハント?」
「古代文明の発掘、分析、調査をもとにしている雑誌だよ!ハンターのビビットの冒険が今一番いい!」
テルは金色の目ををキラキラさせながら言った。
「丁度俺らが住んでいる国が出てるんだ!見てみろよ。」
ハルは、その雑誌を目を通してみた。
なになに、
〇月✕日、今日はリンベル王国に来たぞお!
この国は、山が多い!山道きついぞお!きつい!えっまだ登るの!もう帰りたいよ!
「愚痴しか書いてないけど。」
「そこがいいの!」
ハルは、半目で愚痴しか書いてない文面を省き続きを読む。
今回は、調査を依頼されたぞお!
調査対象は、この国2番目に大きい街!ハーツベルスにあるぞお!ぞお!ぞお!
聞きたいかい!そ・れ・は…そ・れ・はわあ!これぞお!
大きな鐘が白黒写真で載っていた。
この鐘は街の名の由来となっているぞお!
ハーツベルスぞお!
この鐘は心音の鐘と呼ばれているぞお!
響くと心臓まで響くと言われているぞお!
この鐘は黄金時代の遺産といわれているぞお!幾万の魔を払い続けるこの鐘を神の心臓と黄金時代はそう呼ばれていたぞお!すごいぞお!
この鐘はもともと魔国にあったそうぞお!勇者時代に勇者が魔王から奪った産物ぞお!怖いぞお!でも、今は昔の話ぞお!千年たった今は平和だぞお!
この鐘には本当に退魔の力があるのか調査だお!実際に聴いてみたぞお!
次の写真で目を疑った。
男がタンカーで運ばれていた。
ちかすぎたぞお!耳痛い!うわーんやだやだ!いたーーい!
調査は延期だぞお!
次回ご期待!
「……」
こんなところを写真撮られるなんてかわいそうだぞおとハルは思った。
食事が終わると、掃除、洗濯、あと修理が待っている。
それを知っているのか何なのかテルは早々とどこかに行ってしまった、いつものことだが。
屋敷内をきれいにするのは限界がある、完全に床が腐り、いつでも落とし穴状態はさすがに無理だ。
ここの部屋もだめね。
さすがお化け屋敷、奇跡的に住めただけでもよかったと思わなくては。
すると、金具の音が鳴った。
ハルは初めは何の音だか分らなかった。
音の鳴る方へ行くと、屋敷の外からだった。
「えっ来客?あり得るの?」
こんなお化け屋敷に人が来るの?来るとしたら、あのエセ紳士だったりして…十分あり得る。
扉を開けたら、やあ!元気してた!エセスマイルでいってくるに違いない!
そうだとしたら、即、閉めてやる!
ハルはそう思い、何度も鳴っている扉を開けた。
え
思っていたことと違った。
それを見た時、ハルはぞっとした。
ハルの目の前は、男の人が立っていた。
なんて色白い人。
身なりは、黒い紳士服をまとっていてどこからか冷たい感じがした。
ハルが立ちすくむでいると、男が言葉をだした。
「ハクシャク」
人の声は息一つで変わるものだ、うれしかった時は高い声を出すために強く息を吸う、悲しい時は低い声を出すために息をはく、でも、その人は息をせずに声をだした。
「ハクシャクハドコダ」
はっ伯爵って!もしかしなくて!彼のことだ!
寝室でいまだ眠る彼のこと。
ハルは、勇気振り絞って声を出す。
「えっとええっと、たっただいま、主はお体が悪く…。」
「ハクシャクハドコダ」
「だっ誰ともお会いに…。」
「ハクシャクハドコダ」
もう!この人強引だな!早いとこ帰ってもらおう!
「ハクシャクハドコダ」
「すいませんが、主はっ「ドコダ、ドコダ、ドコダドコダドコダドコダドコダダアアアァァァァァ!!」」
いきなり叫び出した男にハルは声を失う。
すると男はハルの目を見た。
ハルも男の目を見てしまった。
真っ黒い真っ黒い底なしの闇があった。
あ
「伯爵は屋敷の中」そう答えた。




