第7話
ブックマークありがとうございます。
話がそれすぎて全然進みません。
申し訳ないです。
「よし、この通りには居ないな・・・」
恵理奈がもっていた手鏡を使いながら、道の安全を確認する。衣弦達一行は、一先ず落ち着ける場所に移動しようと、当初の予定通り衣弦の家に向かっていた。3人の中では家が1番学校から近いこともあり、反対は出なかった。
仮に反対されたとしても衣弦は1人でも我が家に行く予定だったが・・・。
「はぁ〜衣弦君の家かぁ〜。衣弦君がいる時には入ったことないから、とっても楽しみだなぁ〜」
「・・・!?(衣弦君がいる時には!?・・・ってことは上野さんは1人で・・・)」
ぼそっと呟いた恵理奈の独り言を耳敏く聞いてしまった雨竜は、過剰に反応してしまった。ばっと恵理奈の方を見てしまったことを後悔したが時すでに遅し・・・。
「岩田君、それ以上余計な詮索はしない方が身のためだよ?」
「ひぃっ・・・」
雨竜はこの時、笑顔ってこんな使い方があるんだと知ったという。彼の女性不信は既に始まっているといってもいい。物語は始まって間もないのに、彼の物語はトップスピードで本編を追い抜いていた。ちなみに終わる予定は今のところない。
「また、痴話喧嘩か・・・。ゾンビ共に気づかれるから程々にしといてくれ・・・。」
げっそりとして振り返り衣弦は2人に言った。衣弦にも何か2人が話しているのは聞こえていたが、興味も無いので聞き流していた。このことが幸か不幸かはまだ分からない。
「も〜、違うよ!(痴話喧嘩なら衣弦君と・・・)ぼそぼそ」
「な、何でもないんだ!またゴミがついてたみたいで上野さんに取ってもらったんだ!俺にはゴミを引き寄せる何かがあるんかな〜、なんてな!」
「お前のこと仲間だと思ってるじゃないか?」
「ひどい!」
ゴミに対する熱い風評被害である。
そんな感じで3人は衣弦の家に向けて歩いて行くのだった。
「着いたぞ。」
学校から出て数十分後、一行は衣弦の住むマンションの前にいた。途中数体のゾンビを見かけたが、出会ったりしないよう、回り道をしながら進んだので思ったより時間がかかってしまった。
しかし、誰一人欠けることなく到着したのは僥倖と言っていいだろう。
「マンション内にやつらが居ないとは限らない、気を引き締めて行くぞ。」
「といっても、お前ん家のマンションオートロックだろ?ゾンビじゃ入れないんじゃね?」
「まぁそうかもしれんが、奴らに噛まれたりした後、まだ意識がある状態でこのマンションに入ったとしたら・・・」
「・・・有り得ない話ではないな。つか噛まれたら感染なんて本当に映画やゲームみたいじゃん。どうして噛まれたら感染するって言えるんだ?」
「あっ、そういえば私見たよ!さっき徘徊してたゾンビは首に噛まれた痕があったんだ。それ以外には大きな傷はなかったし、衣弦君の言う通り多分噛まれたらあいつらの仲間になると思う。」
阿形のことばっかり考えているんじゃ無いんだなと、別の意味で雨竜は感心したが絶対に口や表情には出さない。「二の轍を踏まない」これが雨竜がここ1時間程度で学んだことだった。
「じゃあ階段で行こう。エレベーターはまだ動いているとは思うけど、万が一のことがあるからな。」
「了解!」「はーい!」
「ちなみに阿形の部屋は何階だ?」
「5階だよ!・・・あっ」
恵理奈が言ったあと、しまったという顔をした。思わず言葉が出てしまったようだ。しかし、衣弦の耳にはその声がしっかりと届いていた。
「なぁ、上野?何で俺の家が5階なのを知っているんだ?」
あえて苗字で呼んで突き放した感じを出したが、衣弦はゾンビを前にした時以上の恐怖を感じていた。何でこいつは俺の家を知っている?道中も雨竜みたく、自分の通学路以外ならきょろきょろ辺りを見回すのが普通じゃないか?いや、確かにこいつは普通じゃ無さそうだが、それにしてもまるでいつも通っているかのように付いてきたし・・・。こいつもこの近くに住んでいる?いや、3年間ここから通っているが、こいつには今まで会ったことがない・・・。俺が知らなかっただけで実はご近所でしたって可能性はなくはないが・・・。
様々な思考が衣弦の頭を巡るが全然分からない。追跡者の思考が分かる方がどうかしているとは思うが、衣弦は恵理奈に出会ってまだ間もない。故に彼女のことを詳しく知らなくて当然だった。
「も、も〜ぅ。適当に言ったらたまたま当たっただけじゃん!そんなこといいから早く行こ?あと私のことは恵理奈って呼んでって言ったでしょ?」
「適当に言ったにしては随分自信満々の感じだったが・・・。はぁ、もういい。ちゃんと後で説明してもらうからな。」
衣弦は諦めた。恵理奈には深く関わらないでおこうと決めたのだ。恵理奈はテヘっとおちゃめなウィンクをかましている。それがまた可愛らしいのもムカついたが衣弦は持ち前の精神力で完全にスルーした。
ちなみに我らが雨竜はというと、とばっちりが来ないように外を見ながらビルの屋上に忍者を走らせていた。
「話終わったか?」
「あぁ、すまん。行こう。」
階段を慎重に上り、3人は遂に衣弦の部屋に到着したのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。