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ようこそ!終焉世界の歩き方!  作者: アサリキライ
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第5話

ブックマークありがとうございます。

うれしいです。

「で、自己紹介も終わったし、どうする?」


ツッコミから一旦落ち着いた雨竜がこれからどうするのか相談しようと衣弦に顔を向けた。


「そうだな・・・。とりあえず何もなしに外に向かうのは危険だから、何か武器を探そう。」


「武器っていっても、学校だぜ?ゾンビを倒せる武器なんて落ちちゃいないだろ?」


「いや、武器ならある。」


至って真面目な顔をして、衣弦は言った。その真面目な姿を見て、恵理奈が顔を赤らめながら何処かにトリップしているのだが、話には関係ないので割愛させてもらう。


「はぁ?そんなの学校(こんなとこ)にあるのかよ?」


「ある。とりあえず探すのは・・・スコップだ!」


ここで衣弦が言ったスコップは手に持って土いじりをするタイプの小さなスコップではなく、穴を掘ったり、大きな石を退かすために用いられる作業用のスコップだ。以前メディアでスコップ万能説が取り上げられていたことがある。側面で切ってよし、先端で刺してよし、底で叩いてもよし、従来の使い方で掘ってよしの便利アイテムだということを延々と語っていた。しかも、綺麗に洗えば熱してフライパン代わりにもできるのだという。といっても、流石に調理器具代わりにするつもりは今のところないが・・・。とにかくスコップはあらゆる局面で使える万能武器だということだ。出来れば銃も欲しいところだが、そんなものそれこそ学校にはないだろう。そのメディアの情報を全て信じた訳では無いが、確かに一理あるし時間に余裕が無い今、他のものを探す時間が惜しい。というわけで、スコップを探しに校内探索をすることになった。


「でも、そんな大きいスコップなんて学校にあるのかな?」


トリップから帰ってきていた恵理奈が首をかしげながら衣弦に尋ねた。


「この学校には園芸部や農業クラブがあるからな。畑の近くの倉庫にあると思う。」


「なるほどな。とりあえずそこに向かおうぜ!」


衣弦達が通う学校には、園芸部と農業クラブがあり、学校の隅にはそれほど広くはないが、畑も耕しているのだ。畑の側には、農作業で使うであろう農具も保管されており、そこに行けばスコップも手に入るだろうと衣弦達は考えた。そして何で衣弦がそんなことを知っているのかというと、昼食の時に畑近くのベンチをいつも利用しているからだった。いくら衣弦の追跡者(えりな)だろうと、流石に周りが畑以外何も無いこの場所では見つかるおそれがあったので付いてこれなかったのである。しかも彼女は1度衣弦の後を付けて以来彼にバレることを恐れてその場所には行っていない。部活の関係者以外なら知らなくても当然だろう。ともあれ、畑に寄り添うように倉庫があることを衣弦は知っていた。


3人は周りを警戒しながらも進んでいく。先程足早に出た講堂はかすかに喧騒が聞こえるほどの距離になっている。その時、講堂の側にあるいつも衣弦達がくぐっている正門に何か人のようなものが群がりながら校内へ入って来るのが見えた。


「あれは・・・」


思わず声に出していた衣弦だったが、その声にひかれるように雨竜と恵理奈もそちらを見た。


「おいおい・・・やっぱり校長の言う通りだったってことかよ!!」


「なんか色々見えちゃってる気がするけど、気のせいだよね・・・?」


恵理奈が言ったように、何で動けているのか不思議なくらいそいつらは酷い有様だった。

上半身だけで地面を這うように動いているものや、遠目からでは細かいところまで分からないが、腕や足が欠損しているものまでいる。そして服が破れ、その下からは内臓だろうものを引き摺りながらふらふらと歩いているものもいた。


「うぇっ・・・」


恵理奈がその場で口を抑えてしゃがみこんだ。それはそうだろう。これは映画の中のお話ではないのだ。見るも無残なそれらの姿は、生理的な嫌悪感をわかせるものだった。


「ひでぇな・・・」


雨竜も言葉が出ないと言った様子である。ここで、じっと亡者を観察していた衣弦が呟いた。


「あいつら、講堂に向かってるのか・・・?」


「えっ?」


「多分、音に反応してるんだ。まるで本物のゾンビだな・・・」


確かにゾンビ達は皆誘われるように、未だ騒ぎが収まっていないであろう講堂に向かってぞろぞろと歩みを進めている。


「これじゃあ、武器が手に入ったとしても学校から出られないよぅ・・・」


恵理奈は整った眉を八の字にしながら今にも泣きそうだ。


「いや、それは大丈夫だ。」


不安なんてないとばかりの態度で衣弦は言った。


「でも、正門しか門は空いてないぜ?裏門も今はしまっているだろうし、3人とも門を登って出てもいいが、結構な高さがある。」


大丈夫と自信満々の衣弦の態度に、不安が拭えないのか雨竜が焦ったように言う。しかし衣弦は態度を変えずに大丈夫だというように頷いた。


「実は畑のそばに、農具の出し入れや軽トラ用の小さい通用門があるんだ。そこは正門や裏門みたいに高くないし、うえ・・・恵理奈でも乗り越えられると思う。」


恵理奈を上野と呼ぼうとした時、先程まで泣いていたのが不思議なくらいの真顔で見つめられて、衣弦は恵理奈の名前を言い直した。正直一緒に行動することを失敗だったと早くも衣弦は感じ始めていた。


「うふふ、衣弦君が私の名前を初めて呼んでくれた・・・!衣弦君、今日は記念日だね。ここに記念碑を建てないと・・・」


「というわけで、あいつらに見つかるまえにとっとと倉庫に向かおう。」


「・・・お、おう」


様子がおかしい恵理奈を完全に流す衣弦。恵理奈の様子に完全に引いている雨竜。どこまでもトリップを続ける恵理奈。

正門の異様な雰囲気と同じくらい、今この3人の雰囲気もカオスであった。

しかしそんな雰囲気はお構い無しに農具が入っている倉庫は目前であった。




まだ学校から出れません。

やっとゾンビ達が現れましたね(遠目で)。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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