プロローグ
何番煎じか分かりませんが、思いつたまま書いてます。優しく見守ってください。第一部はプロローグのみとなっております。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。男は誰に言うでもなく呟いた。
その言葉に耳を傾ける者は誰もいない。どこにでもあるマンションの、とある一室で阿形衣弦はベッドに背を預け、ぼんやりと天井を見ている。いや、見ているというよりただ顔を向けていると言った方が正しいのかもしれない。
彼の瞳は天井ではなく、どこか遠いところを映している。
この部屋には衣弦以外の人は見当たらない。
ふと外から部屋のガラスを震わせるような凄まじい爆発音が鳴り響いた。音からして距離はかなりあるのだろうが、ガタガタと部屋の物が振動しており爆発の大きさを物語っている。
しかし、衣弦は特に慌てた風もなく、うっとうしそうに身をよじると、まるでそれがいつものことかのようにカーテンを開けて外を確認した。
「今日は一段とでかいな・・・」
遠くの方でもくもくと巨大な煙が立ち上っている。ガソリンスタンドでも爆発したのだろう。彼はそれを一瞥すると興味を失ったかのように目をそらし、その視線をマンションの周囲に向けた。
「くそっ、まだうじゃうじゃいやがる。さっきの爆発音で向こうに行ってくれればいいんだが・・・」
そう言った衣弦の視線の先にはかつて人間だったモノがさまよっている。服は破け、内臓を垂れ流し、中には顔面が抉れて元の顔が分からないやつもいる。大人や子ども、ましてや男女なんて関係ない。この町、いやこの国は今や人間ではなく元人間の化物が我が物顔で闊歩するようになってしまった。
道路には横転した車や中には軍用車と思われるものも見られる。そして地面にはおびただしい赤黒い血のあとや、肉片のようなもの(何だったのかは考えたくもない)など、色々なものがぶちまけられたように散乱している。靴を履いていても歩くのさえ嫌になるような光景が眼下には広がっていた。
「はぁ、今日は疲れたから動くのは明日からだな。」
衣弦はため息を吐きながら、カーテンを閉めベッドに体を投げ出した。こんな状況でも睡魔はやってくる。その睡魔に身を任せながら怒涛のような1ヶ月を思い返した。
読んでくださった皆さま、ありがとうございます。