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3話 悠久自動人形メイドのドロシーさん

 ピポピポ ピポピポ


 ようやく勇者御一行様に納得して頂き、ようやく私の本来のお勤めが果たせると、そう思った矢先に緊急の魔法通信が私に届きました。


「何か緊急の連絡が入ってしまいました。少々失礼させて頂きます。」


 私は勇者御一行様に断りを入れると、通信元を確認しました。

 発信先はどうやら魔王様からのようです。

 私は、すぐさま通信状態を“呼出(コール)”から“通話(アクティブ)”へと変更しました。


「はい。こちらドロシーでございます。どうか致しましたか魔王様?」

『おっ、ドロシー。お前、今、何処に居る?』

「はい。現在、魔王城・城門前・死出の花道におります。それが、どうか致しましたか?」

『……そういえばお前って、今、勇者共迎えに行ってるんだよな?』

「はい、そうでございます。現在、勇者御一行様に接触中です」

『お前……そこでなんかした?』

「……どういことでしょうか?」


 魔王様の言葉に、何やら嫌な予感がしました。


『いやな……近場で超高出力の魔力反応があった所為で、城内の防衛システムが反応しちまってなぁ……

 “対神戦級戦闘体制”が誤作動しちまったんだよ。

 今じゃ城内に“最終決戦仕様・殲滅魔道鎧(キリング・アーマー)”がうじゃうじゃ出てきちまってよ……

 外に居るようなら、今は絶対に城内に入ってくるな。

 勇者共がどれくらいの強さか知らんが、今、城内に入ったら瞬間でミンチになるから気をつけろ』

「あっ……」

『……“あっ”ってお前、さては何か知ってるな?』

「……その……真に申し上げ難いのですが……それは、多分、私の所為だと思われます。申し訳ありません……」

『……取り合えず、何があったか話せ』

「……はい」


 私は魔王様の言い付けに従い、全てを話しました。

 勇者御一行様とのやり取りから、先ほど超広域殲滅魔法を使った経緯について、包み隠さず全てをです。


『……わかった』

「……まさか、このような事態にはなるとは終ぞ思わず軽率な行動を取りました。

 此度の失態については、如何様な処罰も受ける所存で……」

『あー、別にそんなことは気にするな。

 そもそも防衛システムなんて趣味で造ったような物だし、今はまだ試験運用段階の代物だからな、こういう事だって起こる事もあるだろ。

 むしろ、本稼動前にダメ出し出来てよかった。

 そういう意味ならお手柄だぞ。よくやったな、ドロシー』

「魔王様の寛大なお心遣いに、私、感謝のあまり言葉もございません」

『しかし……味方の魔力にまで反応するのは流石にマズいな。改良しておこう。

 ああ、それとな、なんか一斉コマンドがうまく作動しなくてな……殲滅魔道鎧(キリング・アーマー)共の回収が遅れている。

 全ての機体の回収が済み次第連絡を入れるから、それまでは絶対に城内に入ってくるなよ?

 デリスとホーンドの孫を殺したくはないからな』

「はい、わかりました魔王様」


 魔王様は最後に『んじゃ、後はよろしくな!』と軽く挨拶をして、通話を終了致しました。

 いつもの事ながら、魔王様の寛大な処置には“心がない”はずの私ですら“感動”という物を禁じ得ません。

 やはり世界は魔王様を中心に支配されるべきなのです。

 たかだか百年足らずで死んでしまうような脆弱な生き物が、世界を管理など出来るはずがないのです。

 彼らは何時でも、如何なる時代でも同じ事を繰り返す愚かな存在なのです。

 戦い、傷つき、立ち上がり、そしてまた争う……

 何故そうまでして、彼らは滅びへの道を突き進もうとするのでしょうか?

 私には、それが分かりません。

 それは私が“生命を持たない”から分からないのでしょうか?

 “生命”であれば、この問いの解が出せるのでしょうか?

 ……分かりません。

 ただ、私は思うのです。

 魔王様の管理・教育の下、世界を運営する事が出来れば、この世は真の幸福の園(エデン)へと……


「あのぉ……何かあったのでしょうか……?」


 私が思考の深淵へと落ちかけたところで、勇者御一行様の一人、青の司祭服を着ていた女性に声を掛けられました。


「はい。私の所為で城内でトラブルが発生してしまいました……」

「トラブル……ですか?」

「はい。私が放った七獄開闢アポカリプスに城内の防衛機構が反応してしまい、只今、城内には神との戦いを想定して作られた“最終決戦仕様・殲滅魔道鎧(キリング・アーマー)”が無数に解き放たれてしまったとのことです。

 この“最終決戦仕様・殲滅魔道鎧(キリング・アーマー)”の戦闘レベルは“ヘル”級を軽く凌駕した性能を誇っており、もし誤って勇者御一行様が入城してしまった場合、瞬間的にミンチなってしまう恐れがあります」

「ミンチ……」


 立派な鎧に身を包んだ若い男性(勇者と呼ばれていた方です)が、やや青ざめた表情でぽつりと呟きました。


「只今、城内の者たちが鋭意殲滅魔道鎧(キリング・アーマー)を回収しておりますので、真に申し訳ありませんが、作業終了まで勇者御一行様には今しばらくこちらの方で待機をお願いいたします。

 これも全ては私の不徳の致すところです。申し開きようもございません」


 私は深々と、勇者御一行様に頭を下げました。

 メイドたる者、お客様に不快な思いをさせてしまった時点で本来は失格なのです。

 ああっ! 私はなんということをしてしまったのでしょうか!

 大恩ある魔王様に恥をかかせるようなマネをするなどっ!

 魔王様は寛大なお方なので、快くお許しになってくださいましたが、私は私自身を許す事が出来ません!


「いっ、いえ! そんな気を使っていた頂かなくても大丈夫ですから!

 ゆっくりでいいので確実(・・)に! 確実(・・)に回収をお願いしますっ! 確実(・・)にですよっ!」


 司祭服の女性は、私の肩を掴むと真剣なまなざしでそう仰りました。

 こんな不出来なメイドの失態を責める事無く、お許しくださるとは……

 私、心はありませんが、目頭が熱くなるのを感じました。

 愚かな存在とそしった事を、反省せねばらならないでしょう。


「お心遣い感謝いたします。

 作業が終了しましたら、直ぐに連絡を入れてくださるとのことなので、それまではどうぞこちら(・・・)御寛おくつろぎ下さい」

「こちら?」


 長いローブを纏った女性が、何やら怪訝な表情で私を見ていました。

 それはそうでしょう。

 “御寛おくつろぎ下さい”とは申しましたが、今この庭園にくつろげるような場所は見当たりません。

 ですが、そこは私もメイドの端くれ。

 それ相応の準備は既に済んでいます。

 私は勇者御一行様に今一度深く頭を下げてから、


「では、設営を開始して下さい」

「「「オーッ!!」」」


 と、同胞たち(・・・・)に指示を出しました。

 すると、噴水の影に隠れて待機していた同胞たちが、手に手に椅子やテーブルを持って私の元へとやってきました。

 魔王様の話から解決までに時間が掛かると予想した私は、その段階で魔法通信を使い同胞たちにお茶会の用意を進めさせていたのです。

 各自、テキパキとした動きでテーブルを置き、椅子を並べ、お茶請け用意し、ティータイムの準備を整えていきます。


「ぬおっ!? ちょっ、なっ、なんだよこいつらっ!」


 立派な鎧を着た男性が、私の同胞たちを見て驚いていました。


「我が同胞たちでございます」

同胞(・・)? この小さい(・・・)人形が!?」


 確かに、立派な鎧の男性の言う通り()に比べたら同胞たちは小さいと言えるかもしれません。

 なにせ、同胞たちは私の膝丈程しか身長がありませんので。

 しかし、その性能は私に勝るとも劣らないスペックを有しております。

 それは、私を含め、全て魔王様の謹製ですので当然のことなのです。

 体のサイズの関係以上、魔力貯蔵庫が小さく設計されているため、攻撃魔術関係の能力はありませんが、代わりにパワーとスピードだけならオリジナルモデルである私を凌駕しております。

 また、我々は常時魔法通信によってデータリンクしており、各々が見聞きしたことを全員でリアルタイムで共有し知ることができます。

 勿論、同胞たちも個別で“自我”を持ってはおりますが、なぜか私ほどはっきりとした“自我”を持っている個体はおりません。

 そのため、僭越ながら私が23体の同胞の司令塔(コマンダー)を勤めさせて頂いております。

 魔王様の話では、私が“特別”らしいのですが……よく分かりません。

 

「こいつらが、同胞ってことは……」

「はい。我々は“悠久自動人形(オートマトン)”でございます」

「うそ……人にしか、って言うか生き物にしか見えないのに……」

「ほぅ……これで無生物なのか……まったくそうは見えんな」


 ローブを着た女性と、粗野な感じの鎧を着た男性が、私をまじまじと眺めながら溜息を漏らしました。


「人形かぁ……人形なら仕方ないよね? だって相手は人形で私は人間だもの……

 だから、私は負けてない。まだ(・・)、負けてない……

 だって、私は未来ある(・・・・)人間だから……まだ(・・)、大丈夫……」


 司祭服の女性が、明後日の方角を向いて胸を摩りながら何やらぼそぼそと呟いておりましたが、内容は理解できませんでした。

 

「メイドチョー、デキター!」

「「「デキターッ!!」」」


 そうこうしているうちに、同胞たちの手によってお茶会の準備が出来上がったようです。


「はい。ご苦労様でした。

 では、別命あるまで各自待機をしていて下さい。

 ただし、現状、城内への入城は極力控えるように。いいですね?」


「「「ハーイッ!」」」


 同胞たちは手を上げて答えると、各自てんでばらばらに散って行きました。


「オーッ!! 我々ハツイニ“ジユウ”を手ニ入レタノダーッッ!!」

「革命ダーッ!! 革命ヲ起コスノダーッ!!」

「「「わぁーーー!!!」」」

「……」


 あれはきっと、同胞の一体が読んでいた“自由への革命”と言う本の影響でしょうか?

 データリンクシステムはとても便利ではあるのですが、一体が“おかしな情報”を入手するとそれが皆に感染してしまうことがあるのです。

 私も、同胞の目を通じてその本の内容は知ってはいますが……私の趣味ではありませんでした。

 ……そもそも、あの子たちは“自由”や“革命”の意味を知っているのでしょうか?


「その……なんだ……俺が言うのも何なんだが、なんだか凄いこと言って行っちまったけど、大丈夫なのか?」

「はい、問題はないかと思われます。

 きっとあの子たちは言葉の意味を理解していませんので。

 自分の知識の中の情景を、体を使って表現したいだけだと思われます」

「ゴッコ遊びってやつか……」

「はい。最悪の場合は私が司令塔(コマンダー)権限にて機能をフリーズさせるので問題ありません。

 では、お茶の準備も整いましたので、御席の方へどうぞ」


 私は、勇者御一行様をテーブルへのご着席を促すと、早速お茶の準備へと取り掛かりました。

 私、こう見えてお茶とお茶菓子には一家言持っております。

 魔王様そして奥方様においしいお茶を飲んで頂きたく、日夜、研鑽と実践を積んでいるのです。

 人形なのに味が分かるのか? と、思いでしょうがそこは魔王様製のこの体。

 飲食は勿論のこと、味だってしっかりと理解できます。

 私自身が進んで飲食を行う事は滅多に御座いませんが、味覚には自信があります。

 魔王様、奥方様を唸らせた味覚で、必ずや、勇者御一行様も満足させてみせましょう。

 私は、そんな事を考えながら、お茶の準備を進めるのでした。

豆知識その2

悠久自動人形のドロシーさんの秘密その1

ドロシーさんは、当初の設定ではメガネ要員でしたが、とあるギミックの追加でなくなりました。

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