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2話 僧侶の受難

「それじゃ、城門から入るゴブ。

 あっ、城内の地図を渡すのを忘れていたゴブ」

「あっ、ありがとう……ございます……」


 私は、ゴブリンから地図を受け取ると軽くお礼を言いました。

 なんだろう……このやり場のない敗北感の様なものは……

 なんで私は、ゴブリンなんかにお礼を言っているのでしょうか……分かりません。


「もし、道に迷ったり、何か“とらぶる”が起きた場合は、手に押した魔方陣に向かって“えすけーぷ”と唱えるゴブ。

 そうすれば、一瞬でここに戻ってこれるゴブ。

 但し、緊急脱出魔法を使うと魔方陣の魔力は切れてしまうゴブから、再度入城する場合はもう一度入城料を払って貰う事になるコブ。

 使うときは考えて使うゴブよ」


 ゴブリンの説明を聞き、私は自分の手の甲をじっと見ました。

 なんだか至れり尽くせりです。

 これは、私が想像していた冒険とは……何か違います。

 冒険というのは、しかも最終ダンジョンというのは、もっと……こう……

 生死が隣り合わせの緊迫した緊張感というかなんと言うか……とにかく、もっとそう言うものがあるはずなのです。

 決して、最弱ゴブリンに説教をされたり、出来上がった地図を貰ったり、あまつさえ緊急脱出用の魔法まで掛けて貰うなど……

 こんなの冒険でも何でもないじゃないですか……

 かと言って、別に死にたい訳でも怪我をしたい訳でもないので、有難いと言ってしまえば有難いのですが、そう思ってしまう自分がまたなんとも情けなくなってくると言いますか……もう……ねぇ?


「ねぇ、ここって本当に魔王の城なの……?」

「だから、そんな事、私に聞かないでよ……」


 隣で、魔法使いが私に尋ねてきました。

 そんなこと私が誰かに聞きたいくらいですよ!


「よしっ! それじゃ、皆行くぞっ!」


 勇者がコブシを突き上げて宣言しました。

 私たちはそれに答えて、城門へと向かいます。

 勇者はエスタリカ国王の孫です。

 私はそんな勇者に幼い頃から仕えてきました。

 これでも、私の祖父は大司教で国王の補佐的な立場にある人物なのです。

 なので、私も将来は国王となる勇者の補佐役となるための教育を施されてきました。

 私はそんな自分の境遇が、この(・・)王子に仕えなければならないと言う運命が、憎くて仕方がありませんでした。

 昔の勇者は……冒険に出る前の勇者はそれはもう、手の付けられないわがまま坊ちゃんでした。

 いつも偉そうにして(まぁ、将来の国王なので偉いのは当たり前なのですが……)、周りに命令ばかりしていました。

 とても、好意を持てるような人間ではなかったのです。

 ですが、この冒険を通じて勇者も成長しました。

 今では、人を思いやれるやさしい人になりました。

 人の盾となれる、頼もしさを持った人になりました。

 正直、以前はまったく、これっぽちも、ゴブリンの脳みそ程度にもそんなことを思ったことはないのですが、最近、勇者の背中を見てドキリとする時があります……

 いえいえ! きっと気の迷いですね……忘れましょう。

 今でも勇者はときどき暴走します。

 私たちがいなければ、勇者は何をしでかすか分からないのです。

 そう言った、ある種“時限式爆裂魔法”のような危うさが、勇者にはあるのです。

 そう言う意味で、私はドキドキしているのです。

 そーです! きっと、そーなのです!

 私たちは勇者を先頭に、城門の前に立ちました。

 勇者が城門に軽く触れると、二発の大魔法の直撃を受けてもびくともしなかった城門がなんの抵抗もなく開いて行きました。

 あのゴブリンの言っていた事は本当だったのです。

 私たちは、あっけなく開いた城門をただ唖然と見上げていました。


 城門の向こう側は、とても綺麗な庭園になっていました。

 少し先に見えるのが魔王の居城でしょう。

 思っていたよりずっと小さい気がします。

 城門と城までは一本の道で繋がっていました。

 その道の脇を色取り取りの草花が咲き乱れ、花の回廊を作り上げています。

 城門と城の中間に、豪華な噴水があり水が流れることで清涼感のある空気があたりを満たしていました。

 とてもセンスがいい庭園です。

 それこそ、エスタリカ城の庭園など足元にも及ばないほどです。


「ようこそおいでくださいました。勇者御一行様」

「っ!?」 


 不意に声を掛けられ、驚き振り向くとそこには一人のメイドさんが立っていました。

 まったく気配を感じなかったので、全然気がつきませんでした。

 それは、皆さん同じようで一様に驚いた表情を浮かべています。


「おっ、お前は……」


 勇者が戸惑いながら、メイドへと声を掛けました。


「私は魔王様付きのメイドで、ドロシーと申します。

 この度は、勇者御一行様のナビゲーター……城内の案内役を勤めさせて頂く思い馳せ参じました」


 メイドは名乗ると、とても優雅に一礼して見せました。

 髪は真っ黒で長く、瞳も黒、着ているメイド服も黒。デザインは旧様式の飾り気のないシックなものです。

 あまり飾り気がない所為か、とても落ち着いた印象を受けました。

 ただ、そのメイドは女の私でもビックリするほどの美人さんでした。

 整った目鼻立ち、凛々しい瞳、きりりと細い眉、瑞々しいぷりっとした真っ赤な唇、白くシミ一つないキメの細かい肌……

 どれを取っても、この世のモノとは思えない代物です。正直、羨ましいです……

 一体どんなお手入れをしたら、こんな美貌が手に入るというのでしょう。

 しかし、それらの全てさえ置き去りにして目を引き付けてしまうものが、このメイドにはありました。

 それは……胸ですっ!!

 なんですか! その大きさは!

 大き過ぎて、胸の部分がぱっつんぱっつんになってるじゃないですか!

 私は、自分の胸部へと目を落とします。

 ……足が見えました。

 きっと、このメイドは自分のお腹すらまともに見えないに違いありません!

 私が水平線の彼方まで見渡せる大海原であるならば、このメイドはエスタリカ王国が誇るのハルフレア大火山ではありませんか!

 格差社会ここに極まれり! です。

 世の中は不公平に満ち溢れていますっ!

 今“僧侶はちっぱい”とか言った奴、表出ろっ! ブッ殺してやるっ!!

 ……おほんっ、少し取り乱してしまいました。

 あれですね……やはり、魔王城というだけあって、いい食生活を送っているのかも知れません。

 何を食べたらそんなに育つのか、後でこっそり聞くことにしましょう。

 そういえば、先ほどから勇者の視線がメイドの胸に釘付けになっているような……

 あっ、戦士まで今まで見たことがない“いやらしい”目をしています。

 これだから、男共は…… 

 もしかして、勇者が戸惑っていたのもこのおっぱ……ゲフン、胸の所為だったのかもしれません。

 そう思うと、うちの男性陣に何故か殺意が……

 あっ、“同士”である魔法使いが爆裂魔法の呪文をこっそり唱えているのが見えました。


 ボフンッ!!


「うおっ!?」

「あちっ! あっちぃ! 何すんだよ魔法使い! 髪の毛燃えたらどーすんだよ!」


 威力は幾分抑えられていたらしい爆裂魔法が、勇者と戦士を襲いました。

 勇者は矢鱈と頭髪を気にしつつ文句を言いますが、魔法使いは“あっかんべー”と返します。

 お父様とおじい様が“アレ”では、勇者も内心気が気ではないのでしょう。

 私の脳裏に煌々と輝くお二方の姿が思い起こされます。


「魔法使い。私たちは遊びでここにいのではありません。そういったイタズラは自重しなさい(建前)」


 いいぞ、もっとやれ!! いっそ根こそぎ燃やしてしまえ!(本音)

 私は、言葉では魔法使いをいさめつつ、魔法使いに向かってGJと親指を立て見せました。

 魔法使いも理解してくれたらしく、グッと親指を立てて返しました。

 いい笑顔でした。

 そんな私たちの児戯を気にすることなく、メイドは何を言うでもなくただ静かにその場に立っていました。

 美人ではあるのですが、無表情で立っていられると少し怖いです。

 無表情……というのとは少し違うのかも知れませんね……無感情と言った方が近いのかも知れません。

 そう思うと、その綺麗な瞳もガラス細工の飾り物の様に思えてきてどこか不気味です。

 なんとなく……なのですが、このメイドは信用出来ない気がしたのです。

 あっ!? 決して胸のサイズを妬んでの事ではありませんからね! 本当ですよ!

 私は、プスプスと煙を上げている勇者と戦士を無視して、メイドに向かって一歩を踏み出しました。


「えっと……ドロシーさん……でしたか?」

「はい。ですが私はメイド。なので“さん”は不要です。ただの“ドロシー”とお呼び下さい」

「えっと……では、ドロシー。

 貴方は先ほど“魔王付きのメイド”と言っていましたが、そんな貴方が何故“魔王を倒そう”としている私たちの案内をするのですか?」


 私は警戒色を強めながら、メイドにそう尋ねました。

 ここは、既に敵地なのです。

 このメイドとて私たちの敵であることに、違いはありません。

 油断したところへ、背後から一撃……という可能性だってあるのです。

 むしろそれが当然なのです。

 私の雰囲気の変化を察してか、皆が己の得物へと手を伸ばし警戒レベルを上げました。

 勇者の頭がチリチリになっていて、緊張感の欠片もないですが致し方ありません。

 “大きいモノ”に踊らされた愚か者の末路です。

 このことは国に帰ったら、私がしっかり書物に書き記してあげましょう。

 そして、“哀れ、大きなおっぱいに魅了された勇者は、頭がチリチリになる呪いを受けてしまった”と後世まで語り継がれればいいのです。

 

「それは、私が“メイド”であるからです。

 例え魔王様に敵対してる方々であったとしても、この敷地内に入られたのなら私にとっては“お客様”なのです。

 お客様へは最高のおもてなしをし、満足をして頂く。

 それこそが、メイドの矜持でございます」


 メイドはまたしても、うやうやしく一礼して見せました。

 本気……で、そんなことを言っているのでしょうか……?

 感情が読み難い人なので、正直よく分かりません。

 

「騙されるなよ僧侶!

 俺たちを油断させるための罠かも知れない!

 大体、魔王の城にいるってことは、人に見えてもそいつは魔物なんだからなっ!」


 勇者はスラリと、腰に下げていた聖剣を抜きました。

 確かに、珍しく勇者がまともな事を言っています。


「勇者御一行様は、私との戦闘がご希望なのでしょうか?」


 メイドは、相変わらずの無表情でそう聞いてきました。


「ああ! あの厄介な結界さえ抜けれれば、こっちのもんだ!

 後は魔王を目指して進むだけだからな!

 邪魔なやつは全て倒すまでだ!」

「ですから、私は邪魔をするためではなく、勇者御一行様の案内役としてここにいるのですが……

 その、私の話を聞いてくれていましたか?」


 今まで無表情だったメイドが、初めて困惑気味に眉根を寄せました。


「ですが困りました……そのご希望を私は現状叶えることができません。

 勇者御一行様が設定した城内難易度はノーマルなので、戦闘レベルが“ヘル”に相当する私が戦ってしまうと規約違反になってしまうのです。

 どうしても私と戦いたいと言うのであれば、一度、退城して頂いて受付窓口にて“難易度変更申請”を出して頂いた上で再度入城して頂く事になります。

 その際なのですが、申し訳ありませんが若干料の変更手数料が必要となってしまう事を了承下さい」

 

 メイドはなんとも事務的な説明をすると、丁寧にペコリと頭を下げました。 

 それにしても、このメイドがあのゴブリンが言っていた“伝説級のモンスター”に匹敵する力を持っていると言うのでしょうか?

 どうにも、にわかには信じられません……


「はぁっ!? こんなメイドが最上級難易度のモンスターだってよ!

 これなら魔王も楽勝なんじゃないか?」


 勇者も私と同じ事を思ったようです。

 そんな勇者の態度にイラッとしたのか、メイドの頬が一瞬ぴくっとしたのを私は見逃しませんでした。

 無表情・無感情だと思っていましたが、じっくり見ていると案外わかることもあるようです。

 ちなみに、私は勇者の言動・行動には大体いつもイラッとしています。


「失礼を承知で申し上げさせて頂きますが、勇者御一行様のその程度の力では魔王様はおろか私さえ倒す事は出来ないと思います。

 いえ、まとも(・・・)な戦闘になる事すらないでしょう。

 私が本気で戦えば、それはただの虐殺になってしまいますから」

「なっ、ナメやがってぇ……」


 勇者がメイドの言葉に青筋立てて怒り出しました。

 持っていた聖剣を握る手に、力がこもっているのが分かります。

 勇者は人をバカにする事は好きですが、バカにされる事は大っ嫌いなのです。

 最近は、その傾向は減ってきてはいたのですが、まさかこんな所で再発するとは……


「待ってください、勇者御一行様。

 先ほども申し上げました通り、私はこの場で戦う事は規約により禁じられております。

 なので、私の力の一端を御覧になって頂く事で勇者御一行様に納得して頂きたく思うのです」


 今にも飛び掛りそうな勢いだった勇者に、メイドはそう言って待ったをかけました。


「では、失礼します。

 天翔爽駆エアリアル・フライ!」


「うわっ!」

「おおっ!」

「きゃっ!」

「むぅ……」


 気がついたときには、私たちは一瞬で空高くまで飛ばされていました。

 メイドが唱えた呪文の所為だと言う事は、直ぐに分かりました。

 足元を見ると、先ほどまで私たちが居た魔王城が豆粒のように見えます。

 驚いている私たちの中、魔法使いだけがなんだか難しそうな顔をしていたした。

 魔法使いも飛翔系の呪文を使いますが、この人数を一瞬にしてこの高さまで飛ばす事は出来ません。

 そこに、メイドの実力の一端を垣間見ているのかも知れません。


「では、御覧下さい。

 七獄開闢アポカリプス……」


 メイドは、その細腕を胸の高さまで持ち上げると、手のひらをあらぬ方向へと向けてポツリ呟くように呪文を唱えました。

 すると、キュポっとメイドの手のひらに親指大程の小さな光の玉が生まれました。

 私は僧侶なので、攻撃魔法には疎いのですが、あまり強そうには見えません。

 むしろ、光の玉は七色の光が混ざり合うことなくゆらゆらしている様は実に綺麗なものでした。

 私がその光に見とれていると……


「ぎゃゃゃぁぁぁぁぁ!!!

 もう、ダメだぁぁぁぁ!! お終いだぁぁぁぁぁ!!

 死ぬ! 私たちはここで死ぬんだぁぁぁぁぁ!!」


 突然、魔法使いが女の子らしからぬ悲鳴を上げました。

 その表情はいつものすまし顔の彼女のものではありません。

 絶対的な恐怖に絶望する町娘のそれと同じでした。


「どっ、どうしました魔法使い!」

「あっ、あれは……!? あれはぁぁぁぁ……!?」


 私は思うように動けない体を疎ましく思いながら、手足をバタつかせて魔法使いへと近づきました。

 魔法使いは、メイドを見てガクガクブルブルと震えているだけでした。

 魔法使いの言う“あれ”とは、メイドが使った魔法の事だと思いますが、あれが一体なんだと言うのでしょうか?


「おい! 魔法使いの奴、急にどうしちまったんだよ?」


 魔法使いの急変に、勇者や戦士も心配顔で近づいてきました。


「分かりません……ただ、メイドが魔法を使ったら急に……」


 私は魔法使いの手を取りました。

 凄い震えです。しかも、手汗も凄い事になっています。

 ちょっと、気持ち悪いです……


「一体どうしたと言うのですか、魔法使い?」


 私は、出来る限り優しく魔法使いに語り掛けました。

 魔法使いは私の手をぎゅっと握り返すと、虚ろな瞳でメイドを見ていました。


「ははっ……あれは……私が使っている爆裂魔法より数段上位の攻撃魔法“超広域殲滅魔法”……その最上級呪文……なの……

 あんなの……伝承でしか知らない……使える奴がいるなんて聞いたこともない……

 しかも、文献では百人規模の組織詠唱が必要で、とても長い詠唱があるはずなのに……それを簡略呪文で使ってるなんて……

 それに、あんなに“小さい”なんてありえない……」

「……? “小さい”と言うことは、それだけ“弱い”と言うことではないのですか?」


 私は思った疑問を、そのまま魔法使いへと尋ねました。


「違う! 全然、違うのっ!

 私が使っている爆裂魔法もそうだけど、魔法は基本、圧縮した方が反発力が高まって威力が上がるの!

 私が文献で読んだ事がある“七獄開闢アポカリプス”の基本サイズはアレの千倍以上あるのっ!

 だから、アレ(・・)の威力も千倍以上……」


 ごくりっ……


 誰の物かは分かりませんでしたが、固唾を飲む音が聞こえました。

 それは、私自身のものだったかも知れません……

 魔法使いが使っている魔法だってかなり強力なものです。

 悔しいですが、魔法使いは天才です。

 エスタリカ国内に、魔法使いに匹敵する魔法使いは存在しません。

 それの更に上位で最上級で通常の千倍以上の威力……最早、想像することすら出来そうにありませんでした。


「行きなさい……」


 メイドがそう言うと、光の玉はヒュンっと音を立てて飛び立って行きました。

 そして、数秒後……


 ドッゴーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!


 遥か彼方に、煉獄の火柱上がっていました。


 私たちは、無事地上へと帰還することが出来ました。

 生きている……ただ、それだけが素晴らしい……

 最早、私たちに先ほどまでの戦意など欠片程も残っては居ませんでした。

 あんな魔法を使う相手に、勝てるわけがありません。

 何故魔法使いがあんなに怯えていたのか、私はようやく理解しました。

 私たちにはまだ、早かったのです。

 もっと冒険をして、経験を積んで、修練をして……

 いえ、無駄でしょね……

 一体、どれ程の修練を積めば、あの魔法に対抗出来ると言うのでしょうか?

 答えは、永遠に無理、です。

 魔法使いの言ったとおり、私たちはここで死ぬのでしょう……

 国王の命を遂げることも、国難を打開することも出来ず、私たちはここで死ぬのです。

 ははっ……もう、笑うことしか出来ませんね。


「……ご理解頂けたでしょうか?

 これでも、まだ私と戦いたいと言うのであれば……」

「結構ですっ!!」


 間髪居れずに、勇者が即答していました。

 勇者はいつだって無謀なことはしないのです。

 無理だと思ったら即逃げる。

 英断即断は勇者の数少ない美徳の一つです。


「そうですか。懸命なご判断に痛み入ります」


 メイドは嫌味たらしく、ペコリと頭を下げました。

 だぶん、私がそう思っているだけでメイドにそんな意図はないのかも知れませんが……


「では、これより城内の案内をしたいと思うのですが、それでよろしいでしょうか?」

『あっ、はい。よろしくお願いします……』


 もう、誰もメイドさんに逆らおうとは思いませんでした。

 豆知識その1

 ゴブーリン・アレクサンドロ・ホーエンハイムⅢ世について。

彼の一人称である“ゴブ”とは、自分の名前である“ゴブ(・・)ーリン”の“ゴブ”からきています。

 つまり、女の子が自分を自分の名前で呼んでいる感覚に近い物があります。

 そう思うと、ちょっとムカつくよね?

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