オッサン達のレベルがすごい
「うえっ……おえええっ……」
「京夜。いい加減吐くのはやめてくれないか?」
「……」
ハアハアと息を荒げながらも、何とか俺たちはギリギリでクエスト受付窓口に着くことに成功した。
報酬の15万ゼニーを片手に、俺は嬉々とした表情を見せる。
「いやあ……高難度なだけあって、結構な報酬が貰えたな」
「そうですねー。もーしばらく働かなくていいんじゃないかって感じです」
俺たちが空を見上げると、すっかり辺りは夕暮れとなっているのが分かった。
周りには子ども達が帰る姿や、おばさんたちが世間話をしている姿も見える。
もう働きたくない。引き籠り主義者の俺にとって、働くなんてことは地獄に等しい。
家が完成したら、ずっと引き籠るっていうのもいいかもしれないな。
「今日の泊まる場所はどうするの? 今からならまだ間に合うよね?」
アークの言葉に、俺はチラリと腕時計を見る。
……なるほど、4時過ぎか。確かにまだ間に合う時間帯ではあるな。
「京夜さあん~。めんどぐざいです~」
「何言ってんだ。ホラ行くぞ」
「いやあああ!」
泣き喚くライアを引っ張りながら、俺たちは宿を探しに行った。
「ふう……今日も疲れたな……」
職場帰りのサラリーマンみたいなことを呟きながら、俺は温泉へと浸かった。
なんか知らんがこの村は温泉が有名な観光地らしい。なんか言われてみればいい匂いがする気が。
……あと、混浴じゃないのでご安心を。
というかライアとアークは前、なぜ急に「一緒に風呂に入ろう」などと言い出したのだろうか。いくら女の子らしさの概念が欠如しているとはいえ、流石にそれくらいは恥じると思うのだが。
まあいいか。余計な事考えてたら心がリラックスされないぜ。
「お。アンタ見ねえ顔だが、ハンターか?」
急に誰かに話しかけられ、俺は慌てて振り返る。
見るとそこには、俺より少し年上……いや結構年上のオッサンハンター達が集まっていた。
しまった。「余計な事考えてたら~」の件を考えていたのが間違いだった。
「あ……あはは。まあ色々あってここに来て……」
「まあまあ、そんな気張らず話さなくていいぜ。ここは温泉。リラックスしに来る場所だ」
おお、何だこのオッサン達。分かっているじゃないか。
俺は肩まで温泉に浸かると、オッサン達に話しかける。
「あなた達は、どのくらいハンターの仕事をやってるんですか? 見た感じ、凄腕ハンターさん達に見えますけど……」
「おおっ! 見る目あるじゃねえか坊主! 俺らはこの村では一番の剣士達って言われてるんだぜ!」
「へえ……」
俺はオッサン達に感服しながら、自分の今の職業について思い出した。
……そういえば俺、未だに本業が剣士なんだよなあ。そろそろ他の魔法覚えたい。
今度アークにでも教えてもらうか。ガーブには……できれば教わりたくないですね。はい。
「まあ、のんびり頑張るってのが大事よ。坊主今、レベルはどのくらいなんだ?」
「えっと……詳しくは確認できてないですけど、60以上はあると思います」
「へー、見かけによらずやるじゃねえか。俺は……355だけどな! まあ、坊主も頑張れよ!」
そう言って一人のオッサンが、俺の背中を叩いてきた。痛い、痛いって。
なんだろう、この人達ティールと行動が似てる気がする。
しかし……355、か。
スゲエな。何年この人達はハンターをやってるんだろう。
やっとハンターを初めて2ヵ月が経ったが……俺のレベルは(多分)60超え。結構進みは順調な方なのかもしれん。
……実際の強さは別として。
俺はこのままハンターやってちやほやされんのも悪くないかもしれない、と思いながら、笑い合うオッサン達の姿を眺めていた。




