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ゴリラ遭遇(本物)

「……疲れたッ! もうヤダわッ! まったくッ!」

「きょーやがおかしくなった……」

 不審者を見るかの視線を浴びせられながら、俺はクエスト内の岩の上に突っ伏した。

 あのファイアドラゴン事件から、2日後。

 流石にいつまでも家づくりをしているワケにもいかない。そのため、俺たちは金稼ぎも踏まえてクエストへ来ていたのだが……。

「全く、モンスターがいないじゃないのッ! せっかく今日は遠い海っぽい場所まで来たっていうのに!」

「京夜、その喋り方はやめた方がいいんじゃないか……?」

「……いや、悪い。ちょっとおかしくなってたわ」

 ハッと俺は我に返り、自分の頬をぺチぺチと叩く。

 今回は、報酬も良くて俺たちでもギリギリクリアできそうなダンジョンへと来ているのだ。しかも海。

 クエスト=森たいなイメージが勝手についていてしまった俺だったが、これにはちょっとテンションが上がった。だって海だもん。

 しかし俺のテンション上昇を抑えるかのように、モンスター達は姿を現さない。

「……クエスト依頼は確かウミズガララの10匹捕獲だったよな?」

「はい。なんでも、綺麗な水づくりにとても役立つんだとか。塩も取れるんだそうですよ~」

「じゃあなんで海の中にいねえんだよ……」

 俺は立ち上がり、ジャブジャブと水の中を探してみるものの、一向に奴らが現れる気配はない。

 というかウミズガララが何なのかもよく分かっていない。

「ウミズガララは、トゲトゲした殻に包まれた、黒い生物です。中の身は茶色くて、食べると美味しいんですよ」

「ウニじゃねーか」

「ウニ? なんですそれ?」

「……」

 俺はライアの質問を無視して、海水をジャブジャブ探し続ける。 

 ウニじゃん。完全にウニじゃん。ウニという名前が付いていないだけだろう。

 俺が楽勝気分で海水を漁っていると、ふと手にチクッとした何かが当たったのが分かった。

「うおっしゃあ! 上がってきやがれこの野郎ォォォォ!!」

 俺はそのトゲトゲした物体を素手で掴むと、渾身の力を込めて引き上げた。

 痛みに若干顔を引きつらせつつも、俺はなんとか全力で力を込める。

 すると、出てきたのは――――――――――!!


「……なにコイツ」


 海水から上がって来たのは……ゴリラ。いや、ゴリラみたいなトゲトゲした生物。

 よく見ると、俺はその生物の尻尾を掴んでいる。

 ……。


「……京夜さん。ここは撤退するのが一番いいと思います」

 俺の背後にいたライアから、非常に卓見な提案が上がった。

 その言葉に俺たちは無言で頷き合うと、ゆっくりと逃走しようとして―――――――


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」」」」

 雄叫びのせいで、逃げ出すのが遅れてしまった。

 諦めずになんとか俺は走り出そうとするも、俺はソイツに首根っこを掴まれてしまう。

「……グフッ」

「あああああ!! 京夜さあああああああああん!!!」

 ライアが泣き叫んでいるのが聞こえる。いや、まず泣く前に助けようよ。

 そんなことを思っていると、アークがハッとした表情でライアに話しかけているのが分かった。

「そうだライア! 前使ってたゴリラマスクあるじゃん! あれ使えば!?」

「ええっ!? ……まあ一応あることにはありますけど……」

「早くううう!!」

 言ってる間にも、首を絞められる力が強くなっていく。

 薄れていく意識の中で、最後の希望を俺はライアへと託した。

「ほーら! ゴリラですよー!!」

「「「「…………」」」」

 ゴリラを含む全員の沈黙。さあ、成功したのだろうか。

 マスクの下のライアの表情が予想できる。多分冷や汗タラタラだ。

 俺が息を飲みながら様子を見守っていると。

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「いやああああああああああ!! やっぱりだめかあああああああああああああああ!!」

 ライアはマスクをゴリラに投げつけた。

 そのせいでゴリラはさらに怒ったのか、ドンドンと地面を踏みつけながら3人へ歩み寄っていく。

 まあ、首絞め攻撃を解除させてくれたことには感謝しよう。


 ……攻撃対象がアイツらへと移ったけどな。

 

 

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