きょーやvsドラゴン! かつのはどっちだ?
「おっ……おわあ!? あっぶねえなっ……」
一層暗さが増してきた森の中、俺は振り下ろされる手や尻尾、または炎を避け続けていた。
俺の後ろでは体力を使い果たしたライアとアークがエールを送っている。
なんでも必殺技や魔法を使うと、慣れない内は極度の疲労状態に陥るんだとか。
自分で言うのもなんだが、俺は前世の時でも何かを避けるのだけは得意だった。生まれつき持った反射神経の良さなのだろうか。
前世の時の身体能力も少しは引き継がれているんだと思う。
悪魔化で上がった身体能力も備わっているので、俺は今、相当な速さで避け続けられていることになるんだろう。
しかし、攻撃をしなければ、何の意味にもならない。
「な……なあ! 少しは動けるだろ!? 攻撃してくれよ!」
「えー…………無理ですよ。一歩も動けないんです」
「なんで!? じゃあなんで必殺技なんか使った!?」
「いや……ドヤ顔したかったもので」
「バカ野郎オオオオオォォォォ!!!」
くっ、最初は少し天然の可愛い少女と思っていたが、とんだ誤算だったようだ。
俺はメタルソードの柄でラバードドラゴンの頭をぶん殴ると、バックステップで距離を取る。
「きょーや! もう少し時間を稼いでくれたら、必殺魔法が撃てるかもしれない! 何とか耐えて!」
「っつ……分かった!」
俺は引き続き攻撃をかわしながら答える。
クッソ、それにしてもコイツ、結構攻撃速度速いな!
その証拠に、さっきから攻撃がかすむ。さすがの俺でも、これでは少し疲れる。
…………このクエスト、本当に難易度「普通」なのだろうか。
いやな予感が脳裏をよぎったが、考えている暇もない。
あー、マジで疲れた……休みたい……。
そう思ったせいで隙が生まれてしまったんだろう。俺は派手に吹っ飛ばされると、やたらデカい岩にたたきつけられた。
これ、装備つけてなかったら、間違いなく死んでたな。
そんな事を思っている間にも、ラバードドラゴンは攻撃を仕掛けてくる。
「がはっ……!?」
俺は思いっきり鋭い爪で斬りつけられた。口の中は鉄の味しかしない。
俺がラバードドラゴンの方を眺めていると、ふと攻撃対象がライアとアークに移っていることに気が付いた。
「二人とも……逃げろ! 速くッ……」
ラバードドラゴンは今にも二人に攻撃をしようとしていた。
しかし二人は動かなかった。いや、正確に言えば、動けないんだろう。
ラバードドラゴンが、ゆっくりと二人の前に近づいた。
え、ヤバいやつですやん、コレ。
俺は炎を吐こうとするラバードドラゴンの前へ飛び込んで―――――
「あああああああああっ!!!」
炎のブレスは俺の体へと命中した。
だが、これで俺の役目は終わった、終わったハズだ。
最後の希望を、俺はアークへと託す。
「後は任せたぜ……アーク」
「りょーかいっ! あとさっきのきょーや……結構かっこよかったよ?」
よし、褒めてもらえた。
役にも立てなかった引き籠りニートが、褒められている。
自分で言うのもなんだが、今日の俺はたしかにカッコいい。世界中のニートに向かってドヤ顔したい気分だ。
俺は笑顔で「ありがとう」と返すと、アークの魔法を見届る。
だんだんと杖が青みを帯びていき、空まで曇り始めた。
『エンドレス・インフェルノッ!!」
その名の通り、ラバードドラゴンの姿は消えていき、俺たちの戦いは幕を閉じた。
時間がないので早めに済ませます! 今回は京夜くんがかっこいい回でしたね。最後はアークちゃんで締めましたが。
これからも楽しく読んでいただければ幸いです!