表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/299

要らない能力

「痛って……腰に来た」

 俺は近所のおじいちゃんみたいなことを呟きながら、腰に手をやった。

 痛い、ホント痛い。これで3本目の木になるが、これ以上やるのは危険である。

 何とか俺はその木を伐り終えると、その場にへたりと座り込んだ。

 ああ、なんて清々しい空なんだ……そういやもう冬も終わるなあ……。

「時間って経つの早いんだなー」

 再び俺はおじいちゃんみたいなセリフを言ってしまった。

 時が経つのは早いもの。全く、いつからこんなに大変な日々が始まってしまったんだか。

 しかし振り返っていると頭痛がしそうだったので、俺は思い出すのをやめた。今を生きるので精一杯な俺にとって、思い出すなんて無理な行為である。

 ……余計な記憶まで思い出して、なんかへこんだら嫌だし。


「……ピピ、コレ持てる?」

「ムリ! デキナイ!」

「そうだよな、できないよなあ……」

 俺は大量に積んである木材を見て、大きくため息をついた。何回も往復するのは、非常に面倒くさい。 

 何かいっぺんに運べる方法とかないだろうか。

 そんな下らないことを考えていると、ふと一つ名案が浮かぶ。

「……尻尾で運べばいいじゃん」

 そうだ。俺には悪魔化という能力があるじゃないか。

 俺はウキウキ気分で悪魔化を念じると、俺の尻辺りから紫色の尻尾が飛び出す。

 なんかもうこの能力雑用にしか使ってない気がするなあ。実戦で使ったのは2回しかない。オヤジの髪切り取るのに一回使ったけど。

 俺はまあいっかといった感じで尻尾で木材を掴むと、両手にも木材を抱え、運ぶ場所へと歩き出す。

「っつーかさ~。今更だけどなんでこんな能力付いてきてんの? 正直言って貰うならもっと別の能力が良かったわ」

「キョーヤ! タイヘン!」

「そうなんだよ。大変なんだよ」

 パタパタとついてくるピピにそう答えながら、俺は深くため息をついた。

 全く、あの悪魔のオッサンめ。どうせなら聖剣とか魔剣とか最強装備とかそういうのを貰いたかった。

 悪魔化は全く役に立たないというワケじゃないんだが、扱い方に困るのだ。バレたら終わりだし。

 自分で言うのもなんだが、悪魔化した時の俺の姿は恐ろしいぞ。人間が見たら震え上がるどころの騒ぎじゃ済まなくなる。

 騒ぎ→警察→確保→死刑の即死コンボが思いつくね。


「ふう……もうちょいか……? ……って!」

 俺はすぐさま尻尾をしまうと、こちらに向かって歩いてきた3人に笑いかけた。 

 緊急事態発生。とってもヤバい。

「ど、どうしたのみんな……?」

「どうしたのじゃないですよ~。木は伐れたんですか? 遅いから探しに来たんですよ」

「あ、ああ……バッチリ……」

 ついつい返事がぎこちないものとなってしまう。

 ……あ、危ねえ!? いやマジでビビった、冷や汗タラタラだわ。

 もう悪魔化は極力使わないようにしよう。いや、マジで。

「おお、たくさん伐れたじゃないか。もうちょっと頑張れば今日の分は終わりそうだな」

「よーし、がんばろー!」

 アークがそう言うと同時に、アイツらは走り去っていってしまった。

 なにしに来たんだよアイツら……別に来なくても良かったじゃん……。

 とにかく、もう二度とこのような事態が無いようにしなければ。


 俺は地面に木材を置くと、痛む腰を押さえ始めた―――――――――

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ