小動物撃退係、ピピ
「……さて。取りあえず来てみたが……」
俺たちは、ヘビーファイアドラゴンを倒した森へとやって来ていた。
幸い、場所はティールに訊いたら分かった。ガーブのドッキリ思い出話もできたし。
しかし……。
「お前ら、家の造り方って分かる?」
「いえ。でも、何となくで作ってればいいんじゃないんですか?」
「うん、大丈夫大丈夫」
「…………」
……まあ、いいか。これが俺たちのスタイル。
家なんか適当に形を造っていけば、何とかなるもんだろう。
「よし、じゃあまず……木から集めるか。適当な大きさの木から集めるぞ!」
「「「はーい!!!」」」
俺たちはそれぞれ分かれて、木を切り倒していくことにした。
木を今日は集めるだけでいいだろう。組み立ては、また明日という事で。
「お! ピピ、これとか良さそうじゃね?」
「ヨサソウ! ヨサソウ!」
「だよな、いいよな~」
俺は一本の丈夫そうな木を見つけた。うん、このくらいが丁度いい。
「おっと……手ぐらい合わせとかなきゃな」
俺はスパエメちゃんソードを鞘から引き抜こうとして、手を止めた。
伐るのであれば、両手ぐらい合わせておいた方がいいだろう。
俺が木の前に立って、静かに両手を合わせていると――――――
「グオオオオォォォォォ!!」
「……はいはい。何となく予想してましたよ」
俺は気怠そうに両手を合わせるのをやめると、スパエメちゃんソードを鞘から引き抜いた。
こういう時に大抵モンスターは邪魔してくる。自分のドⅯ効果がいつ発生するのかが最近分かってくるようになってきた。
まず、こういう危険な森の中で油断するのは大抵モンスターが襲ってくるフラグ。常に警戒しておいた方が襲われる可能性も少なくなるものだ。
ではなぜ俺はそれを分かっていた上で警戒しなかったか。
まあ、簡単に言えば最近モンスターと戦ってなくて体がなまっていたからだ。ニートだった俺もやっとアウトドアな考えを持てるようになってきたのである。
いや、うん。そんなフラグあるわけねーだろって思うだろ? 俺だってそう思うよ。信じたくないよ。
ただ、目の前の現実を突きつけられては、ある程度信じないわけにもいかない。
「グオオオオォオオオオオオ!!」
「ふっ……弱い奴ほどよく吠える」
中二病全開。
俺と戦くことになった不幸な相手は……うーん、実に弱そうな、小さいウサギみたいなモンスター。
……え? ウサギが「グオオオオ!」なんて吠えるワケないだろって? いや、吠えてるんですよ。不思議なことに。
怖い、怖いけど、見た目は可愛い。
殺すのは、正直言って気が引ける。
「お~い、俺はお前の邪魔しに来たワケじゃないんだ。悪いけど帰ってくれないかな」
「グオオオオォ!!」
俺の言葉に逆らうかのように、ウサギは吠える声量を大きくした。
うーん、まいったな。戦いたくないんだけど。
絶対俺の勝ちは見えてるし、かと言って殺すワケにもいかないしなあ……。
……あ、そうだ。
「いけえッ!! ピピ!」
「ピピィ―――――――――ッ!!」
俺は肩に乗っていたピピに攻撃命令を出した。
すぐさまピピはウサギの元へと飛んでいき、頭をつつき始める。
「うん。後はアイツに任せよう」
俺は小動物撃退係をピピに任命すると、スパエメちゃんソードで木を伐り始めた。
アイツもう実践投入できるんじゃないか? 日本語マスターだけじゃなく、戦闘能力まであるとは。
俺は予想外の木の硬さに顔をしかめながら、スパエメちゃんソードをひき続けた。




