壁蹴りがうるさいです
予備用の私服に身を包みながら、俺はベッドへと入った。
幸い、部屋は2部屋余っていたものがあったので良かった。アイツらと一緒に寝たら睡眠時間の半分を無駄にすることになるんだもん。
今日はティールに感謝しよう。今頃草むらで寝てたらどうなっていたことか。
下手したら猛獣に食われてたかもしれん。
「ふあ……寝よ」
俺は眠気を覚え、目を瞑った、が—――――――――
―――――――ゴスッ。
壁の方から、何か異様な音が聞こえた。
嫌な予感を感じつつも、俺は再び目を瞑る。しかし。
―――――――ゴスッ。
その音は、止まらなかった。
……いや、大体予想はつく。大方、3人の内誰かが壁を蹴っているんだろう。
一応ティール達の家だ。乱暴に蹴るのは良くない。
しかし注意しに行くのも面倒くさい。どうすればいいんだろう。
そう思っている間にも、音は止まずに俺の頭を刺激してくる。
「ゴスゴスゴスゴス……」
「ああもう……頼むから静かにしてくれよ……」
俺は力なく声を漏らした。
この何とも言えない温もりの心地よさから抜け出したくない。ニート時代の頃は1日を布団の中で過ごしたものだ。
ここで毛布から抜け出すのは、俺の流儀に反する。
しかし音が止む事はない。俺の我慢vs音。先に諦めるのはどちらか。
俺も俺で意地になり、耳を塞いで我慢し続けた。一見バカみたいに思えるかもしれんが、体験してみれば分かる。抜け出すなんて無理だから。
————————そして、ついに。
「ふっ……勝った……」
俺が止まった音に満足しながら、至福の表情を浮かべた。
そう、コレだよコレ。最高の気持ちよさ。
眠る眠らないの中間あたりに居るのが、気持ちいいんだよなあ……
……この時の俺は完全に勝った気でいた。しかし。
「「「ドンドンゴスゴスッ! ドンゴスッ」」」
「!?」
さっきの3倍程の大きさの音が、俺の部屋一面に響き渡った。
……これは単なる俺の憶測だが、3人全員が一気に壁を蹴り始めたんだろう。
くっそ、負けねえぞ。まだだ、まだ大丈夫……。
「「「ドンゴスッ! ゴスゴスゴスゴスゴスドンッ!……」」」
「ッ……。ああもう! うるせえ!」
京夜、ゲームオーバー。
新章に次から入るので、短くしました。
引き続きよろしくです。(#^.^#)




