家計画
「……」
「……」
俺はライアに背中を洗ってもらいながら、緊張しまくっていた。
いや、無言は良くない。ドッキンレベルが+5ぐらいになっちゃうから。
「……なんか話そうぜ。流石に恥ずかしくなってきた」
「変態の人が何を今更」
「いや、俺が変態と呼ばれる原因を作ったのはお前らにもあるだろうが」
俺は愚痴気味に答えながら、今日の変態事件を思い出していた。
主な原因はコハクが「コイツは変態だ」宣言をしながら街の人たちに吹聴していたことにあるだろう。そしてそれを信じてしまう街の人もダメだと思う。
……いや、そんなこともないか。考えてみれば俺の不評判は、アークとインコ探しをしていたことから始まったのだ。
あの時以来、俺は街の人たちから嫌悪感の視線を浴びせられるようになってしまった気がする。
この村では、そういった事が無いといいのだが。
「交代! 次アークね」
「了解~」
俺が考えていると、背中を洗うのがアークへと移ったのが分かった。
ずっとスルーしていたのだが、アークはロリ体形……いや、やめた方がいいか。きっとアークだってそれなりのコンプレックスを持っているハズだ。
そう、いつかのハゲオヤジのように。
「それにしても、今日は疲れたね~。いろんなことがあったっていうか」
沈黙の空気を断ち切って、アークが話しかけて来てくれた。
確かに、今日はいつも以上に疲れた。一日でもいいから休日が欲しいものだ。
「ああ、確かに今日は色々……あ、そうだ」
「ん? どうしたの?」
俺は前々から思っていたことを言い忘れていたことに気付いた。
ちょうど全員居るし、今話しておいた方がいいだろう。(コハクは寝てるが)
俺は、ゆっくりと口を開くと。
「あのさ、ずっと思ってたんだけど。……俺たち、そろそろ自分たちの持った方が良くね?」
「「あー……」」
俺のその言葉に、2人は納得したかのように頷いた。
どうやら、俺だけが思っていたワケじゃないらしい。
「でも、持つにはそれなりのお金だって必要ですよね? 私だって自分たちの拠点はあった方がいいとは思いますけど」
「……まあ、金については地道に稼いでいけばいいさ。俺はただ、いつまでも宿生活じゃ嫌だなーって思っただけで」
「でも最近クエスト依頼も少ないし、そんな余裕あるの?」
アークが、不安そうな表情で言ってくる。
まあ、確かにそうなんだよなあ。どうゆうワケか知らないが、クエスト依頼が最近やけに少ないのだ。
依頼が少ないということは、ハンターの仕事も減るということである。効率的かつ簡単なクエストがあればいいのだが……。
「てかさ。俺たちも一応ド素人じゃないんだ。いや、むしろちょっとした上級者かもしれないぜ? 多少難しいクエスト行ってもいいんじゃないか?」
「まあ、言われてみればそうなんですよね。残っているのも、高難度のクエストが多いですし。……ただ、私たちはレベルの割には強くない。そうですよね?」
「…………」
ライアのその言葉に、俺は思わず黙り込んでしまう。
確かに自覚はある。悪魔の能力を発揮しないとあまり活躍できない俺だし、避けることしか得意じゃないし。
そろそろ魔法とかも見直した方がいいのかもしれない。未だに2種類の魔法しか使えないしな、俺。
「痛だだだっ! おいアーク! 痛い痛いあばああああああああああ!!」
「あ、ごめん」
いつの間にかアークの手には力が入り、俺の背中には血が出るほどの激痛が走っていた。
なにコレ痛い。本当に血がちょっと出ちゃったよ。
コイツの小さい体には、一体どれだけの力が宿っているのだろう。
俺は若干恐怖心を覚えながら、頭からお湯をかぶった。




