ドキドキ心+10!
「なあ、俺はどうすればいいの?」
「知りませんよ」
「…………」
いや、ちょっとは責任感持てや。
「……はあ」
とは思ったものの、俺自身もどうすればいいのか分かっていない。だって、目も開けない状態だもん。
開きたいけど開けない。どうしろと言うんだ?
いやまず……
「……なんで俺を呼んだ?」
「いや、私たちもどうすればいいのか分からなかったので……」
「抱えて、脱衣所に持っていけばいいだけだよね!? 俺必要ないじゃん! お前らでできるじゃん!」
バカなのかコイツらは。いや、バカだ。
俺がコハクを抱きかかえ脱衣所まで持っていけと? それこそ無理がある。
いや、うん。……ね。
「分かりましたよ。それより。京夜さんお風呂まだですよね? ちょうど良かった、私たちもまだちゃんと入れてないんです。一緒に入りましょう」
「……は?」
思わず俺は素っ頓狂な声を出してしまった。
……いや分からんこともない。どっちかが一端風呂出てもう一回入るなんて面倒くさいもんな。
たださ。目を瞑るという使命が俺にはある。目を瞑って風呂に入るなんか、前世でもしたことねえぞ。
「きょーや、私たち脱衣所からタオル持ってくるから、目開けていいよ。ちょっと待っててね~」
「えっ……お、おう。分かった」
……。
……ちょっとだけガッカリしてしまった俺は本当に変態なのかもしれない。
アイツらも一応バカでも女の子。17歳ヒキニートは女の子と接する機会なんざないワケで。
いや、落ち着こう俺。大丈夫、大丈夫だ。
「……おいコハク。起きろよ」
「うう……」
俺の声で、コハクが苦しそうな声を上げたのが分かった。
コイツは、一体どれだけの量の酒を飲んだんだろう。結構飯を食ってから時間も経っているし、多少は正気に戻るハズなんだが。
いや、俺も一回酒は飲んじゃった事あるんだけど。確かあの時は、旅館でオッサン連中に無理矢理飲まされたんだっけか。
よし、これからは酒注意の呼びかけをコイツらにしよう。
酒を飲んだ奴が現れた後には大変な事になるのだ。おんぶをしないと移動不可能だし、酔った勢いで変な事言いだしたりするし。
……ハッキリ言って、かなり迷惑なのだ。
「おいコハク、起きてるんだろ?」
「ううん……」
……。
……どうやらまだ寝ているっぽい。
ここで目を開けてもバレないのでは?
「……。いや、ダメだダメだ」
俺はブルブルと首を振り、「ダメ」の一言を頭の中で唱え始めた。
流石にそれはダメだよ京夜君。男として良くないよ、ね?
「……」
そう思いながらも、俺は目を半開きにしていた。
自分の意志とは無関係に、勝手に開こうとしている。
「くっ……」
さあ、もう覚悟は決めた!
男京夜よ、今その目を開け!
俺が決心し、目を全開にしようとした時だった。
「きょーやー! タオル持ってきたー!」
「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
俺は肩を人生最大級にビクつかせながら、ゆっくりと声のした方向を見た。
……ああ、忘れてた。コイツらの事。
いやいや、マジで心臓止まるかと思ったぜ。冗談抜きでな。
ホント、欲張るとロクなことないよね。
「……京夜さん、目開いてませんでしたか? なぜコハクさんの前に座ってるんですか?」
「ん、んん!? 何でもないよ!? ホラあのほらね!? えーっと、うん!」
肯定なのか否定なのか全く明瞭じゃない返事をしながら、俺は慌てて視線を逸らした。
バレてないバレてない。きっとそうだ、いや、そうであることを信じたい。
「……まあ、もういいですけど。それより、背中流しますよ?」
「ファッ!?」
おおう、第二の心臓ドッキリ。




