討伐開始!
「やっぱりまずはお金稼ぎからですよねー」
クエスト受付窓口にて。
俺たちはなるべく多くのクエストをこなすべく、報酬額の多いクエストを選んでいた。
「あ、このラバードドラゴン討伐なんてどう? 簡単な割には報酬もいいよ」
アークが指さしたクエスト表には、たしかに「ラバードドラゴン討伐」と書かれた紙が貼られてあった。
難易度は「普通」と書かれていて、まあ三人もいればクリアできる難易度となっている。
「……今気づいたんだが俺、剣なんか使ったことねーんだよな……」
俺は右手に持ったメタルソードを見ながら、小さくつぶやいた。
というか、なんで俺は狩人なんかになっちゃったんだろう。もっと使用難易度の低い、魔法使いや銃使いなんかになれば良かったのかもしれない。
俺が拳銃なんか使ったらヤバいことになるぞ。華麗なる手さばきでモンスターたちを……
「じゃあ、ラバードドラゴンにしちゃおうか! すいませーん、ここのクエストお願いしまーす!」
俺が自分の職業について夢見ていると、二人はもうクエスト受信してしまっていた。俺の意見は訊かないんですか。そうですか。
慌てて俺もクエスト受信すると、ラバードラゴンというモンスターが潜む森林地帯へと向かった。なんかゼルドギアの時も森だったような気がするんだが。
「なあ、二人はラバードドラゴン? ってやつとは戦ったことあるのか? ソイツの行動パターンとかを知っといた方が安全だと思うんだが……」
「ん? ないよ?」
「ないですよー?」
……なんてこった。
二人ともラバードドラゴンには詳しくないのかよ。
まあ、そう言う俺も知らないんだけど。
俺はこの先どうなってしまうのか、と先が思いやられた。
■
「きゃああああああ!! 助けてええええ!!」
森の薄暗い中にて。
俺は、木が生い茂る道を走りながら、大絶叫をかましていた。
「ねえ! なんで俺ばっか狙ってくんのォ!?」
「前回と同じ事言ってますよ」
「やかましいわ!」
俺を延々と追いかけているのは、ラバードドラゴン。
赤い外見からは、見るからに炎のようなイメージを想像させられる。
そして俺はお決まりの大絶叫を再びかまし、木陰へと隠れこむ。
「はあ……はあ……なんでこんなことに…………」
「はあはあキモイよ、きょーや」
そのアークの言葉に俺の心臓が「ズキン!」と痛む。
ニートは非常に繊細な生き物なのだ。できればもう少し優しく扱ってほしい。「ヒキニートの取り扱い説明書」でもあればいいのに。
こういった悪口でも別の意味でライフを削られるのだ。
「京夜さん! 後ろ!」
俺は身の危険を察知し、素早く横に飛びのいた。俺が先ほどいた場所を見ると、地面が大きくえぐられている。
なんなんだアイツ。ヤバすぎんだろ。
「やああ! 『ウォータ―・ブリザード!』」
アークが魔法の杖らしきものを前に出し、呪文を唱え始めた。すると、ラバードドラゴンの上から大量の水が出現し、怯ませていく。
「すげえなソレ! どうやんだ?」
「ふっふっふ。きょーやも魔法使いになればきっとできるぞ」
アークはエッヘンと胸を張り、自慢げな笑顔を見せた。
なんというかその笑顔がまた可愛らしく見える。
ああ、俺も魔法使いになればよかったなあ。職業って今からでも変更できんのかな?
俺のニートゲーム知識によると、魔法使いが一番扱いやすいらしい。もちろん、他の職業が弱いとも限らないワケだが。
「京夜さん! 離れて!」
後ろからライアの声が聞こえたので、俺は素早く後ろに飛びのく。
しかしそこにはモンスターの姿ではなく、片手剣を横向きに構えるライアの姿があった。
「はああ……『インフィニティ・ビッグソード!』」
そのライアの合図と同時に、巨大な剣がラバードドラゴンの体を切り裂いていく。
なんか若干必殺技の名前が中二病っぽく感じるが、まっすぐに片手剣を構えるライアはとてつもなくカッコよく見えた。
…………あ、ヤベえ。
俺だけ活躍してないじゃん。
強いて言うとするなら、恒例行事となったおとりだけだ。
よし、俺もなんかしら攻撃を与えて、カッコいいところを見せるか。
俺は決心すると、メタルソードを片手にラバードドラゴンの元へ走り出した。
ラバードドラゴンという名の龍の討伐が始まりましたね!
活躍できていない京夜くん。がんばってほしいところですね。
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