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馬車移動が怖すぎる

「あの……なんかすみません。誤解しちゃってて……」

「えーっと……大変だろうけど、頑張ってくださいね」

 なんとか誤解が解けた俺は、他の人達から謝罪の言葉を述べられていた。

 俺の横にはお詫びのつもりなのか、お金や食料、アイテムなどが次々と置かれていく。

 うん、いいじゃないか。誤解は解けたんだから。これ以上他の人達から変態扱いされることもない。


 ……なのに、なんでだろう。

 心の奥にあるむなしさだけが、未だに消えないや。


「京夜さん、元気出してください。その内いいことありますよ」

「うん。生きてる限りは、きっと楽しいこともあるよ!」

 俺が変態と呼ばれる原因を招いたのはお前らにもあるんだけどな。

 そしてふと、横に置かれていった品々を俺は眺める。

 中には、「ハンターのコミュ障解消術」なんてよく分からない本まで置いてあった。嫌がらせとしか思えないんだが……。

 その本を手に取りながら俺は、チラリとテーブルに座っているコハクを見る。

 ……どうだろう、少しは正気に戻っただろうか。

「京夜……その……」

 お?

 来るか? 謝罪来るか?

 ちょっとだけ期待していた俺は、コハクの次の言葉を待っていると。


「私今……ものすごく眠いッ!」

「知るかボケ! もう勝手にしやがれ!」


 俺は持っていた本を思いっきり地面に叩き付けた。





 マズイ。非常にマズイ。

 ……今日中に村に着きそうにない。

「きょーや、どうするの? 野宿?」

「いや、できればそれは避けたい。かと言って宿に入ってもコハクがいるから通報される危険があるし……どうすればいいんだ……」

 俺たちが今現在いる場所は、建物も宿もほとんどない、いわゆる草原と言ったやつだ。

 最初は俺もこんな場所通ったっけ? と不審に思った。思いましたとも。

 しかしライアがあまりにも自信満々で言うので、信じざるを得なくなってきたのだ。確かによく見れば、草原の先にちょっとだけ明かりが見えるような気もする。

 視力は良いってワケでも悪いってワケでもないんだが、この道を通っていけばその内村に着ける。そう思ったんだが……

「……絶対コレ今日中には着かないだろ。マジどうしよう」

「やっぱり野宿しかないんじゃないんですか?」

「ええ……ヤダ……絶対ヤダ……」

 俺の背中に乗っているコハクの寝息を聞きながら、俺は嫌そうに答えた。

 野宿って……いくら何でも危険すぎる。街の旅館で現れた熊みたいな奴が出て来たら、マジでシャレにならない。

「ピピ、どうしたらいいと思う?」

「コマッタ! コマッタ!」

「だよなー。ほんと困ったよなー」

 そんな甲斐ないやり取りをしながらも、俺は内心諦めかけていた。

 もーホントどうでもいいやって感じ。考えることすらもうめんどくさい。

 俺がついにどこか安全そうな場所はないか、確認し出したその時。


「うおっ!? 京夜!? 危ないから下がれッ……!」

「……え?」


 突如響いてきた聞き覚えのある声に、俺は思わず振り向いた。

 しかしその行動が間違っていた。二匹の馬が俺の視界へと迫ってきて――――――――


「ごはッ!? ……グフッ」


 吹っ飛ばされちゃった。カッコよく宙を舞えたね、京夜くん♪ 最初ライアちゃんに吹っ飛ばされた時の願いが叶ったよ♪

 ……いや違う違う、そうじゃなくて。

 俺は少しだけ痛む顔面を押さえながら、辺りを見回した。

「おっと……よし、止まった。大丈夫か、京夜?」

 俺を吹っ飛ばした馬車から出てきたのは……やっぱりティールか。

 声がやたらデカくて特徴的なので、よーく覚えている。

「お前ら、何してんの? こんなトコで」

「いや、お前こそ何してんだよ。俺たちはまあ……色々あってアルゼ村へと向かっている」

「へー、そうなのか。……俺は馬車の練習してたんだ。ちょっとピューラにバカにされて悔しかったもんでな。でもスゲエ上達したんだぜ、俺?」

 そう言ってティールは、馬を操るムチを自慢げに見せてきた。

 思えばティールと話すのも久しぶりだな。最近会えてなかったしなあ……。

「で、お前らこれからどうすんの? アルゼ村行くとか言ってたけど」

「どうすんのったって、野宿だよ。今からじゃ移動すんのも無理だし」

 俺はそう言うと、フサフサの草原へと寝っ転がった。

 何もこんな時間まで練習しなくていいのに。そんなにバカにされたのが悔しかったのだろうか。

 俺がふああ、と小さなあくびをすると、ティールが何やら不思議そうな表情で。


「……じゃあ俺が連れてってやるよ。馬車なら早いし、練習にもちょうどいい」


 ……!?

 

 


 

 


 

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