移動先は……?
「待てー!! そこの犯罪者どもめ!」
「「「「ひいいっ!!」」」」
早速警察官に見つかった俺たちは、猛ダッシュで街の出口へと向かっていた。
隙間を抜けだしてから、さあ出発というところで見つかってしまったのだ。見つかるまでの時間は2秒。
流石に不運すぎると思う。まあ、全く予想してなかったワケでもないんだけどさ。
「きゃああああ! ちょ、ちょっと京夜さん! 何とかしてください!」
「俺!? んなこと言ったってどうすりゃあ……あ、そうか」
俺は背中に隠し持っていた魔法杖を引き抜くと、すぐさま魔法を唱えた。
「『サンダー・レイン』!」
「うおおッ!?」
魔法を放つと、警察官たちはすぐさま走るのを停止した。
その隙をついて、俺たちは街の出口から抜け出す。
「ぐっ……待て、貴様ら……」
「コハク、頼んだ」
「了解! ……フツーに弓矢撃ったら死んじゃいそうだから……えっと……『睡眠弾』!」
コハクはわたわたと睡眠弾用の矢を3本放った。
その矢は見事に命中し、同時に警察官全員がその場に崩れ落ちる。
いやー、チームワーク抜群。
「いやあ、あんな奴ら俺たちの手にかかればちょろいもんだよな!」
「ああ! なんだかんだで私たちも成長しているな」
俺とコハクは笑い合うと、すぐさま進むべき道の確認を始めた。
……あれ。そういえば、どこ行くんだっけ。
「なあ、これから何処行くの? なんか勢いだけで街飛び出してきちゃったけど」
「うーん……じゃあ、前ティールさん達と行ったアルゼ村を目指しましょうか。あそこなら大した距離もないですし」
「いや、でも馬車使ってたからそれなりに遠いんじゃねえの?」
「……いえ、普通に歩いてすぐに着くような村です。多分馬車を使ったのは……馬を操ってカッコいい姿を見せたかったんでしょうね」
そう言ってライアは、スタスタと俺と反対方向に歩き始めた。
まあ、ティールならそんな考えを持っていたとしてもおかしくない。いや、絶対持ってた。
ホント、アイツの自信は一体どこから来ていたんだろう。アイツにはもはやポジティブ以上のものを感じる気さえするよ。
俺がそんなことを思っていると、珍しくアークが心配そうな顔で俺に話しかけてきた。
「ねえ、こんなにノープランでいいの? もっとなんか計画的に……」
「お前がそれ言うかよ……大丈夫、これが俺たちのスタイルだから」
なんかカッコいいそれっぽいことを言っているが、実際のところは計画性のない不安定チーム。普通だったら絶対こんなチーム入らないね。
俺はなんやかんやでこのチームに馴染んでしまっているが、何も知らない初心者のハンターがこのチームに入ったら一体どんな反応をするだろう。
……いや、もういっそ鍛えられると言った方がいいかもしれない。主に精神力的な意味で。
これはあくまで俺限定の話だが、クズ呼ばわりだってされるから。辛いから、ホントにね?
そもそも女の子3人と一緒に歩いてしまっている時点で周囲の人達(主に男)から嫌がられているのかもしれない。特に嬉しくもないハーレム設定である。
村に行っても嫉妬の目を男たちから浴びせられる事になるのだろうか。なんなら、変わってやったっていいんだぞ。
「では、行きましょうか。今日中には着くといいですが……」
「いや、絶対今日中に行こう。じゃないと、下手すりゃあ野宿の可能性が出てくる」
俺は先日そのような経験をしたのでよーく覚えている。
もう2度とアイツらに酒を飲ませるわけにはいかない。特にコハク。
いや、そもそも法律的にダメなのだが、アイツはやたらと酒癖が悪いのだ。必ずおぶれと言ってくるし、正直言ってめんどくさい。
……実を言うとあの事件の後も何回かアイツらは酒を飲んでいるのだ。
これ以上俺の仕事を増やさないでほしい。
「はあ……行くか」
俺は重い足を、ゆっくりと動かし始めた。




