表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/299

脱獄成功?

「ちょ、アルゼルトさあん!? どこまで行く気ですか!?」

「もーっと、できるだけ遠く」

 牢屋からは無事脱出できたのだが、この後が怖い。

 そのため俺たちは警察員の方々に見つからない程度の所まで移動することになったんだが……

「ねえ、もういいでしょ!? 大分遠くまで来たよ!?」

「まーだまだ」

「ざけんな!」

 俺は息を切らしながら、その場にうずくまった。ああ、呼吸ができないヤツだなこれ……。

 それに比べアルゼルトは、全くと言っていいほど疲れたような感じはない。さすがは魔人。

 アルゼルトはふわふわと翼で浮きながら、こちらに不満げな表情で向き直った。

 俺も翼で飛びたいところではあるが、もし警察員の方々に見られたら厄介なので、我慢しておく。

「もー。このぐらいで疲れてどうすんのよー。それに今は、アナタ……いや、京夜たちの仲間の元へ向かってあげてるのよ? 感謝しなさいよね」

「だったら最初からそう言えや!」

 いやマジでなんなんだよ、今日は。

 まずアルゼルトが助けに来てくれたことに驚きだが、それ以上にアルゼルトのドS性が怖い。

 大方、まだまだとか言っていたのもわざとだろう。ドSとドⅯ。最高でもあり最悪のコンビである。

 ……いや、俺はドⅯじゃないか。痛みを感じなきゃ悪魔化から戻れないだけで、俺は決してドⅯではない。コレマジで。ホントに。

「ピッ……」

「ああピピ!? ごめん! ごめんな!」

 俺の肩にしがみついていたピピが、突如小さくうめき声を上げた。

 ごめん、ごめんな。また新しい高級餌買ってやるから許してくれ。

「アンタなんでそんな鳥飼ってんの? 唐揚げにでもして食べればいいのに」

「考えが残酷だなあオイ!」

「そう? モンスターならこんぐらいのこと考えるわよ」

「…………」

 ……じゃあアークはモンスターの分類に入るんだろうか。

 アイツは未だに寝言が「肉」に関するものから離れない。鳥だの豚だの、牛だの。

 非常に生々しい寝言を真横で吐かれるので、俺はいつも眠れないんだよ。ちくしょうめ。


 ホントろくなメンバー居ねえな、と思いながらも、俺は遠い道のりを走り続けた。


             ■

 


「あー! 京夜さん! なに捕まってるんですかあああ!」

 やっとのことでアルゼルトが言っていた場所へ着くと、ライアが抱き着いてきた。

 ヤバい、ちょっとドキドキ……してたまるか。俺は紳士系男子。こんぐらいでドキっとししてはいけない。

「京夜お兄ちゃん! 大丈夫でした!? ごめんなさい、私のせいで……」

 俺がドキ心を抑えていると、シオンが目をうるませながら駆け寄って来た。

 ぺこりと申し訳なさそうに頭を下げてくるので、俺は思わず。


 ——————————土下座した。


「本当に申し訳ございませんでした」

「……え?」

 シオンが戸惑いの声を上げているが、こうでもしなければ俺の気が済まない。

 だってさ、女の子が楽しみにしていた「動物園で遊ぶ」というプランを、警察だのなんだので台無しにしたんだよ?

 それなのに、シオンが頭を下げてきたのだ。よって、俺はそれ以上の謝罪を求め、土下座をした。

「い、いや。私も悪かったですし……それよりも顔上げてください! なんかこっちが申し訳なくなります!」

 お許しが出たので、俺は素直に顔を上げて立ち上がる。

 今日の事についてはもっと内省する必要があるな。このような事態が2度と起きないようにしなければ。

「それにしても京夜、警察に捕まったらしいじゃないか。大丈夫なのか?」

「ああ、無事脱獄した……って! 俺そういえばなんでガイアドラゴンに目つぶし入れたぐらいで逮捕されんの!?」

「……え。そりゃあ逮捕されるでしょ」

 俺が怒りを隠せないでいると、アークが目を丸くして言ってきた。

 なんでだよ。聖龍なんちゃらを傷つけてしまったのは確かに悪かったのかもしれないが……

「あの龍――――――ガイアドラゴンは、この世界で最も偉いとされてる4龍の一匹なんだよ。あの街では拝められてたしね」

「……あ、そうなの……?」

 ついつい俺はアホな声を上げてしまった。

 マジか、マジかよ。前世とは宗教の価値観も違うワケな。

 てか知らん。知らんから、4龍とか。

「ごめんなシオン、楽しみにしてた動物園台無しにしちまって。また今度遊べたら遊ぼうな」

「ううん! ガイアドラゴンが走ってるところも見れて楽しかったですから! また遊びましょうね!」

 そう言ってシオンは、ニッコリと無邪気な笑顔を見せた。

 ああ、この子はなんていい子なんだろう。前に現れたアマテラスたちなんかとは比べものにならないくらい天使。

 そして、どうやら俺の全力疾走は無駄ではなかったらしい。シオンが喜んでくれたなら、まあそれはそれでいい……か。


 俺は痛む足を我慢しながら、シオンの頭を撫でるのだった。


 

 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ