クエスト出発……じゃない?
「ふう……んで。アルゼルト――――――いや、お母さんは、この街に買い物に来てるんだよな?」
「はい! なんかどうしても必要な物があるんだそうで」
俺たちは、近くのカフェっぽい店に入り、取りあえずシオンと話をすることにした。
ココアを啜りながら、シオンは元気いっぱいに説明してくる、説明してくれているんだが……
「なあ、モンスターが買い物なんか行くのか? バレないのか?」
俺はこそこそライアに耳打ちした。
どう考えてもバレると思うんだが。翼生えてたし……
「いや、さすがに買い物に行く時ぐらい翼はしまうと思いますよ? 四六時中翼生やしてたら悪魔だって疲れるでしょうし」
「あ、そっか」
言われて見ればそうだ。現に俺は今翼生やしてないし。
……考えてみれば俺もモンスターみたいなもんだしな。超絶カッコいい悪魔・京夜君だよ! てへっ☆
ごめんなさい調子乗りました。はい。
「ねえきょーや。あの子、倒さなくていいの? 一応魔物モンスターだし、倒さなきゃダメだと思うんだけど……」
「アホかお前! あんな幼き少女殺せるか!? 殺せねえよ!」
間違いなく俺の良心が痛む。
あんな子殺せるわけない。いくらモンスターだからといって、あの子は絶対殺せない。
「私はモンスターだけど、人なんか殺しませんよ? 殺す必要もないですし」
そう言って、シオンは運ばれて来たケーキを頬張った。
なーんだ、この子めちゃくちゃいい子じゃん。俺たちと敵対する必要もないし、はちゃめちゃだらけの俺のチームとは大違いある。
いっそこの子がチームメンバーだったら良かったのに。
「……京夜。今『この子がチームメンバーだったら良かったのに』とか思ってなかったか?」
「いえ、全く」
……コイツら全員そうだけど、こういう時だけ鋭いのが非常に厄介だ。
俺がモンスターと会話できる代わりに、コイツらは俺の心を読むことができるんだろうか。
……それにしてもセギアどうしてるかなー。モンスターと会話できるで思い出したが、あの爺さんネズミは結構いい奴だった。
また暇だったら会いに行こう。動物とも会話できる俺、なんて素晴らしい!
俺がどうでもいい能力で喜んでいると、シオンがケーキを飲み込みながら。
「これから私暇なんですよー。もし良ければなんですが、今日一日一緒に過ごしませんか?」
……えっ。
お母さんには会いに行かなくていいのだろうか。
「ああ、それについては大丈夫ですよ。お母さん、どうせ私のこと置いて行って帰っちゃうので」
ひでえ親だな。
アルゼルトめ。自分の子どもを置いて帰るとは。
「じゃ、じゃあ俺たちと一緒にどっか行くか! たまには遊ぶのもいいだろ!」
俺は悪い空気を追い払うように、わざと大声で叫んだ。
……いや、ホントに俺こういう空気苦手な男だから、ね。
「お! いいですね! 遊びましょう!」
「たまには、悪くないかもな」
3人も乗り気である。若干勢い任せで言ってしまったが、まあみんなが楽しめるんならそれはそれでいいだろう。
俺は緊張の冷や汗を拭いながら、ホッと一息つくのだった。




