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少女、再び登場

「痛てて……体がバキバキいってやがる……」

 旅館の外にて。

 俺たちは取りあえずのんびりクエストでも見て、できそうなのがあったら挑戦することにしてみた。

 ……え? よく眠れたかって? 当然……眠れませんでした。はい。

 最近の体のだるさはそのせいでもある。もちろん3人の奇怪な寝言のせいもあるのだが、疲れすぎてほとんど眠れないのだ。

 あまりに疲れすぎていると、体が痛くなったりして眠れない。いや、ホントに。

「いやー! 朝は気持ちいいな! うーん!」

 コハクが体をのばしながら清々しく言った。

 ……この野郎。さては昨日の記憶がすっかり抜けてやがるな。

 こっちはお前を背負って、運んでやったというのに。俺の身にもなれよ……。

「ホントですねー! 今日はなんだか頑張れそうな気がします!」

「うん! 私頑張る!」

 ……コイツら、嫌がらせで言ってるんだろうか。

 いや、俺が言うと僻みにしか聞こえないんだけどさ。

「はあ……もうヤダあ……」

「どうしました? オカマみたいな声出しちゃって」

「はあ……もうヤダ……」

 オカマと言われてちょっとあせったので、俺は慌てて訂正した。

 ひどい。もーひどい。

 おそらく原因は「ヤダ」の後の「あ」にあったんだろうな。オネエっぽくなってしまった。俺としたことが何たる不覚。

「じゃあ行くか。テキトーにクエストこなしてれば何とか」

 そこまで言いかけた時だった。


 —————————ズドン!!


 俺の真後ろで、とんでもない轟音が聞こえてきた。

 どうしたどうした。まさかとんでもないお相撲さんが落ちて来て天変地異でも起きたんだろうか。

 そんな下らないことを考えながら、俺が音のした方向に目をやると―――――――


「おはようございますっ、お兄ちゃんたち!」


 そこには昨日の少女――――――シオンが立っていた。

 ……。

 なんで俺はこんな幼げな少女から「お兄ちゃん」とか呼ばれてるんだろう。

 いや、別に嫌なワケじゃない。そういうワケじゃないんだが、そろそろ本当に街の人たちから怪しまれるのでできればお兄ちゃん呼びは控えていただきたい。

 ……まあ、それはさておき。

「……シオン。どうしてここに? お母さんはどうした?」

「えっと! お母さんはこの街に買い物に来てるから、私は一人で遊んでたんです! そしたら、お兄ちゃんたちが見えたから……」

 そこまで言ったところで、俺は咄嗟にシオンの口を塞ぐ。

 くそっ、結構元気な声で言ってたから、住民の人たちに聞こえてしまったかもしれん。

「あの、できればお兄ちゃん呼びは控えてくれないかな? 俺は京夜。俺の後ろに居るのが、ライア、アーク、コハクだ」

「分かりました! 京夜お兄ちゃん!」

 俺は痛むこめかみを押さえながらうなだれた。この子には通じないっぽい。

 自己紹介の役目を取られた3人が少しむっとしてるが、もう俺はそれどころじゃないのだよ。

 周囲の住民たちからは「アイツ、またも少女を……!?」だの、「ロリコンだったのか……」だの、「クズ伝説新章突入か……!?」だの。

 どうやら俺のクズ伝説は陰でまだ広まっていたらしい。そして今のでまた最新されてしまったみたいだ。

「はあ……シオン。取りあえず、どこかで話でもしないか? ここじゃ俺の気が休まらない」

「え? うん、私は構わないですけど……でもなんで?」

 首を傾げるシオンの手を引きながら、俺は急ぎ足で歩き出した。

 その途端、「あっ! 逃げやがったぞ犯罪人!」などの声が上がる。ふざけんな。なぜこのくらいで犯罪人呼ばわりされなきゃいけないんだ。

 いや、もう既にクズ呼ばわりはされちゃってるんだけど。


 俺は後ろから聞こえる住民の声を無視しながら、シオンと一緒に歩き続けた。

 


 



 

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