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クエスト終了

「ううっ……やってられないよな……よく分からない3人組は来るし、魔人にクエスト依頼されるし……シオンちゃんは可愛かったが……」

 コハクがビールジョッキを机にドンッと置きながら、深いため息をついた。

 ……まず、なぜコイツが酒を飲んでいるか。

 それはクエストから帰ってきた後の悲劇である。喉が渇いたコハクは、近くのテーブルに置いてあった、水を勢いよく飲み干した。

 しかしそれは水なんかではなく、アルコール度数の高い、酒だったのだ。

 コハクももちろん未成年。酒は飲んではいけない、いけないのだが……

「うへへ……全くですよ! それどころか、クエストの帰り方がわからなくて一時間ぐらい待つことになりましたし! ひどいですよお!」

「むにゃむにゃ……気持ちいい……」

 バカがここにも二人いた。まさか15歳で酒を飲む奴が居たとは。

 なぜかは知らんが、おそらくコイツらもノリで酒を飲んだんだろう。職場帰りのオッサンみたいな愚痴こぼしやがって。

 ……だがまあ、クエストから帰るのに苦労したというのは事実である。

 一刻も早く帰ろうとした俺だったが、帰り道が分からなくて挫折した。考えてみれば、魔法によってクエスト内に入ったのだ。

 当然、帰りも魔法によって帰ってこなければならないワケであるのだが……。

 待ってれば自然とクエスト受付窓口に転送されんのかなーと思っていた俺だったが、現実はそんなに甘くはなかったようである。いくら待っても来ないと判断した俺たちは、がむしゃらに歩いて帰ることにしたのだ。

 ……結果、かかった時間が2時間半。つまり、今現在の時刻は9時過ぎ。

 本来ならこの時間帯は宿の中に居るはずなんだが……


「……ん!? 待てよ!? 宿!? お前ら、今日の泊まる場所ってどうした!?」


 重大なことに気が付いた俺は、ガタッとテーブルから立ち上がった。

 しまった。のんびり飯食ってる場合じゃねえ。

「ふえ……? 宿なんてもうどうでもいいじゃないですかあ。それよりも京夜さんも一緒に食べましょうよ~」

 そう言ってライアが骨付き肉を俺に差し出してくるが、今はもうそれどころじゃない。

 俺は飲みかけのコーヒーを煽ると、大急ぎで3人に訴えた。

「それどころじゃねえだろ! 急げお前ら! 早く!」

「むにゃむにゃ……おやすみ……」

「起きろおおおオオオオオオオオォォォォォォォォ!」

 俺は気力を振り絞ってアークを叫び起こすと、なんとか3人を立ち上がらせる。

 早く、早くしなければ。

「あの、すみません! インコってこの店で預かってませんかね?」

 急いで食堂の店主のもとへ駆けつけると、店主さんは思い出したように一言。

「ああ、そうだったそうだった! 確かピピちゃんっていうインコ預かってたな! あと君、女の子に囲まれて大変なのは分かるが、叫ぶのは控えてくれよ? 今は君たちしか居なかったからいいけど」

「あ……はい……すんません……」

 他の店員さんが、「可愛かったわよ~」なんて言いながら、ピピを手渡してくる。どうやらいい子にしていたみたいだ。

 それにしても、さっきの叫び声聞こえてたのか――――――――と恥ずかしい気持ちになりつつも、俺はピピを連れ、大急ぎで食堂を出た。

 それに続いて、慌てて3人も俺の後をついてくる。

「京夜……歩けない……頭痛いよお……」

 俺がスタスタと先に進んでいると、コハクがへにゃりとその場に倒れてしまった。

 酒を飲んだことがバレなかったのはまだいいが、こんなところで酔っぱらってる少女を見たら通報される危険がある。

「っ……ああもう! じゃあおぶってやるからはよ乗れ! 急がないとどの宿も閉まっちまう!」

「ずーるーいー、きょーや、私もー」

「うるせえ! 子どもかお前は! 大体お前は前に何回もおぶってやってただろうが!」

「うー、ケチー」

 そう言ってアークはぷいと視線を逸らしてしまった。

 いや、どうやって2人同時におぶれと!? 無理、無理だから!

 俺は背中にコハクを乗せると、大急ぎで走り出す。


 ……ああもう、どうしてこうなった!

 


 

 

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