少女シオン、登場
「シオン! 待ってなさいって言ったでしょ!」
「うう……でもでも! 私寂しくて……」
突如現れた少女が、アルゼルトと口論し合っている。
……えーっと。
「アルゼルト……さん? その子は一体……」
「え!? あ、え、えーっと……」
「私、お母さんの子ども!」
「ちょ、シオン!?」
シオンと呼ばれているその少女は、アルゼルトを指さしながら言った。
……ほうほう。状況は読めた、読めたぞ。
シオンはアルゼルトの娘であり、寂しくて別の場所から抜け出して、ここへ来た。そして、俺たちを助けてくれた……と。
ふむ、では命の恩人と言ってしまってもおかしくないな。
「可愛らしい子じゃないか。あの子がモンスターなんて到底思えないな」
「ホントですね! ホントにモンスターなんでしょうか?」
うん、そればかりはコイツらの意見に同情する。
外見からして年齢は12~13歳くらいだろうか。だとしたら俺より大分年下になるな。
あいにく俺にロリコンの趣味はないが、この子は結構可愛いと見ていいだろう。いや、ホントにね。
「くっ……えーと、あなたたち。今日は取りあえず見逃してやるわ。次があなたたちの最後よ! 特にそこのフェミニストくせ毛!」
「めんどくせえあだ名を付けるんじゃねえ!? くそっ……行くぞお前ら!」
俺はスパエメちゃんソードを鞘に納めると、アルゼルトに背中を向けて歩き出した。
……めんどくさい。もうめんどくさい。
こういうのはいち早く撤退するのが一番だ。もう転生して1ヵ月も経つし、どうすればいいのか迅速な判断ができるようになってきた。
俺が早歩きで、その場を去ろうとすると。
「またね、お兄ちゃんたち!」
シオンの元気な声が聞こえた気がした。
俺が咄嗟に振り返ると、俺たちに朗らかな笑顔を見せるシオンが立っている。
「おう! またな、シオン!」
俺がビッと右手を前に出すと、シオンもそれを真似して右手を前に出す。
満足そうにシオンは頷くと、アルゼルトと一緒にその場を去っていった。
「……はあ……」
俺は仲間の女子3人を見て、深いため息をついた。
なんかなあ……
「……きょーや、今私たちを見てため息をついた理由は?」
「いや……若いって色々いいなーって思って」
「私、まだ15歳!? ライアも! 若いからね!?」
アークはそう言って、俺の首筋あたりに噛みついてきた。いだだだ、痛いっす。
それにしても、やっぱりライアもアークも15歳なのか。今になってやっと分かったわ。
「そういえば、コハクは何歳なんだ?」
「私か? 私は17歳。京夜は?」
「お、俺も同じだぜ。17歳だ」
いやあ、今更お互いの年齢を知るとはね。最初に自己紹介ぐらいしとけば良かったのかもしれない。
いきなり始まったからな、俺の冒険生活。
……そして今思ったんだが、このチームって結構安定してるよな。それぞれ3種類の職業が必ず1人ずつ居るし。
もしかしたら俺は、チームメンバーだけは恵まれているのかもしれない。
「……なんかもうこれでクエスト完了みたいですね。報酬金は貰えるんでしょうか」
「一応貰えるんじゃないか? クエストだし……戦ったし」
いやこれで貰えないとかちょっと悲しすぎる。
金以外の報酬といったら……シオンの笑顔かな。ごめんなさい、カッコつけました。
まあでも、取りあえず一件落着……かな……?
腕時計を見ると、6時半になっている。クエストに入ったのが4時半ぐらいだから、2時間ぐらい経っていることになるのか。
いやー、それにしても頑張った。取りあえず今日は疲れたのでもう休みたい。
「よし、今日はもう遅いし、帰ってメシでも食うか!」
「「「はーい!」」」
俺は3人の元気な声を聞きながら、ゆっくりと歩き始めた。
シオンちゃーん!( *´艸`)
頑張ります。




