神様の使い
「いやー、いいのがあって良かったなー」
俺は新しい装備を身にまといながら、呟いた。
「京夜、本当にそんなの使いこなせるのか? 確かに減少量は高いと思うが……」
俺の横で、コハクが心配そうに言ってくる。
あの後――――――ちょうどいい装備を見つけた俺は、早速着てみて、その性能を確かめた。
するとあら不思議! 驚くほど身が軽く感じるんですよ。装備の力なんだろうか。
「……なんか前も高級の魔法杖買ってましたけど、大して使いこなせてな……」
「ダメだ。それは言うな」
俺は改めて自分の装備を確認する。
見た目は……なんかね、青っぽくて、騎士みたいです。うん。
ダメージ減少量はなんと4750。もちろん、それ相応の値段もした。
……まあ、俺だって多少は成長したハズ。こういう装備を買っても別に悪くはないだろう。
「なんかきょーや、変人のナイトみたい」
「変人は余計だ」
「えー。じゃあ変態?」
「お前の引き出しには悪口しか入ってないのか……」
俺、「変態と勘違いされているけど実は紳士系男子」だと思うんだけどなあ。長いけど。
「じゃあ早速、どこでもいいからクエストに行ってみるか? 少しぐらいなら依頼も残ってるだろ」
「賛成ー!」
コハクがやる気に満ちた表情で言ってきた。
ああ、コイツは弓矢を買いまくってたもんなあ。なんか、睡眠弾だの爆破弾だのいろいろあるらしい。
仲間に当たったらホントどうするんだと思う。いや、そこはなんとかして当たらないようにしてるとは思うんだけどさ。
まあ取りあえずやる気になって良かった、と俺が安心していると―――――――
「見つけました、佐々木・京夜様」
突如背後から声をかけられ、俺は慌てて振り向いた。
見るとそこには、3人の男女たちが俺に向かってお辞儀をしている。
「神様から、あなたを救ってやれとの依頼が私たちに与えられました。天界へと転送しますので、どうか私たちの造る魔法陣へとお入りください」
その中の一人の女性が、俺に向かって話しかけてきた。
……。
「ねえきょーや、この人誰?」
「まさか! 他の女性とイチャイ……」
「違う」
俺はライアの言葉を遮って、話しかけてきた女性へと目を向けた。
全身からキラキラとしたオーラを放っていて、いかにも神様の使いっぽい格好をしている。
「取りあえず訊きますけど、あなたたちは誰ですか?」
「申し遅れました、私の名はアマテラス――――――和神アマテラスと申します。こちらの二人は、ウリエルとミカエルです」
アマテラスの後ろにいた二人の男性が、再び一礼した。
……あれっ、ガブリエルは? なんでアマテラスって天使じゃないのに出て来てんの? ————————という考えが頭をよぎったが、話が進まなそうなので我慢しておく。
……なにコレ。なんで俺は天使に話しかけられてんの?
「あなたを天界へ送ることができれば、神様から新しい人生を進む権利を与えられることでしょう。すでに私たちはあなたの正体を知っているのですよ?」
「なっ……」
俺はニッコリと微笑むアマテラスに、思わず後ずさった。
怖い。何この人怖い。
「もちろん新しい人生を歩むのなら、最初から、つまり赤ん坊からスタートすることになります。しかし天界には、絶対に来ていただかないと困るのです」
「おい何なんだお前は。いい加減私たちの邪魔をするのはやめろ」
後ずさる俺に、コハクが一歩前へ出た。
そのコハクの様子にアマテラスは深くため息をつくと。
「『シャイニング・エンド』」
「がっ……!?」
アマテラスが呟いた一言と同時に、コハクはその場に崩れ落ちた。
っつ……コイツ……
「おいコハク! 大丈夫か!?」
「が……は……」
コハクの様子を見る限り、相当苦しいんだろう。
「……やだね。アンタらみたいな連中と、誰が一緒に行くか」
「……ならば、力ずくで行かせるしかないようですね」
そう言って後ろに居たウリエルとミカエルが、剣を構えた。
くそっ……マズイこのままじゃコハクが……
あ、そうだ。
「『ライフ・エナジー』!」
俺はそう唱えると同時に、コハクの体に触れた。
するとコハクはだんだんと元気になっていき、立てるようにまでなっていく。
「……へえ。驚きました。まさか回復魔法を既に覚えているとは」
「ああ。最近やっと他人にも使えるようになったんだぜ?」
ティールとの特訓のおかげで、俺は大分回復魔法の扱いが上手くなった。慣れるのが案外大変だったんだからな? アレ。
……しかし、そうか。天界に帰れ、か。
確かに前世に転生できるんなら絶対帰ってる。でもなあ……
赤ちゃんからだぜ!? ニートになれるまでどんだけ時間かかると思ってんだよ!?
「……はあ。どうやら本当に行く気はないようですね。仕方ない」
途端に、アマテラスの眼光が鋭くなった。ひいいっ、怖いから。
「絶対行きたくない……」
17歳になって俺はやっとニートになることができた。それなのに、また17年間待てと? ふざけんじゃねえ。
だったらまだこの世界でニートを目指した方が希望がある気がする。
俺は新しい装備の剣を引き抜くと、3人の元へと走り出した―――――――
長くなっちゃった? どうもです。紅羽です。
そろそろネタが思いつかなくなってきました。しかし、いきなり終了させるとかそういうことはしません。いや、できない。
なんかやっとあとがきっぽいあとがきを書いてる気がします。最近( ;∀;)とかで終わらしてましたからね。
引き続きよろしくお願いします!




