……暇だ。
魔物モンスター討伐作戦から、数日が経った頃。
俺は、食堂のテーブルに突っ伏しながら、辺りを見回していた。
「誰か可愛い子いねーかな……」
俺は気だるそうに、周りの女性を見回す。
しかし周りには、おばさんやおばあちゃんと言った感じの人しかいなかった。無念。
……そう、ここ最近、暇なのだ。
魔物の件が一段落ついてから、金もあるし、やることがない。
「……京夜さん。なんかいやらしいこと考えてません?」
「いや、そんなことはない。絶対に。マジでマジで」
「怪しい」
「すみませんでした」
これ以上抵抗しても仕方がないので、俺は素直に認めた。
だってさー、暇すぎて暇すぎて。可愛い子は見つからねーし、おばさんしかいねーし。
「まあ……確かに暇ですよね。やることがないっていうか」
「うむ。一理あるな。クエストに行こうにも他のハンターがほとんどクリアしてしまったし」
俺たちは再び机に突っ伏した。
ああ……暇だ……
……。
「……ってオイ! ダメだろコレは! なんかもっとこう……異世界っぽいことするんじゃねーのか!?」
俺はガタッと立ち上がると、大声で叫んだ。
今の俺の声で驚いたのか、周りの人たちがざわついている。
「ど、どうしました急に? っていうか異世界って……」
「あ、ああ……ちょっとな……でもこのままじゃダメだろ! これこそ時間の無駄だろ!」
俺はさすがにこのままではダメだと思い、何かしようと提案する。
しかし、一向にいい考えは出ないままだった。
「ホント、こういうのは仕方ないんですよ。よくあることです」
「うん。何もすることないんだよねー」
……ああ、もうコイツらダメだ。
やる気0。仕方ないといえば仕方ないんだけれども。
……。
「じゃあさ。せめて装備とかを改めて見直すとかしようぜ。ホラ、俺、前装備変えたいとか言っただろ?」
「ああ、そういえばそんなことを言っていた気もするな」
「だろ? じゃあまず……ライアから! お前、それ装備大丈夫か?」
俺はライアの装備を指しながら訊いた。
すると、ライアは。
「……もう、京夜さん。私をあまりバカにしないでくださいね? 一応私も女の子。そのぐらいチェックしてますよ! デリカシーってものを……」
フラグ。
コレは絶対、何か大丈夫じゃないところがあるやつだ。
俺はライアの装備を隅々まで見ていく。
「ひゃあ! なんなんですかもう! はっ……まさか変態……」
「違えよ! ……あ、ホラ、早速ダメなところあるじゃねーか!」
俺が見ていると、お腹の防具辺りに大きい傷があるのが分かった。
小さい傷ならともかく、これはかなりデカいからダメだ。
「これは取りあえず、修理に出さなきゃダメだな。……それより、ライア? お前、女の子だろ? なあなあ」
「…………」
ライアはひゅー、と鳴らない口笛を吹きながら、明後日の方向へ目を逸らした。
もういいや、放っておこう。女の子をいじめるのは……我慢しなきゃダメだよ。
すみません嘘です。すごく悪戯したい気分です。
しかしここで悪戯したら後が怖いので、なんとか思いとどまっておく。
「じゃあ次、アーク。お前は……」
「私には必要ないっ! ……ってきゃあ! 変態だ!」
「ちょ、マジ静かに……ってああ違うんです! 僕はただ、装備をチェックしようとしただけで……」
周りの人たちの冷たい目線に、俺は必死で無実を証明する。
ああ……完全に誤解されちゃったじゃねえか……
「ん? コレ……お前、杖がボロボロじゃねーか」
「え!? あ、えーと、いやあ……」
俺が杖を見せながら尋ねると、アークは必死に目線を逸らしていた。
……もうダメだ、コイツら。バカ丸出し。
「じゃあ最後はコハク……と思ったけど、お前は大丈夫そうだな」
「ああ。私は確認したので問題ない。それより、京夜はどうなんだ?」
「俺もちょっと装備買い替えたいわ」
だいぶ古くなってきたしな。それに、もっといい装備にしたい気もする。
二人がむー……といった表情で俺を見てきたが、無視。
いやー、やっとメタルソードを卒業できる。初心者ハンター用っぽい装備だしなあ、コレ。
カッコいい装備に変えられると思うと、テンションも上がる。
「よし、じゃあ行くか!」
俺はウキウキで武具屋へと足を向けた。




