戦い、終了
「あ! 起きた! きょーやああ!」
俺が目を覚ますと、病院らしき場所のベッドの上だった。
目を覚ますと同時に、アークが俺の腹を的確に……ってあだだだだだ!!
「がはっ……ここどこ? 病院?」
「わーい! 京夜さんが起きたー!!」
「いや、聞けや」
ライアまでもが俺の腹に飛び込んできた。
やめてもうホント痛いからやめてくださいオネガイシマス。
二人が声を上げると同時に、ドアが開かれ、ティールたちも入ってくる。
「おや、起きましたか。随分とボロボロだったものですから、手当てが大変でしたよ。でもまあそこまで深い傷は無いので、今日中に退院できるでしょう」
若い男のお医者さんが、俺の顔を覗き込んできた。
……えー……っと。
たぶん俺はあの後……力尽きたのかな? それなら、病院にいることも納得できる。
しかしこのとんでもない頭痛はどういうことだ?
さすがにもう酒が回っているハズは……
「お前、もうちょっと早く起きろよ! 2日も寝やがって!! ……まあ、魔物モンスターを倒せたのはお前のおかげなんだけど……」
ティールがバシッと頭を叩きながら言ってきた。
一応ケガ人なんだからもうちょい丁寧に扱えよ。痛いからね、普通に。
それにしても、魔物モンスターを倒したのが俺のおかげ? そんな覚えはないぞ。
もしかして記憶が全部パッパラパーになってるとか。
あと、2日? 俺二日も寝てたの?
「京夜、私が一から説明しよう。お前は未発見の魔物モンスターを倒すと同時に、2日間の眠りに着いた。しかし京夜は力尽きてから、その顔にはうっすらと笑みを浮かべ、『ああ……もっと……もっとお!』とかいう誰でも引くような寝言を」
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
俺はベッドの上で大絶叫をかましていた。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、いやマジで嘘であってほしい。
「ああ……アレは確かに私も引きました。ちょっともうこの人ダメだなっていうか」
ピューラがうんうんと頷きながら言ってくる。
いや、さすがに冗談だろ……
「うん。京夜、すっごいニヤニヤしながらね……」
「やめてください分かりましたからこれ以上俺を傷つけるのはやめてください」
3人同意してくる限り、どうやら嘘じゃないらしい。
最悪の目覚めだ。
まさか起きてからすぐに俺の寝言について指摘されるとは。
ああ、もう死にたい……
「あはは、でもまあ良かったじゃないか。京夜、未発見だった魔物モンスターを倒したんだろ? すごいじゃないか」
「ああ、私もそれには驚いた。一体京夜はどんな身体能力をしているんだ? メタルの装備で倒すなんて」
「…………」
……あ、やっと分かった。
俺が倒したのは、魔物モンスターだったのか。
そういえば紫色をしていたのも、魔物と言われれば納得がいく。
強かったなあ、アイツ。どうやら最後に勝ったのは、俺だったみたいだ。
「で、なんか遠くから叫び声が聞こえるなーって思ったから、私たちも急いで向かったんだよ! きょーや、良くできました」
アークが俺の頭を撫でてくる。
……いや、あのですね。
「俺が橋から落ちた時点で無視するのはおかしいんだよ!? お前ら、無視しただろ!?」
「ええっ!? そうだったの!? ……まあ確かに、言われてみれば……よく生きてたね」
「……まあな……」
俺はもう突っ込むのがバカらしくなり、ベットへと寝っ転がった。
そもそも俺が落ちたことに気付いていなかったらしい。いや、それにしても誰か一人様子見に行くとかしてくれても良かったんじゃないか。
「まあ、そんなワケで。お前は橋から落ちた後魔物モンスターと戦い、最後には奇妙な寝言を立てながら力尽きた……ってことでいいかな?」
「最後の方もう少しマシなまとめ方できなかったか?」
ティールの大雑把なまとめに、俺はこめかみを押さえながらうなだれた。
しかしてっきり俺は死ぬかと思っていたのだが、違ったらしい。せっかくカッコいい決め方したのにな。
……まあ、何はともあれ、俺が活躍したということに間違いはないらしい。
「そちらの事情はよく分かりませんが……京夜さんは先ほどもおっしゃったように、今日中に、今すぐにでも退院できます。どういたしますか?」
さっきのお医者さんが、愛想よく訊いてくれた。
俺はまだ少し体がだるいし、もう少し休んでも――――――
『今すぐに退院させてください!』
……え!?
普通答えるの俺だよね、今!?
「よし京夜、立て。傷はそんなに深くないんだろ?」
「さあ、みんなでまたクエストいこー!」
鬼、鬼だコイツら。
いくらなんでもひどすぎんだろ。確かにあんまり傷は痛くないんだけどさ。
俺の抵抗もむなしく、俺は無理やり立ち上がされた。
「ちょ、待てって! 俺今入院服だから! 着替えるから!」
「3分で着替えろ」
そう言ってティールは俺の冒険用衣服を投げ渡してきた。
おかしいよね。やっぱりこんなの。
まあ、でも。
あの戦いで死んでいたら、きっとこんなちょっとした楽しさも味わえなかったんだろうな。
そう思うと、案外この世界でも頑張れる気がする。
俺は大きなあくびをすると、バキバキだった体を伸ばし始めた―――――――




