悪魔を認める覚悟
「グギャオオオオオォォォ!!!!」
雑木林一面に響き渡る叫び声。
俺はとっさに耳を塞ぎながらも、飛んできたゼルドギアの右腕をかわした。え、すごくない? 俺。
しかし自分の能力に驚いている場合ではない。何とかしなければ……
「くっそ……オイ! なんかアイツ、弱点とかないのか!?」
「む、無理ですよ! ゼルドギアの皮膚は硬質化されているんです! 普通の攻撃は効きません!」
「ッ……マジかよッ……」
ついつい口調がタメ口になってしまうが、気にしてもいられない。
俺は迫りくる攻撃をかわしながら、逃げ続けた。
ひいいっ。怖い、怖すぎる。ホラー映画以上だ。
「ねえ! なんで俺ばっか狙ってくんのォ!? ひどすぎんだろ!」
「え、えーと……たぶん弱いとか思われてるんじゃないでしょうか」
「なんでだよおおおおおお!!!!!」
ああ、なんてツイてない。
これもドⅯパワー的なものが関与しているのだろうか。
しかし、どうも飛行機で悪魔化して以来、身体能力が上がっている気がするのだ。
その証拠に、俺はゼルドギアの攻撃を、避け続けられていられる。
一瞬ヤツに隙が見えたので、かわしながら蹴りを入れてみた、が、そんな攻撃効くはずもなく。
俺は見事に吹っ飛ばされていってしまった。
痛い足が目が腕がああああああ! 結局体全体が痛いぃぃぃぃぃぃ!
「ぐほっ……ってライア!?」
俺は漫画でよくあるうめき声を上げながら、地面へと転がり込む。
ライアはゼルドギアの正面に立ち、ガタガタと震えていた。片手剣の様なものを構えているが、ゼルドギアには効きそうにもない。
ヤバい、助けなければ。
「グガアアアアアアアアアア!!!」
「うるせえええええええええ!!?」
その雄叫びのせいで隙が生まれたのか、ライアは遠くへと飛ばされていった。
くっそゼルドギアめ。許さんぞ。
「ライア!」
俺が急いで駆け寄るが、意識は無い。
相当重い一撃を受けたのか、体には複数の傷跡があった。
「クッ……ソッ……!」
俺はライアを抱きかかえ、走り出した。
走っている間にも、ゼルドギアは攻撃を仕掛けてくる。
…………ああ、そうか。
どうやら、やっぱりそうするしかないらしい。
できれば悪魔化は、したくなかった。飛行機の時は気持ちよかったので気が付かなかったが、俺はすでに人間離れした力を持っているのだ。
……悪魔になったことを、実感したくない。
でも、今はライアも、ライアの仲間も助けなければいけないんだ。
俺は決心すると、精神を研ぎ澄ませ、走り出した。
「うおっしゃあああ!!! いくぞおおお!!!」
幸い悪魔化は、強く念じるだけで成功することができた。
俺は大空へと大ジャンプし、一気にゼルドギアとの距離を詰める。
「効かねえよそんなの! バーカバーカ!」
俺は振り下ろされた右手をかわし、おもいっきりゼルドギアの角を殴りつけた。
一撃ではあったが、確かにゼルドギアが怯んだのが分かる。
ヤベえ俺。アニメキャラの主人公なみにカッコいい。
「グ……ギャオオオオオオオ!!!!」
「るっせえな……クソがっ」
俺はゼルドギアの脇腹を、思いっきり蹴りつける。
次の瞬間、俺の頬を何かがかすめた。
血は出なかったものの、結構な威力があったといえる。
「マジかッ……マジですかッ……そんなんアリかよッ」
俺の頬をかすめたのは、雷のブレスだった。
その後もゼルドギアは攻撃をやめずに、次々とブレスを吐き続けてくる。
俺はギリギリでブレスをかわすと、ゼルドギアの背後に回り込んだ。
「遅えよ! オラァ!!!」
ゼルドギアはすぐに振り向いたが、俺の方が一枚上手だった。
振り向いたゼルドギアの顔面を、俺は思いっきりぶん殴る。
「ギャアアアアォォォォォ!!!!」
「……ははっ。強え、俺! 次で決めるぜ」
俺は空中に浮いた状態のまま、右手を天にかざした。
そしてそのまま一気に急降下し、ゼルドギアの身体を斬りつける。
するとゼルドギアは悲鳴を上げながら、成す術なく地面に崩れ落ちていった。
……スゲエ、俺。完璧にキメちゃった。
ついに戦闘のシーン! になりましたが、京夜くんの圧勝でしたね(笑)
今回はいきなり戦闘が始まってしまいましたが、次は仲間たちとわいわいやるシーンも入れていきたいなあと思っています。
引き続きよろしくお願いします!