捜索開始!
「うえっ……うおおえ……うえっ……」
旅館から出てすぐ近くにあるトイレにて。
俺は突如這い上がって来た例のヤツを、盛大に吐き出していた。
「うえっ……はあ……はあ……なんか気持ち悪ィ……」
当然と言えば当然である。未成年者が酒を飲んで、平気でいられるわけがない。
どうやら俺は、成年になって酒を無理やり飲まされる苦しみを、一歩早く知ってしまったようだ。
いやいや、それにしても突然である。ちょっとカッコつけたことを思っていた直後に、いきなり上がって来たんだよ? ホントビビったわ。
「ふう……準備できたし、行くか」
吐いてちょっとスッキリした俺は、待ってくれていたみんなの元へと駆けつけた。
うっ……走ったらダメだ、また吐き気がっ……
「もー、いきなりトイレ駆け込むもんですからビックリしましたよ。どんだけ吐くの好きなんですか?」
ライアが腰に手を当て行ってくるが、好きで吐いているワケじゃない。
身体能力は上がっていても、体質だけはパワーアップしてないっぽいんだから。
「よし、それじゃあ行こうか? 今日一日、頑張ろうね!」
ガーブがさわやかな笑顔で言ってくるが、俺の気分は最悪なんだ。ウザいからやめてくれ。
それにしても、コイツもずいぶんとタフな奴だ。昨日あんな事件があったというのに、もう立ち直ってやがる。
「ピピ、アイツどう思う?」
「ウザイ! ウザイ!」
俺は肩に乗っていたピピに問いかけると、即答で返事が返ってきた。
……コイツもう、日本語マスターしているんじゃないか?
その場に合った的確な言葉を発するし、傷つくことだって言ってくるし。
不思議なインコだ。そういえば見た目も、他のインコと比べれば珍しいようにも見える。
「はあ……はあ……どこまで歩くの?」
「取りあえず魔物モンスターが出現しやすそうな場所に行ってみよう。あまり行くあてはないけどね」
ないのかよ。まあ、知ってたけど。
俺は吐き気を抑えながら、フラフラの足でみんなへとついて行った。
「なにコレ。いやマジで、なにコレ」
みんなについて行くこと数十分。
俺が今現実で叩き付けられていたのは、いかにも漫画とかで出てきそうな、ボロボロの橋だった。
おかしい。いや、ホント、おかしい。
ここに来るまで、山っぽい険しい道を歩いてきたのはまだ良かった、良かったんだけど。
……さすがにコレは命の危険がある。
「……できればこの道は通りたくなかったんですけど。まあこうなれば、仕方ないですね」
ピューラが緊張した面持ちで言うが、これマジでダメなヤツでしょ。
ここから先の道、踏破できる気がしない。
「こういうのは思い切りが大事だよね! それっ!!」
「ぎゃああああああああ!! おま、おま!? バカか!?」
アークはなんと猛ダッシュで橋の先まで走っていき、途中でくるんと一回転してみたりもしていた。
怖い。アイツ怖い。
「なあ、アイツのクソ度胸は一体どこから来てるんだ? 恐ろしすぎて……」
「ん? なんだ京夜、怖いのか? なっさけねー!」
いやお前が一番落ちる可能性高いと思うんだが。
俺がそう思ったのもつかの間、ティールはのっしのっしと橋を渡っていった。
ミシミシと橋が音を立てているが、壊れてはいない。
「よし、私たちも後に続こう」
「了解!」
……え? いやホント待って。
状況がいまだに飲み込めていない俺はどうすればいいんだろう。
そう思っている間にも、俺以外の奴ら全員が橋の先へと渡っていってしまった。
「どうしたー京夜! 早く来いよ!」
いや、無理です。
どう考えても無理な高さだろコレ。
「早く来ないと置いてくぞー?」
ティールが橋の向こうでニヤニヤしているのが分かる。
冗談かと思ったんだが、みんなはどんどん先へと進んで行ってしまった。ひどいな。
……ああもう、知らねえ! こうなりゃもう、死んだっていいや!
俺は橋へゆっくりと足を踏み出すと、そろーりそろーりと歩き出した。
こういう時の対処法を俺は知っている。下を見てはいけない。
「下を見るな下を見るな下を見るな下を見るな……」
絶対に見てはいけません。ガチで死ぬから。
「下を見るな」そう呟きながら歩いていると、ついにゴールが見えてきた。
やった、これで終わりだ―――――――!!
そう思ったせいで油断したんだろう。
俺の視界の下に、橋の隙間から見える地上の映像が見えてしまった。
……あっ。
「ひぎゃああああああああああああ!! あははははははwwwww」
あまりの恐怖でおかしくなった俺は、そのまま見事に体をくねらせ、宙に浮いた。
あっ……ダメだもうコレ死ぬわ。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
俺は恐怖で意識を失いながら、地上へと落ちて行った。
落ちちゃいましたねwwwwどうなるんでしょうか。
引き続きよろです!